ストーリーTIPS

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001 ★★★★
+数多ある邂逅の御話
数多ある邂逅の御話

彼女は想いを受け継いで、
彼女は力を託された。

彼は永遠に空を見ていて、
彼は無窮の闇を見ていた。

あの子は像で、
   どこにでもいて、
あの子は影で、
   どこにもいなくて。


一つの物語に
無数の解釈があるように、
登場人物にもまた、
    その数だけ姿がある。

物語をはじめましょう。
これは、有り得たかもしれない――
彼ら彼女らの、
    数多ある邂逅の御話。


002 ★★★★
+『シンデレラ』の物語 Ⅰ 白と黒の理由
『シンデレラ』の物語 Ⅰ 白と黒の理由

剣閃の軌跡、駆ける軌跡、その全てが煌めく貴石。

少女の振るう白水晶は、
暗雲を裂く陽のようで―
少女の振るう紫水晶は、
暗雲を割る雷のようで―

歩みを阻むものは全て、
文字通りに霧散する。

靴音の奏でがコーダを迎え、
観衆のいなくなった舞台の上。
互いに背を向け、
二人の少女は同時に踊りを止める。


白の少女は
纏わりついた灰を払うかのように―
黒の少女は
こびりついた血を誇るかのように―

「間違っています……
  アシェンプテル、
     貴女のやり方は」
「フン。
 貴様にはわからんだろうな、
       サンドリヨン」

振り向き、見合う。

そしてそれぞれの時計の針は、
正反対の少女を指し示した。

003 ★★★
+『シンデレラ』の物語 Ⅱ 白と黒の理由
『シンデレラ』の物語 Ⅱ 白と黒の理由

夢見た姿が目の前にある。
自分以上に真っ白で、他の誰よりも真っ直ぐな。

その正しさは、別の道を歩む私にだってわかるくらい。
その光には、どうしたって憧れる。

「お姉さまは弱いのではなく、優しいだけです」
「……ありがとう、シュネーヴィッツェン」

完成された人に見えた。
人に頼らず真っ直ぐに立ち、自信の象徴たる黒を身に纏う。

その強さは、私の知る彼女にはないもので。
その引力には、私でさえ抗いがたい。

「貴女は、どうしてそこまで強くあれるのですか」
「……縋る暇などなかったからな。人にも、情にも」

004 ★★
+『シンデレラ』の物語 Ⅲ 白と黒の理由
『シンデレラ』の物語 Ⅲ 白と黒の理由

「彼女についていなくて良いのですか?」

サンドリヨンには、アシェンプテルのような強さはない。
それはサンドリヨン自身も理解しているようだ。

サンドリヨンにはきっと、アシェンプテルのような
強さはないのだろう。
だけど私の良く知る彼女は、サンドリヨンに惹かれている。

サンドリヨンには本当に、アシェンプテルのような
強さはないのだろうか?
光なき舞台でも戦い続ける意志。手折られぬ気高き華。

戦場で咲き続ける、真の主役としての才覚。

それこそが彼女の……サンドリヨンの"強さ"。
私の良く知る彼女――
シュネーヴィッツェンが求めるものなのではないだろうか。

「それがシュネーヴィッツェンのためになると判断しました」

005 ★★
+『シンデレラ』の物語 Ⅳ 白と黒の理由
『シンデレラ』の物語 Ⅳ 白と黒の理由

「ヤツについていかなくていいのか?」

この人は、お姉さまよりも強い。
多分、自覚もしてると思う。

この人はきっと、お姉さまよりも強いのだろう。
確かに憧れる。何者にも道を阻めないほどの強さ。

この人は本当に、お姉さまよりも強いのだろうか?
仲間たちが倒れる中でも戦い続ける意志。折れまいとする孤高の華。

ピンと張り続ける糸のような、危うい強さ。

それこそが彼女の……アシェンプテルの"弱さ"。
私の良く知る彼女――
シグルドリーヴァが求める何かなのではないだろうか。

「ええ。貴女の方が危なっかしいですから」

006 ★★
+『シンデレラ』の物語 Ⅴ 白と黒の理由
『シンデレラ』の物語 Ⅴ 白と黒の理由

「なあ、アンタとアシェンプテル……どう違うんだ?」

別の可能性の私。
寄る辺なき戦場に立つ、一握りの剣としての私。

「アタシにゃ同じに見えんだよ。出どころ以外は、な」

大姉様やちぃ姉様、大勢の仲間に囲まれて育った自分。
独り、その身に戦友の想いを負って立つ彼女。

「……察しはついたかよ?」

期待に押しつぶされる可能性を、理解しているから。
