シェリル・マクレガー

“PARTNER"

CV:鈴美巴

Vermilion -Bind of blood-の登場人物。ヒロインの一人。

トシローと数十年来行動を共にしている、良きパートナーにして相棒。縛血者
基本的に明るく前向き。男勝りのストレートな性格で、外見のクールさに反して感情の起伏は激しい。勝気な豪放磊落さと同時に、どこか儚い哀愁もその身に秘めている。
トシローと肉体関係はあるが恋人同士ではなく、お互いにあと一歩踏み込めない微妙な位置。

特技は歌唱。『カサノヴァ』に通う客達の間ではちょっとした「歌姫」扱いであるらしく、気分次第でステージに立つことも。


能力:夜影疾走
物体や生物の影の中に自身の肉体を溶け込ませる。
影から影の間を移動して、相手の目に触れぬまま襲撃することができる。
また影に退避することで一瞬にして敵の攻撃を避けることができる。
影の長さの分だけ攻撃の間合いを延長することができる。
影を攻撃されてもダメージにならない。影の発生しない暗所などでは使えない。


「お初、シェリル・マクレガー。――ここにいるトシローの、まあいわゆる一つの相棒ってところ」





「――――あんたも、面倒臭い男だね」

「でも……色々無理して生きてる男って、嫌いじゃないよ」



「昔話は……聞くのも、するのも、好きじゃない」

「だって、いい男といい女には……概ね過去(むかし)があるに決まってるもんでしょ。
 そんな当たり前の話なんか今更したって、きっと……ありふれ過ぎてて面白くないよ」


「だから、このままがいいんだ……きっと。 あたしとあんたは、ずっとこのままが……」




『過去』という影 ― Darker than Black ―


+...
シェリル・マクレガーが相棒に打ち明けられなかった過去、
それは失っては、奪い、そしてまた奪われ続けた痛みの歴史でもあった。


シェリルという少女が育ったのは、19世紀末イギリス・倫敦(ロンドン)の影――疫病と貧困が蔓延する貧民窟(イーストエンド)

実の父は結婚詐欺師。母はそんな父に身ぐるみ剥がれた元資産家の娘。
財産を奪われ、残された母親は娼婦にまで身を落として、娘であったシェリルを捨てた。
そんな彼女は満足に肉親の情など知ることは出来なかった、いや、奪われた女によって親の愛を奪われていた……

その後シェリルは母親の客だった男に引き取られるも、
初めから男は彼女の若い肉体が目当てであり、12歳の誕生日に襲われたシェリルは彼に重傷を負わせ逃亡。
その身柄は救貧院が預かったものの、馴染むことが出来ず脱走を繰り返して――いつしか、彼女はスラム街へと流れ着いた。


そんなシェリルは、やがて“何も持たない”ことこそがこの世における強さである、という自覚を抱き、
17歳の時にはすでに一人の悪党(アウトロー)として都市郊外で活動を開始、
貴族や富豪から金品を奪い、場合によっては殺人さえ厭わない盗賊団を率いるまでになっていた。


だが――ある「怪物」との出会いが、シェリル・マクレガーの運命をまたしても翻弄する。
その「怪物」の名は……ジョージ・ゴードン・バイロン
他の無法者達の命が容赦なく引き裂かれる中、シェリルは自分の信条を貫き抵抗し――その果てに、人間としての生を奪われた(・・・・)
縛血者として目覚めたシェリルは、バイロンから告げられた事実を前に動揺し、
それでも、心臓を狙えば自死できるという言葉に、短剣を手にとって胸に向けようとする。
だが、バイロンが語る“七十と七日の間に、己を滅ぼせば人間に戻れる”という言葉が、
“何も持たず生きてきた。ゆえに自分は奪われない、誰も何も己から奪えない”そう誓って生きてきた彼女の心を大きく揺らす。

“ここで自分は死ねない”……短剣はバイロンへと向けられた。
何故なら、バイロンを滅ぼすという可能性から逃れて死ぬことは、“奪われた果ての死”と同義である。
そして、それは絶対に認められない。生きるために誓った決意に背いてしまえば、きっと己は本当に決定的なものを無くす、と。

