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LIFE CARD

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LIFE CARD


「うーむ……」

目の前に、二つに分かれた道が広がっている。そこで、一人の少女が唸っていた。
彼女――ジュリアが選ぶ選択肢は二つ。右か左か、単純にして、答えの出しづらい問題だ。

ジュリアの当面の目標は、殺し合いに否定的な仲間を集める事。
だから今は、ただこの島を回り人を探す事が先決である。
ただ、そのアテはない。それこそくまなく探すぐらいしかやることがない。
そんな彼女にとって、この道をどちらに行くかの判断はつけることができなかった。

「………んー」

どちらの道を選択しても、もう片方の道を通る誰かと入れ違う可能性がある。
勿論、そんなのは仮定…もしもの話であって、それを実際に知る事なんてできやしないだろう。
確かめる手段もなければ、それを事前に察知する事もできない。
となれば、こんなところで立ち止まっているのはただ時間の無駄でしかないわけだが。

「どーしたもんかな……」

ぼりぼりと、頭を掻く。
一応、予測する事はできなくもない。
左の道は、橋を渡って小さな小島を経由する。一方、右の道はこの広い島の中にある。
単純に誰かと出会うなら右の方が可能性が高そうだが、左は誰かと出会うのを避けようとした、殺し合いに乗らない奴と出会える可能性がある。
とはいえ、これもただの予想でしかなく、考えるだけ無駄というもの。こうしている間にも、時は過ぎていく。
それでもなお、どちらかを選ぶことにより誰かとすれ違うかもしれないという不安は、彼女を悩ませ、躊躇させた。

「っ、と……あれは」

そんな思考の渦に陥っていたジュリアは気配を感じ、顔を上げる。
彼女のもとに近づく、一つの人影。
どちらに行くかと悩んでいた道の片方から、誰かが歩いてくる。
ジュリアは、思わず身構えた。できれば、話の分かる人であってほしいが。

「……千鶴!」

やがてその姿が鮮明に見えて、ジュリアはその人物の名前を呼んだ。
相手は武器のようなものを持っておらず、とりあえず敵意のようなものも感じられない。

「ごきげんよう、ジュリア」
「お、おう。えっと……一応聞きたいんだけど、殺し合いには乗ってないよな?」
「当たり前ですわ。 このような事、行うつもりは毛頭ありません」
「だよな……よかったぁ……」

その返答に、ジュリアは安心して一息つく。
もう誰が乗っていても不思議じゃないとさえ思っていた彼女にとって、その事実はひとまず心休まるものであった。

「そちらも、無事そうで何よりですわ。こうやって話の分かる人と会えたのは幸運でした」
「ん……まぁ、な」

対する千鶴の方も、こうして出会えた事を素直に喜んでいるように見える。
それ自体はいい事とは思うが、対するジュリアの表情は浮かない。

「何か、あったのですか?」

その表情の変化を、千鶴は見逃さなかった。

「………いや、アタシは特に何もなかったけど、エミリーが……」

ジュリアは少しだけ口を開くことに躊躇したが、ありのまま起きたことを話すことにした。
彼女がエミリーと出会い、いきなり日本刀で襲われた事。
エミリーはプロデューサーの事を盲信し、この殺し合いに乗ってしまった事。
一応なんとか説得し逃げ出しては来たものの、おそらく彼女は止まらないのだろうという事を。

「……そうですか、あの子がそんなことを…」
「で、おめおめと逃げてきたわけだよ……情けないよな、アタシ」

自分の命が惜しかったとはいえ、尻尾をまいて逃げ出したのは決して褒められた事ではない。
いつもは強がり、粋がってたとしても、こんな場所では何の意味もなさない。
改めて、己の無力さを感じる。何もできなかった自分が、情けない。

「いえ、そんな事はありませんわ」

思い返し自責の念に駆られるジュリアに対し、千鶴は首を振る。
俯いていた頭を上げると、そこには優しく微笑む彼女の姿。


「死なない事が、一番大事ですから。
 それを責める事なんて、誰にもできませんし……わたくしは、ジュリアが生きていてくれて、良かったと思っています」

力強く、胸を張って。
そう、彼女は断言した。


「ち、千鶴……」

思わず、目頭が熱くなる。
当たり前の事、そのはずなのに、理不尽に殺されかけた後ではその暖かさが心にしみる。


「悪い、ちょっと不覚にも……うん、そうだよな。生きてこそ、だよな!」

滲んだ目を拭い、ジュリアも笑顔を見せる。
状況は変わらない。それでも、確かに仲間と出会えた。
その心は晴れやかで、さっきまでの鬱憤とした気持ちは幾分か和らいでいた。