私とは違う弱さ故の強さ。

「強くあり続ける、理由……」

007 ★★
+『シンデレラ』の物語 Ⅵ 白と黒の理由
『シンデレラ』の物語 Ⅵ 白と黒の理由

「あなた……サンドリヨンにそっくりね」

別の可能性の私。
力なき身で戦場に立つ、借り物の剣の私。

「そうね、貴方は貴方。でも、同じであることの否定にはならないわ」

誰かのために強くあろうと律し、そうあることを正しさとしてきた自分。
自らの弱さを認めながらも、共にある誰かのために舞台に上がる彼女。

「思い当たるところ、あるんじゃないかしら?」

弱さを認めたからこそ、独りにならないために。
私とは違う弱さ故の強さ。

「強くなりたい理由、か……」

008 ★★★
+『シンデレラ』の物語 Ⅶ 白と黒の理由
『シンデレラ』の物語 Ⅶ 白と黒の理由

 あの子と私のように、彼女たちも器用ではない。
だからこそ、この二人は“自分”を強く意識したのだろう。

それはとても正しいことで、そして少し寂しいことで。
互いに欠けた表と裏。その最たる二人は、故に向き合えた。

「アタシたちもやってみるか?アレ」
「……遠慮しておくわ。お婆様の指示でもない限りは、ね」

奴には期待に応えなければならない理由がある。
私には期待される理由がある。

彼女には強くならなけらばならない理由がある。
私には強くなりたい理由がある。

「拠り所……大きくも、ただそれだけの違いか。フッ」
「誰かの為……見ているものは、同じかもしれませんね」


009 ★★★★
+『ピーターパン』の物語 1 永遠に続くモノ
『ピーターパン』の物語 1 永遠に続くモノ

「逃がしはしないぜ!」
言うが早いか動くが早いか。
ピーターは付近で一番高い屋根から
飛び出し、銃を構える。
視線の先には、悪党の仲間が操る空飛ぶ
機械。狙うのは、空飛ぶ機械の操縦士。

だが悪党は怯まない。
それどころか銃を構え――躊躇なく、
地上で自分を睨む少年の一人――
ピーターの仲間に向けて、引き金を引いた。

身を翻し、急降下。
すれ違いざまの悪党は妙に焦った様子で、
舞うかのように空へと昇っていった。


「あーあー
 ……なーにやってんだ、兄弟」

肩から血を流す少年に駆け寄ると
同時。
視界の端の暗闇が、目の前で倒れる
少年の傷口のように赤く染まる。

「お前が素直に
 アイツをヤっておけばなぁ!」

ナイトメア・キッド。
俺の影――もう一人の俺を自称する、
赤いマフラーの少年。
楽しそうに歪めたその顔を、俺はまた
直視できないでいた。

010 ★★★
+『ピーターパン』の物語 2 永遠に続くモノ
『ピーターパン』の物語 2 永遠に続くモノ

「どうしたの? 元気ないじゃない」
ああ、ちょっとな……と掠れた声で返す。
ちょっとくらい強がって見せたが、それすらも叶わなかった。
「ふぅん――ねぇ、ちょっと聞いて欲しい話があるんだけど!」
人を寄せない雰囲気をものともせず、シレネッタは続けた。
ある男の辿った道、そしてその未来を知った男の物語を。

「あの子、折れちゃうんじゃない?」
一方的に話し続けるシレネッタと、頭垂れるピーターの二人か
ら離れた岩陰。
警戒した様子のメロウは顔だけを覗かせ、ねめつける。
「ハ、そんときゃアイツがその程度ってことさ。
 これからが見ものだぜ?」
含み笑いを漏らすナイトメア。
メロウがそれに気づいた瞬間には、すでに溶けてしまったかの
ように姿を消していた。

011 ★★
+『ピーターパン』の物語 3 永遠に続くモノ
『ピーターパン』の物語 3
永遠に続くモノ

戦いの後、フックの催した宴の光が遠くに見える海岸。
自分が渦中にいない喧騒を嫌うかのように離れた場所で、赤黒く
染まったマフラーを握りしめる。
「何があった……なんて、もう聞かれ飽きたかしら?」
「メロウ……」
「シレネッタに似てうるさいはずの貴方が静かだと、
 こっちも落ち着かないわね」
珍しく軽口をたたいた彼女に目を丸くしていると、どこからか湧
き出した水を軽やかに鳴らしながら、すぐ傍まで寄ってきた。

「海底が希望の光で満ちている時、
 陸の世界は最も近くにある――人魚のことわざよ」

意味は言わなくてもわかりそうね、なんて言って続け
「あなたが大事な決断をしなければいけない時は来る。
 望むと望まざるに拘わらず、ね」
その時に後悔だけはしないように、と最後に笑った。

