H2・962-963

「友奈ちゃん、今日泊まりに来ない?」

学校からの帰り道
友奈ちゃんにそう声をかけると
楽しげな空気を損なって、俯いて
友奈ちゃんは首を振る

「出来ないよ」

拒絶には力強さはなく
悲しさと申し訳なさを感じる
明日学校だから……そんな理由じゃない
そもそも明日は休み
友奈ちゃんが嫌がるのは
またお漏らしをしてしまうかもしれないからだ

「大丈夫、私は友奈ちゃんの事を侮辱したりしないから」

ずっと一緒にいると決めた
絶対に見捨てないと決めた
侮辱なんてするはずもない
させたのは私なのだから
むしろ侮辱され、見捨てられるべきは私……

そんな言葉を隠しながら
私は友奈ちゃんを凌辱してきた手を差し出す

「もしかしたら、汚したら駄目だって気持ちが守ってくれるかも知れないわ」

白々しい言葉を投げ掛ける
守るはずがない
守れるはずがない
他でもない私が手を出しているのだから

「う、うん……でも、それならちょっと寄り道するね」

そう言った友奈ちゃんは近くの薬局へと駆け込んでいく

一緒に入る気にはなれず
お店の外から中を覗いていると、お会計場所に商品を持って行く友奈ちゃんの姿が見えた

「……生理用品?」

あぁ、そういうことか
優しい友奈ちゃんは
もしも万が一お漏らしをしてしまっても
布団にまで影響がないように、と生理用品を買っているみたい

でも、ふふっ
ごめんね友奈ちゃん……そんなの無意味だよ
友奈ちゃんには罪の意識を抱いて貰わないといけない
自分の事を親友の家ですらお漏らししてしまうイケない子だと思って貰わないといけない

「東郷さん、お待たせ」

穢れた体でありながら
未だ無垢な心のままの友奈ちゃんが手を振る
ちょっとだけ申し訳なさそうな友奈ちゃんは
はにかみながら、私の隣に並ぶ

「……ありがとう、東郷さん」

友奈ちゃんの小さな声は
私の心の傷口に、大量の塩を塗り付けて
ひりひりと、ズキズキと、心が痛くて、胸を抑える
ありがとうなんて言わないで
痛いよ、痛いよ友奈ちゃん
止めてよ、お願い……感謝なんて、しないで

「こんな私のこと……見捨てないでくれて」

そんな私を差し置いて
少しばかりの恥ずかしさを交えて、本当に嬉しそうな表情で
友奈ちゃんはそう言った

「当たり前だよ。だってーー」

はっとして口を固く結ぶ
それは言ってはいけない
友奈ちゃんに自分から気付かせて、葛藤させる
そうすればきっと嘘だよねと、言ってくるから

その時に
満面の笑みで、教えて上げる
嘘じゃないって

「だって友奈ちゃんは私の親友なんだから」

だから今は嘘をつく
友奈ちゃんにとって親友だとしても
私にとってはもう、親友なんかではない

「東郷さんは私にとって親友以上だよ!」

友奈ちゃんは明るい笑顔で言う
親友以上……きっと大親友ってどころだと思う
でも私は違うの、友奈ちゃん
友達の域を出れない親友なんて嫌
恋人がいい、愛し合える関係が良い

以前の私がどうであれ、私はそう思ってる
だから友奈ちゃんに首輪を付けた
あとは手綱を付けて、逆らった時の恐怖を植え付けるだけ

その為に、私は友奈ちゃんを家へと招いた

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最終更新:2015年06月09日 23:43