アドルノ・コルト


製作者 梅紫蘇
出場大会 第四回大会

アドルノ・コルト 18歳
アバドン   10万とんで50歳


青年は悪くない。
七十六もの殺人を犯した彼は、他のだれよりも被害者だった。



【過去~現在】


『街』でごくごく普通の生活をしている、ごくごく普通の青年がいた。
それがコルトだった。
どこにでもいるような普通の青年だったが、それゆえ、何も起こらない淡々とした日々に退屈し、変化を求めていた。
そんな彼の望みは、最悪の形で叶えられることとなる。


その日はいつも通り母と買い物に出ていた。
路を辿っていると、自分たちの家の中から怪しい男が飛び出してきた。
何かおかしいと思い、急いで家の中に上がると、そこには目を伏せたくなるような現実が待ち構えていた。
部屋は荒らされ、大量の血が飛び散り、父と兄弟だったであろうものが、その中にあった。裏の住民の仕業だった。
コルトとコルトの母は、家族が失われたことを悲しみ、犯人を恨み、自分の運命を呪って、何時間も潸然として泣き続けた。
その間に外では雷鳴が轟き、彼にある超人的な力が発現した事など一切気づかないほどに――


それからの日々は、すべて犯人を捜すために費やした。
しかし、執念で一目見ただけの犯人を探し出せるほどこの世界は彼に味方してはくれなかった。
あっという間に、一年という月日が流れた。そんなある日、彼に転機が訪れる。


「何が起こったんだ……」
家で寝ていたはずの彼はいつの間にか、自分の住む地区から5,6キロは離れているスラム街にいた。
目の前にはあの男の死体があった。コルトの父と兄弟を死に至らしめたあの犯人の、だ。
なぜ自分がここにいるのか、なぜこの男の死体があるのか、どうして自分の服に返り血が付いているのか、様々な疑問が沸いて出たが、どれも自分が納得できるような答えは出なかった。
そのうち、この状況を誰かに見られたりしたら、間違いなく疑われると思い、急いで帰宅した。
その日を境に同じような事が立て続けて彼の身に起こった。
「ハッ」と気付くといつの間にか夜道に佇んでいて、必ずといっていいほど目の前には死体が転がっているのだ。
なぜこんな事が起こるのかは判然としなかったが、正直そんな事はどうでもよかった。
父と兄弟の仇を討つという目標を失ったコルトにとって、件の事件によってほとんど部屋から出なくなった母を養うことだけが生きている意味だったからだ。
そんな彼にまたもや、転機が訪れる。


彼に奇妙な事件が起こった一週間後のことだった。母がちょうど一週間、部屋から出て来ていないことが心配になって「何があっても絶対に入ってはいけない」と言われていた部屋に意を決して入った。
扉を開けると、そこには異様な空間が広がっていた。
薄暗い部屋の中には何本もの蝋燭が置かれ、床には大きな魔法陣が描かれていた。そして何より彼を動揺させたのは、魔法陣の中で倒れていた母の姿だった。
母の死体の傍らには、『悪魔召還術』の本が転がっており、開かれたページには、『自分の命を犠牲に悪魔と契約を結ぼう』と書かれてあった。
目の前にある光景とここ数日の不可解な出来事は、父と兄弟の仇を討とうとした母が、自らの命を捨ててまで悪魔に頼ったということと、その悪魔が自分の体に棲み憑いているだろうことを意味していた。
コルトは何度もこの世から去ろうとした。何度も、何度も、何度も、何度も……。
しかし彼に棲み憑いた悪魔はそれを許さなかった。自害しようとするときまって意識が飛び、気付けばベッドで横になっているのだ。
悪魔は、例の犯人を殺しコルトの母親を殺したように、『街』の人々を手にかけ続けた。
そしてついに、彼は対能力者部隊に捕まり、重大犯罪者として特殊収容所に収監されることとなる。


独房の中の青年は、もはや生きようとも死のうとも考えてはいなかった。
ある時、目の前の厳重な扉のロックが解除されたが、逃げ出そうとは思わなかった。
しかし、血に飢えた悪魔はこのときを待っていたかのように再び目覚めようとしていた━━



【性格】

“アドルノ・コルト”
家族思いな、いたって普通の青年。だったが、度重なる事件によりいまや廃人と化している。
何をしても自分が救われる事がないだろうと思っているので、今の状態から抜け出そうとは考えていない。

“アバドン”
コルトの母に召還され、犯人を殺す事を約束し、その代償にコルトの母の命を奪った悪魔。
“ハコ”が無いと人間界で活動できないので、コルトの体に棲み憑いている。
普段の生活は面倒くさいのですべてコルトに任せている。
人を殺す事に快楽を覚えており、性格はまさに“悪魔”。コルトの能力を気に入っており、死んでほしくないので治癒力を上げている。
ただし、コルトの能力が気に入っているから棲み憑いているだけで、他にいい“ハコ”が見つかればいつでも移動しようと考えている。
棲み憑いている間に“ハコ”が死んでしまうとそこから出られなくなってしまうので、死にそうになれば逃げる。
※腕が切り落とされたりしても寝ていれば治るほどの治癒力はあるが、戦闘中に回復するほどの即効性は無い。



【技】

『透視能力』
一度視界に入れて認識した人や物の位置が分かる。暗闇の中や、対象が透明化するなどしても対応可能。
また、その対象(人に限る)が隠し持っているものや、その対象の考えていることも透視できる。
元々はコルトの、父と兄弟を亡くしたというショックと犯人を何としても捜し出すという強い思いが発現させたのだが、彼はこの能力の存在を知らない。


『悪魔化』
悪魔アバドンがコルトの意識を乗っ取る。
この状態の時は、少しアバドンの元の姿に近づくため、文字通り超人的なパワーが発揮され、羽と蠍の尾が生えてくる。
これらは自由に操る事ができ、空中を飛ぶことも、尻尾で攻撃する事も出来る。
ただし、悪魔化継続時間は10分程度で、クールタイムが必要。対能力者部隊に捕まったときも、殺人を犯した後のクールタイム中だった。
また、コルトにはこの状態のときの記憶は一切無い。


【弱点】

•透視能力によって読むことが出来る相手の考えは、どうしても1秒ほどのラグが発生してしまう。
•悪魔化によって筋力が増強するといっても、“ハコ”が人間なので、あまりにも強い衝撃には耐えられない。

例えば、本来のアバドンの力ならスーパーコンクリートXでさえ破壊可能だが、それをしようとすればコルトの体は木っ端微塵になってしまう。



【罪状】大量殺人(七十六人)
【懲役年数】3700年

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最終更新:2014年06月20日 10:06