012 ★★
+『ピーターパン』の物語 4 永遠に続くモノ
『ピーターパン』の物語 4 永遠に続くモノ

「ハァ~イ、ナイトメア! こんなとこで何してるの?」
宴の光も音も届かない木陰。
耳のいいシレネッタには存在を察知されてしまったらしい。
「メンドクセェのが来やがった……」
不快感を露わにしても構わず、心底楽しそうな波しぶきを遠慮なしに
立てて寄ってくる。
向けられた負の感情を気にも留めていないのか、うるさいくらいな
笑顔のオマケ付きで。

「にしてもコイツがねぇ……」
アイアン·フックに起きた"悪夢"、文字通りその渦中。デス·フックを形作った張本人。
それがこのお気楽娘だと知った時には耳を疑った。
「だからこそ――」
「なになに、私の話?」
耳ざといにもほどがある。
「チッ、何でもねぇよ」
洩れそうになった言葉を飲み込んで、今度こそ音もなくそこを录び立った。

013 ★★
+『ピーターパン』の物語 5 永遠に続くモノ
『ピーターパン』の物語 5 永遠に続くモノ

「貴様ニモ。少シハワカッタダロウ。永遠ヲ求メル愚カサガ」
不気味に伸びる影が近づいてきた。影の主は、デス・フック。
光を背にした分なお昏く光る眼窩の炎を揺らめかせ、呪いの言葉を吐いてくる。
「カツテノ俺ハ、人魚ニ永遠ヲ求メテ“コウ”ナッタ」
マントを翻し、その内を曝け出す。
骨だけと化した身体。執着したが故の喪失。
「過ギタ願イナノダ、永遠ナド。愛モ、時間モ、何モカモ等シク」

わかっているけど、否定したい。
受け入れてしまえばそれは、“永遠の少年”ピーター・ザ・キッドを否定することになる。
そう――
「俺を信じてるヤツがいる。永遠を夢見てくれるヤツがいるんだよ」
だから――
「俺は、せめて――」
続いたセリフを「ドコマデモ青臭イ」と笑いながら宴の光に背を向け、デス・フックは歩きはじめた。

014 ★★
+『ピーターパン』の物語 6 永遠に続くモノ
『ピーターパン』の物語 6 永遠に続くモノ

「あの小僧、柄にもない。」
焚き火の最も近く、宴の主人として座るアイアン・フックが愚痴を漏らす。
手を変え品を変え宴を盛り上げるヤツの姿が、今日は見えない。

「よぉ、そんなに心配か?」
声だけが響いた。だが、他に留めている者はない。
「フン……」
異様な状況にも動じず、フックは鼻を鳴らすだけにとどめた。
「なんだよ、つれねぇじゃねえか」
軽口にも眉一つ動かさず、応じる。
「事の顛末、この俺が知らないとでも思っているのか?」
「へっ、さすがは七つの海の海賊王サマってか」
返答にならない返事。これも常套手段だ。
「癪に障るガキでも、俺のいたあの都市の住人だ。貴様如きが――」
「熱くなるなよ。っと、お客さんだぜ」
険しい表情になっていたのか、心配したらしい誰かが寄ってくる。
それに気付いた次の瞬間には、声はもう聞こえなくなっていた。

015 ★★★
+『ピーターパン』の物語 7 永遠に続くモノ
『ピーターパン』の物語 7 永遠に続くモノ

「なぁ……大変だったんだな、おっさんも」
「唐突に気持ち悪いヤツだな。……もういいのか?」
「おう!シレネッタから色々聞いたりしたからな!」
ちょっと前までが嘘だったかのように、その顔にもう影はない。

「俺は、ずっと俺のままでいるだけさ!」
「結局それか、全く、そういうところまで……」
似過ぎてるんだ、という言葉が続いたような気がした。
だがフックがそれ以上語ることはなかった。

月光も届かない闇。
誰かがいるのを当然知っているかのように、
デス・フックは音を漏らす。
「同類ガ欲シカッタノカ?ダトシタラ――」
「おいおい勘違いすんなよ。
俺はもっと夢を見続けてもらいたいだけさ」

堕ちるなんてこれっぽっちも思ってなかったさ、と嘯き。
真っ赤な影が、満足そうな笑顔で月の下へと飛び出した。
「悪夢ってのは、夢を見てくれなきゃ見せらんねぇからなぁ!」


016 ★★★★
+『不思議の国のアリス』の物語 いち わたしはだぁれ?
『不思議の国のアリス』の物語 いち わたしはだぁれ?

目の前に、わたしがいる。
あれはわたし?

「これは鏡。これはあなた」

ホントは知ってるよ。
あなたはもう一人のアリス。
    シャドウ・アリス!

