
設定
性別* 男
年齢* 26歳
罪状* 器物損壊、窃盗 21件
判決* 特殊収容所にて禁錮17年
-特殊能力-
- ディオルは二つの能力を操る。一つは「硬化」、一つは「蝋化」。
原則として、
1、二つの能力を同時に発動することは出来ない。
2、生物に対して発動することは出来ない。(エネルギー体や物質体には発動可能)
3、「硬化」「蝋化」した"もの"の質量、重量は変わらない。
コウカ
・「硬化」
彼の体を岩ほどの硬さに変化させる。「硬化」により物理的な攻撃、衝撃に
対しての抵抗力を向上させる。高熱にあたると「硬化」した部分が溶けてしまう。
ゼンコウカ
・「全硬化」
彼の体、および、彼の体に触れた物質、およびエネルギーを全て「蝋化」し、
それを「硬化」する。
流体、電気、その他のエネルギーも「全硬化」可能。(熱と動エネルギーは後述)
長時間の使用は周囲の空気すら巻き込んで無意識に「全硬化」してしまうため、
注意が必要。
「全硬化」したものを「蝋化」で脆くすることは出来ない。
-熱
高熱に触れると「全硬化」したものは溶ける。
「全硬化」した"物質"が高熱にあたるとそのまま溶けるが、"エネルギー"が高熱にあたると
保持していた質量分の爆発を引き起こす。
炎を「全硬化」した場合、炎は一度「硬化」するが自身の熱により、数秒後に
その場で爆発を引き起こす。
-動エネルギー
動エネルギーは「全硬化」することが出来ない。
例えば、木綿豆腐が頭上から落ちてきた場合。
「全硬化」で木綿豆腐自体を「硬化」することは出来るが、
木綿豆腐が落ちてくるエネルギーは「硬化」することが出来ないので
かったい木綿豆腐が頭に当たる。
エネルギーが自身に向かってくる場合は、エネルギーが重量を持っていなければ
当たっても痛くは無いので無問題。
ロウカ
・「蝋化」
彼の体に触れた物質、およびエネルギーを全て、脆く、やわらかい「蝋の様なもの」
に変化させる。
流体、電気、その他のエネルギーも「蝋化」可能。(熱と動エネルギーは後述)
「全硬化」で「硬化」したものを「蝋化」することは出来ない。
「蝋化」したものはその物質、またはエネルギーの、
色、味、匂い、質量、重量、性質を「蝋の様なもの」に変え、保持する。
-熱
高熱に触れると「蝋化」したものは溶ける。
「蝋化」した"物質"が高熱にあたるとそのまま溶けるが、"エネルギー"が高熱にあたると
保持していた質量分の爆発を引き起こす。
炎を「蝋化」した場合、炎は一度「蝋化」するが自身の熱により、数秒後に
その場で爆発を引き起こす。
「蝋化」し、破片になった分、爆発範囲は広がる。
-動エネルギー
動エネルギーは「蝋化」することが出来ない。
例えば、鉄球が頭上から落ちてきた場合。
「蝋化」で鉄球自体を「蝋化」することは出来るが、
鉄球が落ちてくるエネルギーは「蝋化」することが出来ないので
鉄球は自身の重量で自壊しながら落ちてくる。
「蝋化」しても重量は変わらないので威力は殺しきれないが、
接触した部分から壊れて崩れていくのである程度はダメージを軽減することが出来る
エネルギーが自身に向かってくる場合は、エネルギーが重量を持っていなければ
当たっても痛くは無いので無問題。
ゼンロウカ
・「全蝋化」
彼の体と、彼の体から半径3M以内の物質、およびエネルギーを全て強制的に「蝋化」する。
通常、この能力はアスファルトの地面の上で発動する場合、
自らの足場を「蝋化」し、破壊するだけのまったく意味の無い能力だったが、この「特殊収容所」内においては
スーパーコンクリートXのおかげで足場を「蝋化」すること無く、能力の使用が可能になっている。
長時間の使用は周囲の空気を巻き込んで「蝋化」してしまうため、注意が必要。
- 彼の戦術は基本的に相手の能力を「蝋化」で封じ、「硬化」で殴りつける、と言うシンプルなもの。
対戦相手が体内の全てをエネルギーに変換していたり、体が流動体であった場合、
触れるだけで「蝋化」することが可能なので、懐に飛び込むだけで勝負が付いてしまう。
反対に、相手が単純肉体強化で岩をも砕く力を持っていた場合には、戦闘はかなり不利になる。
また、「蝋化」と「硬化」を同時に行えないため、能力の切り替えのタイミングに攻め込まれると
攻撃を防ぐ術が無くなる。
「全蝋化」、「全硬化」を発動していた場合、周囲の空気が「蝋化」しているのが目安になるため、
やはり長時間の発動は注意が必要である。
-あらすじ-
子供の頃の夢は「正義のヒーロー」だった。
だがそんな夢はみんなが思い描きながらも、いつしか忘れてしまうもの。
彼もまたそんな人間の一人。
二年前の科学タワーの落雷事件で誕生した「能力者たち」。
この事件でこの都市が得られたものは、メリットよりもデメリットのほうが多かった。
少なくとも彼はそう考えていた。
あんなにも平凡で、ヒーローに憧れた少年も
毎日工場で汗水流して働いて渡されるあぶく銭と、突如として転がり込んだ人知を越えた力を
得た途端に、あの少年の瞳には映りようもなかった、この都市の汚れた部分が
まるで目の中に吸い込まれるように飛び込んでくるのだから。
けたたましく鳴るサイレンと、警官たちの怒号、銃声。
目の前に置かれた札束の山、宝石細工の数々、重々しい扉、赤いパトランプの波。
