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ひなた

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

ひなた








――――だから、何処までも掴み続けるんだ。








     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇









「……うん?」

北沢志保が別れ道を右に行ってコンサートホールへ歩いている最中だった。
志保の後ろ方向から、静寂を破る大きな音が聞こえてくる。
その音から、そっと身を隠すように、志保はわき道に逸れ、藪のなかでそっと身を隠す。
やがて、けたたましい爆音はどうやらエンジン音だという事に志保は気付くと、その音の主が近づくのを待った。
車かバイクかは、志保には解らなかったが少なくとも此方に向かってきているのは、音が大きくなっていることで解る。
車両に乗っている人間を狙うのは難しいし、志保は思い、過ぎ去っていくのを待つ。
会いたくなかった、そんな心もあるかもしれないと思いながら。


(バイク……二人か)

藪の中から見えたのは、バイクに乗った二人組だった。
大分速度が出ていたので、誰かはわからなかったけれど、志保がこれから行こうとする道をまっすぐ向かっていった。
どうしようと志保は思う。
まさか自分が向かう先に、先に向かう組が現れるとは思わなかった。
別のところに行こうかと思うも、他に行くべき場所も思いつかない。
どうせバイクならどんどん先に行ってしまうだろう。
そう考え、志保は藪から出て、また歩み始める。
人に会いたくない。
兎に角、その思いで。

でも、それは本来、志保が与えられた立場から相反する思いで。
可奈を殺したことから発端とした不思議な感情は、覚悟を決めたはずの志保を惑わし、今もなお、苛み、


それでも、なお、志保は歩いていた。






     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








「そっか……未来は紗代子にあったのか」
「うん……でも彼女、混乱してて、でもきっとあのままじゃ駄目だよ」
「……ああ」

春日未来と永吉昴が話あっているのを、福田のり子は少し離れた所から戦々恐々と眺めていた。
バイクで町へ向かう最中に、エンジン音を聞いた未来が昴達を見つけ、大声で呼びかけたのだ。
未来のその様子から、殺し合いに乗ってないと判断した昴は、未来と会えた事に喜んだが、のり子としてはとても複雑で。
そもそも、まだ誰かと会うなんて考えていなかった、いや考えたくなった。
それは誰かに会って話をする事で、稚拙な自分の嘘が、昴にばれてしまう可能性が高くなってしまうから。
なのに、もうたいして時間も経っていないのに、未来とあってしまった。
ままならない事に、のり子は唇を噛みながら、昴に自分たちのことは誤魔化して話すように頼んだ。
どうしてと訝しげに此方を見たが、自分が殺し合いに乗ろうとしたのは、言いたくないと嘘を重ねた。
昴は納得したのか、してないのか解らないけれど、兎に角聞いてはくれた。

のり子はほっとし、二人で話させるようにして、自分はバイクの座席に座った。
自分が話すとうっかりぼろを出してしまいそうだから。
解っている。嘘を積み重ねたところで、それはとても脆いものだって。
すぐにばれてしまうかもしれない。
でも、ばれてほしくない。
それは、誰のためなのか。
のり子自身もよくわからなかったけれど。

「昴は、どうしてたの?」
「えーっと……そうだな」

遂に来たとそう思い、のり子は息を飲む。
未来の話が終わり、次は此方の動向を話す番だ。
昴が話を誤魔化す事を得意だとは思わない。
だから正直、不安でしかたない。
それでも、自分から未来に話す事が出来なかったのは、のり子自身の弱さなのだろう。
何もかも曝け出してしまいそうな感覚が、のり子自身にもあって。
そのせいで昴を傷つけることになってしまうだろう事もわかった。
だから、逃げた。上手くいかなくても昴に話させようとした。
それがよくない事だということも解りながら。

「……のり子に会って、それから一緒に行動してたんだ」
「そっか。でも、あれ、怪我してない?」
「……あ、ああ。バイクから落ちてな、全く運転が荒いんだよ」
「わ、気をつけなよ」
「……なあ、ひな……」
「うん?」
「…………いや、なんでもない」

昴は、言葉を濁しながらたどたどしく伝えた。
隠すのはどう見ても苦手で、挙動不審にしか見えない。
目も泳いでいる。
私と一緒にいたとしか伝えなかったのは、誤魔化すのが下手だからだろう。
何故ならば、昴の放送までの行動は、私が殺し合いに乗ろうとしていたから止めようとした。
それに尽きるからだ。その前提がなければ、そうとしか伝えられない。
ひなたの事も伝えることは出来ない。
昴自身、ひなたのことを気になってはいるが尋ねるとぼろがでるから、聞けないのだろう。
のり子は昴の表情を見てすぐに解った。
だから、のり子はバイクの座席から立ち上がって、二人の所にいく。
これ以上話を広げさせないために。


