トシローの元恋人であり、思い出の中に存在する少女。
縛血者であり、
故人。
元々は武士だった杜志郎の婚約者で、そこそこ名の在る家の娘だったが、重なる運命の悪戯により人間から縛血者となってしまった。
トシローに
洗礼を施し、縛血者へと変えたのも彼女である。
今でも彼の心を縛る影であり、同時に新たな一歩を踏み出すための鍵ともいえる人物。
「美影は、口惜しゅう御座います……」
「これほど近くに、これほど確かに、杜志郎様を感じられるようになったと言うのに……」
「もはや、貴方と共に生きることが許されぬとは……」
杜志郎様……わたくしの肌は、もはや石のように冷とう御座います。
この身を繋ぐ糧は、もはや人の生き血の他になく……
貴方様の御子をなすことも叶いませぬ。
されど……杜志郎様を愛しいと想う、この心だけは……
あの頃と何も変わってはおりませぬ。
沈丁花の咲く庭を漫ろ歩いた、あの頃と……
内面・人物像
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杜志郎様……この世で唯一人の愛しい御方……
貴方と一緒なら、たとえ何処へ行こうとも……
どのような暮らしを送ろうとも……美影は、幸せで御座います───
トシロー・カシマにとって決して喪いたくなかった最愛の女性にして、“永遠の愛”という理想の象徴。
杜志郎とは何時頃出会い、許嫁となったかは不明だが、
シェリル√やアンヌ√での断片的な回想からは、トシロー、美影共に互いを深く信頼していることが伺え、それなりの年月を経た交流があったのではないかとも考えられる。
美影という個人の内面については、生まれた時代状況や嫁ぐ先が武家ということもあり、
基本的に穏やかな気質であったらしく、トシローも「慈しみ」「優しさ」といった印象を彼女との思い出から感じている。
しかし、 彼女と関わり合う存在の女性陣に対する 言動へのトシローの反応や、
人間であった頃、 婚礼の日取りが決まった際の二人のやり取りからは、
恋する少女らしい感情表現(他の女性を引き寄せていたり揶揄ってくるトシローへの可愛らしい怒りやその女性達への嫉妬、色事への羞恥など…)を見せていたようである。
ほか特典付属の短編では――
内藤隼人『鹿島さんよ、そこのおっかない女人に言い聞かせてくんな。酔狂はもう終わったとよ』
縛血者になったトシローに危害を加えようとする人物に対して、眦を吊り上げ敵意を顕に刃を向けたり、
戦場近くで〈魅了の目〉を使いトシローの目的の手助けをするなど、
嫋やかさだけではない秘めた意思の強さを感じさせる場面がある。
それでもトシローの回想では、慈愛やそれに類する表現が彼女を形容する言葉として多用され、
彼とヒロインの交流の中でも、そんな彼女の姿は鹿島杜志郎の一つの愛の理想として映し出されている面が強い。
だが、物語の最終盤で美影の魂が語ったのは……
自分もまた、大切な 男性に相応しい淑女と成る為に足らぬ、至らぬ部分を他の女性の姿に求め、
必死に猫を被ろうと足掻いた、ありふれた一人の女に過ぎないという告白であった―――
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本編に至るまで―杜志郎との別れ―
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「杜志郎様、わたくしは幸せで御座います。
たとえどのような暮らし向きであろうと、貴方と一緒であるならば……」
「けれど……」
「俺もだ、美影……これでよかったのだ、これで……」
周囲からも認められ、万全に見えた二人の将来は、しかし杜志郎の生きてきた規範(しばり)ゆえに、光を閉ざされた。
トシローが彼女を喪うことを拒み脱藩した後は、彼と共に追っ手を避けるべく陰に潜んでの生活に入ることとなる。
そして彼が異国の地を踏むことを決意し、長崎からの船に乗ったことが、彼女らの運命を更なる闇に進ませることになった。
冷たい眼差しの人形に咬まれ、そして人ならぬ何者かに血を吸われたことで、美影は縛血者へと変貌した。
――血を生み出せぬ冷たく時の止まった肉体と、他者から生き血を奪わねば生きられぬ宿命。
その人とは異なる在り方を美影は厭い、同じ時を生きたいとして同じ存在になることを望んだトシローの願いを拒んでいたが――
彼の決意は揺らがず、10年後、ついに押し切られる形で彼女は想い人に洗礼を施し、二人は縛血者として歩み続ける道を選んだ。
“どんなに肉体が変じようと、自分達は人間である”
“自分達が歩いてきた道は、過ちなどではなかった”
トシローが繰り返し語るその言葉を、美影がどのような心境で受け止めていたかは判らない……
ただ、目まぐるしく変動する世界の中で、己の魂が蝕まれながらも、静かに彼女は不器用な男に寄り添い続けた。
生き残ったトシローは、人として保とうとしていた精神のバランスを砕かれ、