ひび割れた地面に目を落とした、染みが見える。雨だ。
そこで彼の目は覚めた。
…天井。
見慣れない景色だ。いつも朝起きて見上げている天井とは違う。
電灯も、違う・・・。
彼はそう思いながら、ゆっくりと、体を起こした。
ここは…。あぁ、思い出した。
夢だと思っていたけど、違った。思い出した。
昨日の夜、一軒のアパートに飛び込んだ。
理由は、追ってくる警察から身を隠すためと、背中の袋の中に詰まった
札束や宝石などを置く場所を確保するため。
飛び込んで行った二階の端から二番目の部屋。
空き部屋だったのは本当にありがたかった。
右腕で触れて、ドアを崩して中に入る。
そのまま「荷物」を部屋の一番奥に置き、そのまま壁に張り付いて外の様子を伺っていた。
警察たちが鳴らすパトランプの音。
心拍数が普段の二倍ほどにも感じる。
荒い息を少しずつ、整えながら、窓から外の様子を見ていた。
……。
どれくらいの時間が経ったか。
自分にはその時間が数十時間にも、感じられていたが。
そのうちパトランプの音が、少しずつ、小さくなっていく。
やがて、窓に映る赤い点滅も遠ざかり。音も、遠く、小さく、消えていった。
窓から恐る恐る窓から外を確認した自分は、少し、緊張を緩めて。
深く、息を吐いた。
緊張が緩んだ途端、急に静かな部屋の音が、耳に入ってくる。
崩れたドアから、風が入ってくる。
熱は無いのに、自分の体が小さく震えていることに気が付く。
吐く息の音がやけに大きく聞こえる。
ゆっくりと腕を動かし、震えている自分の体に、軽く、手を置いた。
やけにおかしな震えだった、熱いような、寒いような。
思うところはあったが。高揚感か、罪悪感か。
その震えを押さえるように、体を小さく丸めながら。床に座り込んだ。
やけに疲れた、体に付いた弾痕に触れてみる。
いつの間にか、震えからくる小さな熱で、自分はそのままゆっくりと眠りに落ちた。
そして今、昨日部屋に運び込んできた「荷物」が自分の後ろに転がっている。
何も考えずにそっと手を伸ばす。
袋の中身を確かめる。
そこには昨日袋の中に詰め込める限り詰め込んだ、札束と宝石の山。
あまりにもきらびやかな光景だ。
だが、なのに、高揚しない。
これだけ豪華な荷物なのに、何も感じない。
それはそこらに落ちている石ころを見るような気持ち・・・。
自分とは関係のないものを見るような。
数日間かけて下調べをして、様々なところからかき集めてきた宝飾品。
初めて目の当たりにした時は、確かに、高揚していたはずなのに。
欲しかったのは、これじゃないのか。
遊んで、好きに、生きていくために必要なもの。
これで間違いないはずなのに。
どこか、頭の隅で、誰かが騒いでいる。
こんなものが欲しかったのか。本当にこれが欲しかったのか。と。
…。
彼はそっと袋の口を閉じ、ゆっくりと立ち上がった。
昨日、彼が崩したドアが目に入る。
ドアの役目はおそらく、いやもう確実に果たしてはいないが。
まぁ。これだけあれば足りるだろう…。と、彼は袋のほうをちらりと見やり。
軽く、息を吐き出してから。
そのまま、崩れたドアから外へ出て行った。
彼は少し後悔していた。荷物をアパートに置いてきたことを。
コンクリートに囲まれた牢の中で、彼は一人、考えていた。
警察に出頭し、この施設につれてこられ、鉄輪に繋がれた。
正直、鉄輪くらい彼の能力を持ってすればすぐに解けてしまうようなものだったが。
自分が犯した過ちと、反省の意味も込めて、かれこれ二年ほど繋がれたままにしている。
問題は。
問題は、あの荷物の中身がまるまる無くなっていたと言うことだ。
おそらく、あのアパートの住民たちがネコババしたのだろうが。
それによって、罪が少し重くなった。7年が17年に延びたのだ。
まぁ、正直そんなことはどうでもよかった、それよりも。
あの荷物の中身を持って行った人たちが、自分たちの人生を狂わせていないか、
それだけが心配だ。
自分は狂わせた。強大な力を手にした途端に、いとも簡単に。
今考えてみればあの時は、魔が刺した。とも、思えない。
昔から、頭の隅で考えていた、自分が想像も出来ないような力が手に入ったとき、
何でも出来る力が手に入ったとき。何がしたいか。
ヒーローになって世界を救いたい。困っている人たちを救いたい。
そう考えている頭の隅で、悪魔が囁いている言葉も、確かに存在した。
それが、歳をとって、頭が大きくなるにつれて、その言葉が大きくなっていた。
だから、あの時とった行動も必然と言えば必然だったのだろう。
あまりにも突発的なものではあったが。
しかし、もう、囁きは聞こえない。
代わりにそこに置かれたのは、罪悪感と後悔。
今でも思う、なぜ、あの時自分は違う選択をしなかったのか。
子供の頃から憧れていた、ヒーローにだって、なれたのに。
悪を挫く、正義のヒーローに。
だが、いまさらそんなことを考えても仕方が無い。
犯した罪は消えない、能力も。
償うしかない、あと、15年。
この償いが終わったら、ここから出られたら。
対能力者部隊に志願してみよう。きっと断られるだろうが。
自分の憧れたヒーローに会ってみたい、一度だけでも。
彼がそう考えながら首をうなだれていると。
カチャリ。と。
狭いコンクリートの牢が、ひらけた。
補足
最終更新:2014年06月20日 09:37