「ありがとう、勇気づけられたよ! こんなトコで落ち込んでる場合じゃないよな!」
「ええ、わたくし達はここで終わりませんわ。さぁ、一緒にまいりましょう」

そうして、二人の意見は合致する。
このイベントに対する反抗。同じ意思を持った二人は、抗う事を心に決めていた。
殺し合いなどするものか。この手で、必ずあのバカPを見つけ出して、引きずりおろしてやる。
千鶴がどこまで思っているのかは分からないが、きっと同じ気持ちの筈だ。
ジュリアの心の声に呼応するように、千鶴が先に歩きだし。


「……あれ?」

ジュリアが歩いてきた道を、向かっていった。


「お、おい、千鶴?」

思わず彼女を呼び止める。
そっちの方向に進むと、ジュリアにとっては来た道を戻る事になるのだが。

「何か」
「いや、何か、って……アタシそっちから逃げてきたんだけど、その……」

千鶴は「何がおかしいんだ」とばかりに純粋な目を向けてくる。

すでに探索した道を戻るというのは時間の無駄だ。
意味がないとまでは言わないが、他の道を探した方が効率がいいだろう。そして何より。

「……そっちは危険だぞ。エミリーがいる」

彼女の懸念は、それだった。
そう、ジュリアはついさっきまで人を殺す事すら厭わない彼女の脅威から逃げてきた。
殺されかけたのだ。故にその道を戻るのは危険であるはずなのだが。

「知ってますが」

それを千鶴はさも当然、何を当たり前の事を言ってるんだとばかりに肯定する。
想定外の返答に、ジュリアの頭には依然ハテナマークが浮かんでいる。
どうも、何か食い違っているような気がする。違和感というか、目指しているものが違うというか。

「エミリーが危険というのなら、放っておくわけにはいかないでしょう?」

その違和感を決定づける一言を、千鶴は戸惑いもなく言った。

「……えっ?」
「ですから、止めにいくのです。これ以上あの子に被害者を出させるわけにはいきませんから」
「ちょっ……ちょちょ、ちょーっと待て!」

呆気にとられるジュリアをよそに、彼女は歩を進めていく。
てっきり自身と同じく、他の仲間を集めにいくものかと思っていた。
しかし千鶴は、先ほど逃げてきたばかりのエミリーの元へ向かおうとしていた。彼女の凶行を、止める為に。
その決断は悪い事ではない、だが命からがら逃げてきた場所にまた戻るという事実が、少なからず尾を引く。

「……ぶ、武器! そうだ、千鶴は武器を持ってるのか!?
 あいつは日本刀を持ってるんだ、手ぶらじゃ危険だぞ!何かあるんだよな!? 」

詰まった言葉を無理矢理捻りだして、指摘する。
ジュリアが問題としていたのは、そこだ。
彼女がエミリーからおめおめと逃げ出してきたのも、その理由の一端は日本刀に対抗できる武器がなかったから。
止めにいくといっても、丸腰では歯がたたない。せめて何かあるのかと、そう尋ねるジュリアに対し。


千鶴は、バッグの中から『それ』を取り出す事で応えた。


「――へっ?」

いきなり向けられたそれに、ジュリアは反応が遅れた。
こんな場所であってもえらく浮いた、チープな近未来的趣向が凝らされた、銃。
それにどこかで既視感を感じた彼女をよそに――千鶴は、引き金を引く。

「うわっ!? …………?」

あまりに突然の事、ジュリアは抵抗する暇もなく凶弾に倒れる……事はなく。
彼女の胸にかかったのは、ただの水、であった。

「こんな程度のものしか、ありませんわね」

千鶴が取り出したのは、ただの水鉄砲だった。
765プロが出演したイベントでも使用されたことのある、多少手の込んでいる程度の備品。
それがそのまま、千鶴のティーカップに続くもう一つの支給品として渡されていた。