彼女を無残に殺した原因を求め、 殲滅の魔人と化したが、 ある縛血者との出逢いと美影との思い出が彼を「現実」に引き戻す。
“命の消える間際に家族を求めるこの女も、変わらぬ愛情で傍にいてくれた美影も――この俺も、ただの人間に過ぎなかった”と。
杜志郎様にも、わたくしを介して伝わっておいでではないでしょうか……
そんな中、後悔の生んだ幻か、それとも真の彼女なのか……
美影は彼の夢に現れ、血族の運命について、何かを伝えようとするのだが───
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本編においての影響
本編共通部において、
ケイトリン、そして
アンヌとの出会いに始まるトシローの周囲での変化は、
彼が心の奥に封じていた過去への未練を次第に強く自覚・表層化させていく。
その結果生じたトシローへの影響は、極めて危ういものであって、
美影を夜から守れなかった後悔は、
縛血者として変質してゆくアンヌをその前に殺害しようとする凶行に奔らせかけ、
本来自分の命運に関わるはずの
ニナの命令を無視し、
ゴドフリを振り切ってまでアンヌの暴走を止めようとするなどの行為にも出ている。
また、ニナとの関係が深まった場合の物語では、
美影の代償として失った
忠誠という道もまた、自分が捨てきれていなかった未練だと気づかされ、
独り葛藤を抱え込んでいる。
「ヒロインの些細な一言や仕草にも微かな記憶が反応したり……周囲の女性とも個別に関係を築いているものの、トシロー本人の意識以上に「美影」という人物は現在の彼の心の動きに深く、重く影響を与えていると思われる
シェリル√
三本指と
バイロン…二人にとっての忌まわしい
過去が迫る中、
トシローが美影と過ごした日々とその別れ、三本指の誕生、そしてシェリルとの出会いが語られる。
トシローは、
勇気を以て踏み出したシェリルの行動に、かつて美影を喪失した苦しみを思い出し、
その想い自体を尊重しつつも、敢えてそれを受け入れることなく、寿命の尽きるまで闘おうとする。
だが、
彼に修羅としての在り方を望む男の
策謀が、
かつて美影を喪った果ての暴走する狂気を再度目覚めさせてしまう。
アンヌ√
不条理な運命を迎えさせてしまった少女、そしてそれゆえに守らねばならぬと誓った少女。
アンヌの無垢で、そして危うさを秘めた恋心……
そしてそこに感じる美影の優しき面影と、彼女を夜から帰すという「使命感」にトシローは揺さぶられる。
過去の後悔から来る使命感を優先するトシローと、己を顧みずに呪いに苦しむ彼を守ろうとするアンヌ。
二人の思いはすれ違い、傷つけ合う。そんな彼らはやがて定められた夜と朝の境界に分かたれるが……
かつて、トシローが美影と紡げなかった朝の先の日々、その想いは成長した少女の歩む日常へと託され───
ニナ√
自分の裡に燻っていた“忠誠の道”に対する未練と、その理想にニナを都合よく「利用してきた」自分自身。
死を目前にして
それを思い知らされたトシローは、しかし
少しずつ心を解く気高い少女に救われてゆく。
だが鎖輪の内部闘争が、三本指の影が、彼ら二人の仮初だった主従の関係を引き裂いてゆく。
若き公子にいつしか自分が抱いていた
希望――
それを確かな現実にしたいと決意するトシローはニナに、美影のような“愛情”ではなく、我欲に塗れた“忠誠”を捧げる。
アリヤ√
かつて美影の命を奪った白い杭は、今また、燃え盛る鎖輪の中アンヌという少女の未来を奪った。
――“復讐”だ。残り少ない命の自分の死に場所は、そこにしかない。――
そして血族の滅びが近づく中───現れたスカーレットを前に……失われたはずの過去が繋がり始める。
指先が、優しく頬に触れる。その繊細な仕草からは慈愛のようで、
表情が凍り付いたままでなくば愛情の賜物と錯覚してしまいそうだ。
……目が、離せない。この命なき少女を前に、俺の魂が泣いている。
「俺を……おまえは、迎えに来たのか?」
「───は、い」
問いかけに、少女の中で何かが変わる。―――俺の愛しく、狂おしい過去と重なってゆく。
《こうして、触れ合う、ために》
《あなた様を、わたくし、から……解き放つ、ために》
《一度だけ、一度だけ、この常世にて、昔語りをお聞かせしたいがために》
無表情のまま、口だけが切れ切れに動き言葉を連ねる。
懐かしい口調。俺の胸をつくたおやかな言の葉。
片時も忘れられずにいた、あの日の影が微笑んでいる。
トシロー・カシマが誰より愛した、在りし日の残影が。
《今宵、馳せ参じました次第です……“杜志郎様”》
グランド√ 朱銀幻燈・人魂帰譚
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「私は、杜志郎様の傍に、在りとうございます……
───あの日、あの花の咲く庭で誓ったように」
《伯爵》の従えるスカーレット。その裡に在ったのは、トシローにとっての最愛の人・美影の魂であった。
そして彼女に向き合って自覚してしまった事実、
