幸先輩に……これ以上生きていて欲しくないと思ったからだ



『最終章・ひとり』において、との真実の記憶を取り戻した直。
そんな彼と優里バロックの持つを明かしたナーラは、
地球人類が“かくあるべき”存在と認識し、平行世界においてもそのように行動し続けた直に対し……


『ナオ。サチを殺したのはどうしてだったの?』



同化の最終判定確定の為、彼が傷ついた幸に対し「最期に」行った行為の動機の説明を求める。

それに対し、神代直(にんげん)が下した、最後の答え(せんたく)



直は真相を言葉には決して出すことなく、その胸の中で思う。

―――そう、幸先輩が伝えた意思を受け取り、自らの手で生命維持装置を切ったその時。
心の奥で聞こえた、
「これ以上、こんな姿の幸先輩を見ていたくなかった、だから都合よく彼女の言葉を都合よく捻じ曲げ、その命を奪った」

そんな己自身(あくま)の囁きとは、
彼女の命を奪った行為への罪悪感、その結果生まれる己の孤独(・・)に耐えられない弱さが形を成したものに過ぎなかった……。


ナーラの続く「ナオにとって、それは善なの?」という問いに、
最愛の人の死を受け入れられず、罰を求め狂ったように自己犠牲と救済へ奔った自分ではなく……
ただの、矮小な一人の人間として―――


「いや……“悪”だ」

俺自身の(・・・・)気持ちから出た、ごく打算的で、常識的で人間として……当たり前の考え(・・・・・・・)だ」


「俺は、ああなってしまった幸先輩がこれ以上生きるべきじゃないと思った。
 それは、誰も幸せにはしないから」


彼女と過ごしていた時間……この思いを欠片も(・・・)感じたことがないなど、それこそ偽善だと。


「彼女自身も、彼女の家族も――――そして、この俺も」


故に、今こうして語っている言葉は全くの嘘じゃない(・・・・・)
何より、その行為を実行したのは紛れもなく自分個人の意思と判断にのみよるもので、
この事を、正当化はしないし、する資格もないと。

現実を歪め、誤魔化し続けてきたヒトとしての己の弱さを、隠すことなく吐き出す。

……彼女と最期に交わした想いという真実を、独り胸に抱え続けたまま。
神代直は来訪者を欺くため、心を抉る痛みを負いながら、本心とは違う(・・・・・・)言葉を紡ぐのだった。


結果――――

突如、“お手本”として信じてきた人間から告げられた「ズレ(誤差)」に。
ナーラと、彼女に繋がる知性群体は、動きを止め、ついに同化解除の為の審議に入るとした。


自分の目論見は何とか通るかもしれない―――
そう思った直の背に、現実の声とバロックを通じて怒りの感情を訴えたのは……


――――待てよ、違うだろ……?」


強さを演じ続けてきた頃の彼に救われ、一個の人間として認めてくれたと、
真っ直ぐに好感を伝えてくれた、憧れの“直にいちゃん”を。
他ならぬ直自身が否定することを認められない、あの日のままの想いを抱き続ける優里であった――――



  • もうこの、誰も間違ってないし悪くないっていうのが・・・あああ -- 名無しさん (2018-12-08 22:25:20)
  • ひたすら巡り合わせと間が悪いだけってのがなぁ…… -- 名無しさん (2018-12-11 10:38:18)
  • 優理にとってはリアルに10年待った再会の上に時間で思い出が美化されまくってるから仕方ないよな。実はこうだったと言われて納得できるわけがない -- 名無しさん (2018-12-11 16:22:51)
  • ↑直本人の真実がどうであろうと優里にとってはマジのヒーローだからね…それを否定はできないだろう -- 名無しさん (2018-12-15 22:55:32)
  • この対立はさけられないものだったとしてもこんな状況じゃなきゃまだ救いのある結末だったんだろうけどねぇ -- 名無しさん (2018-12-16 16:31:55)
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