「まあ、私達はそんな感じ」
「……うん、解ったよ、じゃあこれからどうしよう?」
「一緒に行動するか。だよな。オレ達がやること一緒だし、一緒にいる方がいいんじゃないか」
「でも、ばらばらに動いて、他の仲間探した方がいいんじゃない? バイクも二人しか乗れないしさ」

昴は、三人で行動することを望んでいるが、のり子にとって冗談ではなかった。
一緒にいればいるほど、いつか綻びが出て、ひなたが死んでいることがばれてしまう。
だから、別々に行動したい。
そう話を持っていこうとして。
綻びを作らないように、方便を言おうとして。


「でも、もう『12人』も死んでいるから……それだけ、皆……殺し合いしちゃってると言うことだから……出来れば一緒に居たいかな」



のり子は、それが、どだい無理な話だったと言うことを、悟る。



嘘に嘘を重ねたところで、もともと、限界があったのだ。



そう、人の死を隠すなんてこと。




この島では、無理だと言うことに。







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇










「十二人……? 十一じゃないのか?」
「え? 十二人だよ」
「未来の聞き間違えじゃないかな!?」
「そ、そんな大事なこと、間違えないよ! 端末にもあるよ」
「…………それ、よこせ!」



未来の言葉に、オレは慌てて、未来が出した端末を奪い取る。
のり子が未来の間違いを指摘するが、そんなことはどうでもいい。
これを見れば確かなのだが。


オレはそのまま、端末を急いで操作して。
死者の名前が書かれているのを見て。



そこに



『木下ひなた』




という、名前が書かれたのを、見た。




何度も見返した。
でも確かにあった。



其処に、ひなたの名前はあった。




ちゃんと、間違いなくあって。




それは、




「おい………………おい!」




ひなたが、死んだ?




なんで、というより。





「どうして、なあ、どうしてひなたが死んでるんだよっ! おかしいだろ! のり子、なあ!」




どうして、のり子は、それを教えてくれなかったんだ?
オレは、のり子をにらみつけるように見た。
だって、あの時、ひなたは無事だって。
いってくれて。
オレはそれを信じたのに。

なぁ!



……なあ!



「教えてくれよ! なんで、なんで、なんでぇ……ひなたが死んでるんだ!?」


声が震えた。
どうにもならない位、身体が震えてきた。
居ない、ひなたが居ない。

死んだのかよ……もう居ないのかよ!



のり子……どうして


「………………そうだよ! ひなたは死んだよ! 殺されたんだよ! 昴が気絶してる最中にさ!」



そして、オレは本当の事を知った。
まるで怒るように、泣くように叫ぶ、のり子を見ながら。
オレは、残酷で哀しい事を知ったんだ。


「昴がアタシを止めてる時に、ひなたは、亜美に殺された! 亜美はそのまま逃げたけど、ひなたはそのときに殺されたんだよ! アタシは昴を背負って逃げた!」


ひなたは死んだ。
オレがのり子を止めている最中に、不意をつかれて死んだ。
嘘だと言いたいけど、のり子の言葉は嘘じゃない。
それぐらい、解る。




誰のせいで死んだ?