美影と共に死ねなかった自分は、どれだけ新たな理想に傾こうと、理想を棄てられないと。
己が満たされる終焉は、もはや取り返せない美影しか、与えることは出来ないのだと……。
彼女と再び相まみえることだけを望み、トシローはスカーレットの居る場所、《伯爵》の元を目指す。
その間、 自分の影によって突き付けられた歪みを抱え、
人にも魔にも成れないはぐれ者の縛血者は、 自分自身の愚かさを映す鏡、幻想の怪物・《伯爵》との死闘に突入する。
やがて明かされる《伯爵》と自分達二人との間の知られざる因縁……
――美影はこの男に光を奪われただけでなく、魂までもこの怪物の野望のために略奪され続けていた。
その事実に、今まで見せたことのない憎悪と憤怒の叫びを上げトシローは、刃を振るう。
とても穏やかで、清しい御顔で御座います───杜志郎様。
そうか……そんな顔をしているのか……今の俺は。
はい、とても。
二人は行き場なく“やり直したい”という思いを抱えて消える母を想い───
穏やかに生の足跡を見つめられる……その澄んだ心と、同時に終わることへの未練も抱え。
ようやく判った答えを、孤独な母へと伝え、幻想の夜を終わらせるために。
往こう───美影。
はい───杜志郎様。
陰陽二つの魂は混じりあい、一つの命へと昇華する。
言葉を紡ぐ唇も、互いを見つめる瞳も、 生きてきた記憶や意識さえも、全てが紅蓮の嵐花に溶け……
そして……最後の薔薇は散った。
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余談
美影の最終収録時に、声優が「トシローは私のもの……」とニヤリと笑ったという。
ヤンデレ祭りなVermilionだったが中の人までヤンデレだった。
- グランドルート見ると納得の勝利宣言 -- 名無しさん (2016-11-15 17:46:58)
- 美影さんかわかわ・・・ -- 名無しさん (2016-11-18 16:02:11)
- 過去の女には勝てなかった。それがVermilionというゲーム。まあ主人公がトシローの時点でって感じだが -- 名無しさん (2016-11-19 08:36:19)
- 作品テーマが理想どおりにいられず傷だらけの過去と向き合ってそれでもなおそれらにも意味があったのだって吹っ切る部分にあるからな -- 名無しさん (2016-11-19 08:38:19)
- 美影さんの回想の多さイコールトシローさんの駄目人間っぷりのパロメーター -- 名無しさん (2016-12-30 00:45:57)
- 美しい「影」=触れることもできず離れられもしないものだから過去の女最強なのは仕方なしね -- 名無しさん (2017-03-18 19:13:36)
- 伯爵が最期に美影(むしろスカーレット?)のことを「エウリュディケ(悲劇の愛)」って呼んでてビビった -- 名無しさん (2018-01-27 17:36:45)
- 立ってください、トシロー様。まだ一撃もらっただけでございましょう? -- 名無しさん (2018-03-04 05:47:57)
- ↑美影さんが仮にソレ言ったら誰おま言われる事間違いないな -- 名無しさん (2018-03-04 07:36:37)
- シルヴァリオのアマツ達のモデルなのかな?こっち系統のはプレイしていないのでよくわからんが -- 名無しさん (2018-03-31 19:41:22)
- ↑この人の愛情そのものは重くはあっても真っ当な部類だし、アマツのモデルとは言いがたい。恐らくナギサちゃんやアオイを除くアマツ連中のようなネジの吹っ飛んだ事はやらかさんだろうし -- 名無しさん (2018-03-31 20:24:35)
- Vermilionでアマツの原型と呼ぶなら、やはりアリヤだろう -- 名無しさん (2018-03-31 22:23:16)
- シルヴァリオだとマイナ姉ちゃんの立ち位置なアヤ(ピンク要素抜き)みたいな感じかな、美影さん -- 名無しさん (2018-04-20 01:16:36)
- ↑トシローの手前、表に出す事が無かっただけで実は中身ピンクという可能性は……無いか -- 名無しさん (2019-04-28 14:29:06)
- 土方…?新撰組?双血の -- 名無しさん (2019-05-15 20:36:13)
- 美影さん『もう少しふっくらした肉付きが欲しかった』とか仰ってましたけど、最後の美影さん大勝利の一枚絵では割とそんなことなかったですやん…! -- 名無しさん (2020-03-11 22:59:53)
- ↑9 そんな事言われたら『美影そんな事言わない』とかブツブツ言いながらトシローさん寿命燃やして頑張っちゃうよ…… -- 名無しさん (2020-05-11 23:29:04)
- トシローさんと美影さんのエロシーンがない不具合・・・ -- 名無しさん (2024-02-25 19:04:37)
最終更新:2024年02月25日 19:04