「それでいい。荒野を目指せ。世界の涯てを超えて見せろ」

「さあ、私たちだけの遊戯(ゲーム)を始めよう―――


「……ッぎあぁぁぁ―――ッ!!」

瞬間、仕損じた「罰」として彼に抉られる眼球。飛び散る鮮血と、凄まじい苦痛。


――そう、既にバイロンという吸血鬼の掌の上で、全ての決意や苦悩が玩具(おもちゃ)にされていたとしても。



運命の出会い ― Bloody Lover ―


+...
―――シェリルが縛血者に変えられてから、百年の時が過ぎていた。
世界が二度の大戦に揺れ動き、文明が目まぐるしく進んでゆく中、
人に戻る術をとっくの昔に無くし、失敗の度に罰として深い傷を体中に刻みこまれようとも、
シェリル・マクレガーは、血親(おや)殺しに挑むことを止めようとはしなかった。

幾千度目(・・・・)の挑戦……人類が生み出したジェット戦闘機という近代兵器を操縦士ごと奪い取り、標的の居る古城を強襲した。
爆弾で城壁を崩し、機関砲の掃射で、バイロンの眷属らを皆殺しにした。
だが、それでもずっと狙い続けてきた、バイロンだけは斃しきることが叶わなかった。
再生を繰り返しながら、愛しい玩具(こども)の必死の足掻きを嘲笑うように前進する魔人。

その姿に恐怖し、完全に意気を消失してしまったシェリルは、彼の操る影の刃に四肢を奪われ……芋虫の如き悲惨な姿を曝していた。
そして―――自分の目的は此処では果たせぬと悟ったバイロンは、
失血で程なく死ぬであろう我が仔に、「百年の遊戯」の相手を務め上げた礼を告げ……闇の中にその姿を溶かしていった。


近づく二度目(・・・)にして、最後の死。
その瞬間を自分の血で染まった冷たい床の上で感じながら、シェリルは諦観と共に己の終焉(おわり)を受け入れていた。
百年の間、彼女は鼓動を刻まぬ肉体と、実感なき生と、「今日」を繰り返し続ける停滞の輪の中で、
虚無に呑み込まれることを拒むために、自分は自分であると叫ぶために、目的(あす)を求め続けた。
それが、途方もなく巨大な化け物から、恐怖や痛みだけを刻みこまれる敗北しかない闘いでも、
シェリルにとっては、バイロンという存在を殺すことだけが、生を繋ぐ目的だったのだ。

「でも……もう、いいや……疲れた、よ」

それでも、これが最後(・・)だと。完全に心を挫かれ、苦痛に失われてゆく意識。
彼女は、終わりの時くらいはと、自分にもいたはずの、“母親” の名を呟こうとして―――

「……くくっ……はは、は……思い出せないや……」

面影も、名前も、人生最初の記憶すらも。時の中で、全て奪われていた、と。
シェリルは空っぽになった心のままに、哀しく笑っていた。

もう何もかもが億劫だ。目を閉じよう、世界を閉じよう、それできっと全てが終わる。
だが、そうやって眠りを受け入れる間際の耳に、足音が響く。


「嫌、だ……もう二度と、あんな世界(ばしょ)には……戻るもんか……」


拒絶する言葉とは裏腹に、その瞼はゆっくりと開かれてゆく。
今更何を、この現実(やみ)の先に期待しているのかと自嘲して―――

――見上げた先、シェリルの眼には、見知らぬ男の姿が映っていた…………


それが、後に相棒として行動を共にする、トシロー・カシマとの出会いだった。


「あたしって、こういう好き嫌いがはっきりしてる性格だからさ……
 少なくとも、ほら、嫌いな男とずっと一緒にいるとか無理だと思うのよね」
「で、まあ……あんたは、そんなあたしと長年それなりに一緒にいる訳で……
 ―――って言う事は、ほら、あたしはあんたを嫌いじゃないって事になる訳だ」

「まあ、あんたの方はどう思ってるのか判らないけど……」

「まあ、うるさい女だけど、一緒に居て我慢できる程度には悪くない位なのかなー
 ―――とか勝手に思ってるけど……そんな感じでOK?