…………決まってる。




「お、オレが……、ま、巻き込んだ……そのせいで……死んだ」






オレ、……の、せい、だ。




あぁ。


あぁぁぁ。




「ああ、あ、ああ、ああああああああぁあああああああああああああ!」



涙があふれた。
声があふれた。
どうにもなならない声が、感情が。



あふれて仕方ない。



「オレの、オレの……せいだ!」



頭を抱えてその場に蹲りそうになって。
昴と呼ぶ声が聞こえて。
其処には、のり子が居て。


どうにもならない、感情を、ぶつけたくなって。



怒りにも似た言葉を、吐いた。





「どうして! どうして、ちゃんと言ってくれなかったんだ! 言ってくれたら受け止められたかもしれないのに!」





震える声で、震える手を振った。
何もかも震えてる。

怖かった。
ひなたの死を感じるのが。
いまさら知った彼女の死が。


全身を震わせている。



「い…………」




のり子も、泣きそうになって、震えて。



そして、吐き出すように、言った。





「い、言える訳、無いだろっ! だって『友達』じゃん! だって『仲間』じゃん! 昴が傷つく解っているのに……! 言える訳、ないだろうぉ!」




そして、オレは、のり子も傷ついていることに気付いて。
また、オレは、のり子を傷つけた事を気付いて。



でも、そんなこと気付きたくなくて。




だって、そうだろ。


オレは、二度も、友達を巻き込んで。


そして、勝手に傷つけて。



苦しめて。


オレは、オレ自身に耐えられなくって。





「っ!?」





ただ、この場から、逃げ出した。




何もかも、解らなくなって。



オレは、ただ、居たくなくなったんだよ。






     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇









「アタシは……間違ってのかな?」

昴に逃げられて、自分の嘘を後悔して。
何が何だか解っていなかった未来に全部洗いざらい話した。
自分が殺し合いに乗っていたこと。
それを、昴が止めようとしたこと。
昴のそばにはひなたが居て、一緒に止めようとしたこと。
結果、ひなたは通りかかった亜美に殺されたこと。
昴はアタシを止めようとして、気絶して、放送を聴けなかったこと。
アタシは、昴をつれて逃げて、放送の中身を誤魔化したこと。
つまり、ひなたの死を伝えられなかったことだ。
そして、今は殺すことができないまま、昴と一緒に居たことだ。

稚拙な嘘を突き通そうとして。
そして、昴をの信頼を失った。
なあ、どこでアタシは間違っていた?
最初から?
解らないや。


「…………間違ってないよ」
「でも、昴は傷ついたよ、凄く」
「それでも、だよ」
「解んない。解んないよ、未来」

未来は、座って俯いてるアタシの隣で、一緒に同じように座って。
でも、未来は前を見て、笑っている。
胸を張って、まっすぐに。

「だって、昴を思ってやった事でしょ。なら、いいんじゃないかなぁ」
「ち、違う……」
「どこが」
「アタシは怖かったんだ。弱かったんだ。自分が言えなかったのは、何もかも傷つけてるのを恐れたから、だから自分のため」
「……そっか」
「でも、嘘をつくつもりもなかった。けど、昴はひなたが死んでないと思った、その時の柔らかな表情を見た瞬間、何もいえなくなった」


だから、嘘をつこうと思った。
それで、昴が更に傷つくことも、解っていながら。
昴のために、アタシのために。

「そしたら、今のようになってさ、昴傷つけたよ……最悪だな、アタシってさ……残酷だ」
「……違うと思うなぁ。やっぱり」
「何でさ」
「だって、のり子さん、言ってたよ。友達だから言える訳ないってって」


それってさ、と未来は続ける。
未来が見る空は晴れていて。


「自分のことを思って言えなかったかも知れないけど、それと同時にきっと、心の底で昴のこと、思ってたんじゃないかなあ」
「……なんで、其処までいえるの?」
「友達のことを本当に、思ってるなぁって感じたから」


なんとなくだけどね、って彼女はまっすぐに言って。
でも、彼女は笑って言う。
其処にあるのはきっと、仲間を、友達を信じるという気持ちがあるから。
だと、思う。そんな気がした。


「でも、傷つけて、もう、昴は居ないよ」
「大丈夫だよ。きっとやり直せる」
「なんで?」
「生きているから」

そう言った未来の言葉は重たかった。
未来も、放送で友達を失った事を知った。
きっと、彼女も傷ついて、もっと一緒に居たかったのに。
それすらも奪われて。
きっとどうにもならないぐらい不安で。
悲しんで、哀しんで。
それでも、笑っていようと思ったのだろう。
でも、だからこそ、アタシ達は



「だから、きっと、やり直せるよ。『友達』だもん。間違ってること、傷つけたこと謝ってさ、また一緒に居ればいいじゃない」



そう、言う未来に、アタシは救いのようなものを感じて。
つられて前を向いて。


「それが、友達じゃないかな?」


そうだね、と言おうとして。








――銃声が鳴り響いた。







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇










私は、三人を見つけて。
黙って様子を伺って。
昴が逃げていくのを見て。
残りの二人を殺そうとして。


話を聞いてしまった。


そして、春日未来の言葉を聴いて。




「だから、きっと、やり直せるよ。『友達』だもん。間違ってること言ってさ、傷つけたこと謝ってさ、また一緒に居ればいいじゃない」




私は、思い出してしまった。


何者でもない、友達のことを。



矢吹可奈という、友達を。




私が、殺した、友達。
私が、終らせた、友達。



私が、傷つけた、友達。


私の、『友達』


「それが『友達』じゃないかな?」


たまらず、銃を撃っていた。


二人を狙ったつもりなのに、あらぬ所に撃っていた。




「……志保ちゃん?」


未来が私に気付き、信じられないように此方を向く。
そういえば、彼女も私を友達だと言った子か。
私は、よく解らないまま、彼女にも銃を向ける。
心が乱れていた。
友達と言う言葉が私を突き刺していた。