「こんな程度、って……こんなのただのおもちゃじゃないか!?」
「ええ」
「いや、ええじゃなくてさ……!」

当然、こんなものは武器にも、脅しにもならない。
そんな事はすぐにわかったし、千鶴も重々承知している。

「だからと言って、ここで引くわけにはまいりません」

それでも、彼女がその意思を曲げる事はない。


「その子が誰かを殺すのも、誰かが殺されることもわたくしは見逃せませんから」

呟く彼女の姿を見て、ジュリアは気付く。
その言葉は平静を装っていても、握る拳は震えていた事に。
彼女が冷静を装う反面、その心は静かに燃えている。この理不尽な殺し合いの中で、彼女は仲間達の事を強く想っている。

「……無理についてきなさい、とは言いませんわ。
 ただ、少しだけ待っていてくださいませ。すぐに、あの子を連れ戻してきますから」
「あっ、おい!」

押し問答になりそうな中、千鶴は早々に切り上げて、歩んでゆく。
引き留める声に立ち止まる事なく、そのままジュリアが来た道を進んでいってしまった。
ジュリアもそれを追いかけようとして、しかし足が動かない。

「……どーすんだよ、アタシ」

戸惑う中で、ジュリアはまたも悩んでいた。
はっきり言って、危険だ。危険すぎる。
あの程度の武装しかない千鶴には、万に一つ程度しか勝ち目がない。
さっきの自分のように説得する余地はあるだろうが、それでも根本的な解決にはなりえないだろう。

だが、止めろといって止まるようにも思えない。
千鶴が抱いている想いも、よく分かるから。
こんな事で誰も死んでほしくないし、誰も間違いを犯してほしくない。
痛い程、理解できる。ジュリアだって、エミリーを止められるなら止めたい気持ちはある。
ただ、それ以上に危険だ。勇気と無謀は違う。みすみす死ににいくようなものを、進むことなんてできない。

「くそっ……アイツ、あんなキャラだったか……?」

ジュリアの知っている二階堂千鶴は、もっと性格としては柔らかかったというか……悪い言い方をすれば、情けなかった筈だ。
それこそイメージだけで予想すれば、見栄を張っても内心怯えていた方が余程似合っている。
しかし今彼女が出会った千鶴は、そんな印象など微塵もなく、ただ凛としてこの現状を見つめていた。
この極限の状況で、彼女は変わった。心優しさはそのままに、強い覚悟が包まれている。
そんな彼女の威圧に押されたのも事実だ。つくづく自分が情けないなと、頭を掻きむしる。

「どうすればいいんだよ……!」

彼女を追えば、また自分も危険な目に合うかもしれない。
しかし追わなければ、千鶴を見殺しにしたと言っても過言ではない。
もしもこれが最期になってしまったら、悔やんでも悔やみきれない、一生引きずるであろう後悔を背負う事になる。
どちらを取るか、どちらを捨てるか。焦る心ばかりが先走り、彼女は悩み続ける。


彼女がこうして選択を強いられている間にも、時間は過ぎ去っていく。
手に持ったカードは二つ。進むか、戻るか。
課せられた決断を前に、彼女が選ぶ道は―――


【一日目/午前/G-1】

【ジュリア】
[状態]健康、精神的疲労
[装備] なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考・行動]
基本:仲間を集めて殺し合いを止める。
1:千鶴についていくか止めるか、あるいは……。
2:エミリーには人を殺して欲しくない。一応念を押しておいたけど……。
3:バカ昴や翼は特に心配だ。早く見つけてやらなきゃな。

※ジュリア曰く、「役に立ちそうな武器はない」ようです

【二階堂千鶴】
[状態]健康
[装備] 水鉄砲
[所持品]支給品一式、ティーセット
[思考・行動]
基本:常に優雅たれ。品格ある反抗を。
1:エミリーを止める。
2:誰も死んでほしくないし、誰も殺人を犯してほしくない。

【水鉄砲】
二階堂千鶴に支給。タンクに水を貯めて噴射するタイプのおもちゃ。
ミリオンライブ!内のイベント「風雲!アイドルキャッスル」で使用されたものをモチーフとしている。
外見は「果敢にアタック! 春日未来」や「ぼんやりバトル 高山紗代子」等を参照。




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