シェリルは瀕死の命を拾われ、
彼が夜警として北米西部鎖輪フォギィボトムに仮の住いとなる小さな探偵社を得て以降も、ずっと同行し……
そして、今も彼の仕事を手伝い、陽光を忌呪とするハンデを負いつつも、
人であった時分得られなかった、日常の瞬間瞬間に笑ったり、泣いたりして、「生きて」いる。

+そんな彼ら二人のやり取りの一部
「ね、ね。ちょっと、この辺で停めて休もうよ」

「駄目だ」

「キャピルンッ☆ 停めないと怒っちゃうゾ☆」

「誰だ」

「停めなさい。これは公子としての命令よ」

「似ていない」





それは、彼女が生来備えていたはずの、人としての明るさ、暖かさの反映なのかもしれないが―――
同時に、かつて悪党として様々な物を奪い、果てに鼓動を奪われた過去の影を忘れるための、心の働きなのかもしれない。
ただ、そうした彼女の姿に、モーガン過去(いま)を重ねる自分達とは違う……明日(・・)」を見て生きている女性だという印象を抱き、惚れ込んでいる。


そして、自分を救い、長年離れずにやってこれた相棒が背負っているであろう深い、深い影についても。
察して気遣いながらも、しかし、自分から立ち入る選択は絶対にしなかった。

――そこに踏み込めば、自分もまた暗闇に怯えるしかなかった過去(きず)を曝さずにはいられないから。
――それなら、ずっとこのままでいい。停滞や臆病だと言われたとしても、二人でいられるこの時間(とき)がずっと続くなら。

だが、霧の街が杭の怪物の被害に騒然とする中、
トシローも杭を操る狩人の少女や、再来したという三本指(トライフィンガー)の事件を前に、己の知らない顔を見せるようになり……

そして、シェリル自身も――――
二度と会う事がないと思っていた、最悪の影(バイロン)との再会を果たすことになる。

冷たく凍りつく彼女の意識に響く言葉、それは。

―――過去の真実はいつでも傍にある。無かった事になど出来はしない(・・・・・・・・・・・・・・)
―――どれほど迅く、どこまで遠く逃げたとしても、己の()だけは絶対に振り切れはしないのだから。


シェリル・マクレガーにも、選択の瞬間は迫っていた――――






  • 献身的なところが好き。常にトシローのために血まみれになってた印象がある。 -- 名無しさん (2016-11-04 23:51:22)
  • 実は美影以上に運命の出会い系ヒロイン。シェリルがいなければトシローは復讐鬼モードから戻れなかったし、同時にシェリル喪失が三本指復活のトリガーにもなっている -- 名無しさん (2016-11-05 09:43:46)
  • 個人的にアリヤ√後の彼女がニナ共々どうしてるのかが気になる。ニナは分からんけどその内トシローを追って旅に出そうな気もするし。 -- 名無しさん (2016-11-17 07:20:33)
  • 全ルート通じて生存した数少ない登場人物の一人 -- 名無しさん (2016-11-17 18:58:03)
  • あとはお嬢くらいか...この作品キャラ結構ポンポン死んでるな -- 名無しさん (2016-12-07 14:02:43)
  • 主人公すら死ぬから容赦なさすぎる -- 名無しさん (2017-03-10 20:50:36)
  • トシローと唯一結婚式を挙げたヒロイン -- 名無しさん (2017-06-22 22:01:38)
  • ある意味、このラインにおける「愛」を体現してるよね。愛とは献身。それの体現者は凌駕、ルシード、ナギサちゃんへと受け継がれる。 -- ……………………ナギサちゃん以外男や。 (2018-01-03 17:51:49)
  • シェリルはそのまんま「愛」の象徴だからね。トシローが胸を張って生きるためにいずれか必要だが失ってしまった「愛」と「忠義」、その片方を取り戻させてくれるのがシェリル。もう片方(忠義)はニナ -- 名無しさん (2018-01-04 05:41:10)
  • ↑2反論しようと思ったがゼロインのヒロインたちそういうの薄いし、ヴェンデッタで一番愛を理由とした献身してるのルシードだから反論出来ねえ...というかむしろナギサちゃん凄いなおい -- 名無しさん (2018-02-05 01:54:31)
  • このラインの「良い女」像の原型なイメージがある。 -- 名無しさん (2018-06-09 14:38:03)
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