「友達、友達って、軽々しく言わないでよ」


そんな言葉を言うつもりはなかった。
未来を見ているのに。
私はその先に違う人を見ているようだった。
私は私なのに、なぜか私が、私をせめている。
そんなよく解らないものに襲われている。


「それが、どんなに重いものかも、知らないくせに」

可奈。
私の『友達』
私の『呪い』


でも、私は、私は、可奈が諦めようとしていた時。
何か言おうとしていたのだろうか。
彼女を励まそうとしていたのだろうか。
殺し合いをするしないだけじゃなくて。

友達として。



友達として、可奈の間違いを直してあげることはできたのでないか。
あの子を、あの子を、



『友達』として、受け止めてあげることはできたのではないのか。




呪いじゃない、本当の友達。




いっしょに、居て。



ねぇ、それが、友達じゃないのか。



矢吹可奈という、『友達』は、そうじゃないのか。




「黙れ、黙ってよ そんな事言わないでよ。知ってるよ、でも、今更、変えられない」



それは、未来に言っている事なのか。
それとも、自分自身に言ってることなのか。


「志保ちゃん……? どうしたの? もしかして誰かを……?」
「そうだよ。だから、もうやり直せない」
「そんな事ないって」


だったら。
やり直せるんだったら。



「私は、あの子を殺すことなんて、しなかった!」


もう、

もう、


「止まれない。止まれない。私は可奈の『友達』なんだから。私はあの子の分まで、殺さなきゃ」



それが、友達。
あの子が生きていたことを忘れないために。
友達で居続けるために。
私は殺すんだ。


なのに。




「じゃあ、私は、それは止める。 嫌だよ。志保ちゃんが傷ついてるの見たくないから」



何でこの子は、こんなことを言うんだ。
私は今どんな顔で、この子を見ているんだろう。
泣いてるのか、怒っているのか。
解らない、知りたくない。


もう、いい。


終らせちゃえ。



彼女に、銃を向けた。





「のり子さん?」
「…………きっと、昴ならこうしてると思うから」
「でも!」
「アタシがあの子の友達なら! アタシもあの子のやることをやってみる!」

未来をかばおうとするのり子が居て。
友達とか言って。
私はもう何も嫌になって

終らせようとして。






銃を撃とうとした。




「させられねぇな!」




けど、響く凛々しい声。
その時、私は肩の痛みと同時に、銃を落とす。
振り返ると其処には逃げたはずの昴が居たのだった。










     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇









逃げた。
逃げた。
オレはただ、逃げて。


だけど、何処かでそのまま崩れ落ちるように、倒れこんだ。
頭にあるのは後悔だった。
ひなたを巻き込んで死なせて。
オレは何やってるんだろうな。


友達、巻き込んで。
自分のわがままで。
死なせて。


オレは、お前に、どう顔向けすればいいんだろうな。


なあ、ひなた。


お前は、目の前の仲間で、友達だった、はずなのに。


ごめん。

ごめんな。


泣いた。
ただ、泣いた。


解らず、後悔ばかり渦巻いて。
言葉にならない言葉を吐いて。


オレは、傷つけた人のことを思って。

泣いていて。



その時、一発の銃声が響いたんだ。


方向はいうまでもなく、のり子達が居るはずの方向で。


オレは、立ち上がろうとして。
でも、こんなオレが助けることなんて許されるなんかと思った時。




空を見た。




其処から振りそそきできあがるのは、




柔らかな――――ひなた、だった。






………………あぁ。


そうか。


思い出す。
ひなたが言った言葉を。






――やっぱり、昴ちゃんはすごいねぇ。



其処にあったのは、尊敬。
真っ直ぐ行こうとしたオレへの。



――――付き合ってもらうって言ったの、昴ちゃんでないかい。あたしもさ、一所懸命についていくから。だから、まっすぐ進んでくれてええよ




そうだ。
オレは、真っ直ぐ生きなきゃ、進まなきゃダメなんだ。
オレのその考えで、ひなたを死なせたのだとしても!


オレが、巻き込んだとしても!


ひなたは、それに尊敬して、信じてくれて!



一緒についていくといってくれた!



だったら、オレは!



オレが進むべき道を真っ直ぐ生きることが!



ひなたに!



友達に応えることじゃないのか!








――――どうしたいかなんて、もう決まってるでしょや?



後悔は今もしてる。
都合のいい解釈だってわかってる!


けど、泣いてたって、ひなたは帰ってこない!

なら!


ならさ!




オレは今度こそ!





――――友達を、助けたい!






それでこそ、昴ちゃんだ。



そんな言葉が聞こえて。




オレは、走り出した。




其処にあったのは、



進むべき道をどこまでも、受け入れてくれる、ひなただった。







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







「昴、ど、どうして!」
「決まってる! 友達を助けに来たからに決まってるだろ!」

オレは強く、宣言をする。
近くで拾った石を志保に投げて、志保の銃を落とす。
これ位なら、今のオレでも出来る。
そんな気持ちだった。

「おい、志保。 これ以上、友達、傷つけるようなら、容赦しないぜ?」
「……っ」

志保は、そのまま、肩を抑え、銃を拾って逃げていく。
それを追うことはせず、今はのり子に向かいあうことが大事だと思ったから。


「……昴、ごめん……本当、ごめん!」
「オレもごめんな……」
「本当は怖かったんだ。昴に、ひなたのことを告げるのが怖くて、アタシが糾弾されるんじゃないかって。怖くて怖くて」

のり子は、オレの胸に駆け込んで、泣きながらそう告げていく。
オレはそれを受け止めながら、聞いていた。

「でも、本当に傷つくのは昴だって解ってるのに……ごめん……ごめんなさい」
「もう、いいよ」
「なんで……でも」
「友達なんだろ。許す事ぐらい……すぐにできるさ」

元々、怒ってなんかいなかった。
だから、もういいんだ。
今すべきは、今のオレの思いを告げること。


「オレさ、やっぱり、真っ直ぐ進むんだ。プロデューサーに会って、もう一度手を掴む。 そして、仲間も助けたいって思うんだ」
「……昴」
「志保だってそうだ。苦しんでた。ひなたのこと殺した亜美の事も、話を聞きたい。その上で、皆の手を掴む」


まず、プロデューサーの手を掴むことの前にやる事ができた。
それは、仲間の手を掴む事、友達の手を掴む。


ひなたにしたように。


皆に、手をさし伸ばして。


助けたいって思う。


あの時、ひなたにさし伸ばした時にみた、ひなたのような笑顔。



それを見てみたいから。



「だから、さ。 のり子も、未来も……掴んでくれるか?」



恥ずかしくなりながら。



オレは、それでも、両手を伸ばす。



掴んでほしいと願いながら。


「ね? のり子さん。やり直しなんて、できるでしょ? 友達だもん!」
「……そうだね!」
「私、志保ちゃんのこと、もう一度あって話を聞いて……助けてあげたいな。だから!」


まず、未来が、手を掴んで。




そして。



「……へへ。 ありがと。アタシも友達だから。 一緒にいくよ。 いいかな!」





のり子が掴んでくれた。




だから、きっともう――進んでいける。




「ああ、どこまでも、連れてってやるよ!」




そう、あの太陽がつくる。




ひなたの先まで。




【一日目/午後/E-3】

【永吉昴】
[状態]、身体的疲労(大)
[装備]リュックサック(缶詰入り)
[所持品]
[思考・行動]
基本:プロデューサーの真意を知った上で、彼の手を掴む。
1:皆の手を掴んで、プロデューサーの手を掴む。
2:志保と亜美の手も掴む。

【福田のり子】
[状態]バイクに乗っている、
[装備]なし
[所持品]バイク
[思考・行動]
基本:昴とともに行動。 昴を信じる
1:昴と共に行動。




【春日未来】
[状態]健康、
[装備]屍人形(半壊状態)
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
1:皆でまた、楽しくアイドルがしたい
2:皆を探してプロデューサーさんを止める
3:紗代子さんを、助ける?
4:志保ちゃんを止める







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






逃げた。
逃げた。
友達と言う言葉に惑わされながら。
苦しみながら、ただ。


友達を、傷つけた私は。


それを呪いと受け止めた私は。



本当に、何処にいくのだろう。




でも、でもね、私は。




それでも、あの子の友達だって、胸を張りたい。




けど、どうしてだろう。




どうして、今更。




あの子の最後の顔がちらつくのだろう。



解らなくて。


私はただ、



ひなたの先の暗闇の方へ。



ただ、逃げていた。



【一日目/午後/E-3】

【北沢志保】
[状態]???????
[装備]ベレッタM92(12/15)
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0~1、9x19mmパラベラム弾入りマガジン(2)、タオル、着替え
[思考・行動]
基本:"ジョーカー"として動く
 0:???????????
 1:とにかく、人を殺して行く
 2:嘘をついてなくちゃ――――
 3:可奈の『呪い』を背負い続ける?
 4:人に会いたくない、見られたくない
 5:発電所に行かなくちゃ


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