「ふふふ、本当にそうかな?」

いじわる言っても、
わたしにだってわかるもん!


「わたしがアリス。
 ちいさなちいさなリトル・アリス」

「私がアリス。
 どこにでもいるシャドウ・アリス」

でも、手を合わせて
くるくる回って踊ったら――

どっちがアリスで、
どっちがアリス?
他の人には、わからないかも!

017 ★★★
+『不思議の国のアリス』の物語 に わたしはだぁれ?
『不思議の国のアリス』の物語 に わたしはだぁれ?

「貴女方は、やはり良く似ていらっしゃいますね」
そうかなぁー?
けっこう違うと思ってたんだけどなぁー。

「アンタも気が利かないねぇ」
マリアンも、なんだか不満みたい。
「おっと、そうですね…」

「似てはいますが、ちゃんと個性もあって可愛らしいですよ」
やったあー! キレイなロビンにほめられたよ!
「テキトーなヤツだねぇ…
 アンタは愛嬌があって、ホント妹みたいだよ」
マリアンもほめてくれた! えへへ、いいでしょー?

「うん、よかったねぇ。でも……」

「とはいえ、似ても似つかないアタシら二人とは大違いだよ」
「だってさ。ねぇ、こんなこと……してみない?」
なになに? ないしょのおはなし?

018 ★★
+『不思議の国のアリス』の物語 さん わたしはだぁれ?
『不思議の国のアリス』の物語 さん わたしはだぁれ?

「ねぇねぇ、マリアン!」
「ん、なんだぃ……おっと、ちょっと印象変わったかい?」
「うん! ロビンが、お化粧ほめてくれたの!」
「……それだけかい?」
なんだか、マリアンはまたまた不満そう。

「うん、そうだよ!」
「あー、アイツも眼が曇ったかねぇ」
ロビンのお話をすると、ごきげんななめになっちやうのかな?

「……もしかして、ロビンと仲が悪いの?」
「そんなんじゃないさ。ま、多少察しが悪いのは気に障るがね」
おとなの人って、なんだかむずかしいんだね。

「それより、他の連中にも見せてきたらどうだい?」
「うん、行ってみるね!」
ふふ、マリアンも気付かなかったみたい! やったね、大成功!

019 ★★
+『不思議の国のアリス』の物語 よん わたしはだぁれ?
『不思議の国のアリス』の物語 よん わたしはだぁれ?

「ねぇ、ロビン」
「おっと……シャドウ・アリス、貴女でしたか」
「あの子……アリスの居場所、知らない?」
「アリスさんですか? んー……ほら、そこに」
ロビンに指さされちゃつた。私じゃないのになぁ。

「あのね、わたしはシャドウ·アリス。
 あの子はリトル·アリスだよ」
「ふふふ、申し訳ありません。冗談ですよ」
むぅ……からかわれたって、マリアンに言いつけちゃおうか。

「いじわるな人だね」
「可愛らしい女性には、冗談の一つも言いたくなるものですよ」
そんなこと言っても、私は誤魔化されないよ。

「あまりに猫のようだと、射ってしまうかも。お気をつけて」
ふふ……怖い人だなぁ。


023 ★★★★
+『桃太郎』の物語 壱 未来を形作る何か
『桃太郎』の物語 壱 未来を形作る何か

いつかどこかの、御話です。
ある所に、吉備津彦という一人の若い
お侍様がおりました。
鬼を退治して英雄となった真っ赤な
陣羽織のお侍様は、ある日夢を見ました。

夢の中でお侍様の髪や肌は燃え尽きた
灰のように白くなり、
心の中に燃えていた炎は黒く変わって
いきました。

「これは、
 我が志の弱さが招いたか――」


身体の半分、髪の半分が白く覆われ
ようとしたその時です。
「起きろ、吉備津彦……」
低い声がしたかと思うと、お侍様は
強い力で揺り起こされました。

そこには夢の中で見た自分の姿が
ありました。
「闇吉備津、殿」
「まだ息があるのであろう。
 立ち上がり、剣をとれ……」
闇吉備津と呼ばれた灰色のお侍様は
そう言うと、独りで敵の只中へと
駆けて行きました。

024 ★★★
+『桃太郎』の物語 弐 未来を形作る何か
『桃太郎』の物語 弐 未来を形作る何か

吉備津彦は共に戦う仲間の一人、猿の王である美候に尋ねました。
「貴殿は将来、かの斉天大聖となるのであろう。
 異なる姿となる可能性があるその身……どう考える」
難しいことを考えるのが苦手な美候は、偉くなった自分と比べら
れるのにもやもやしたものを感じつつ答えました。
「どうなるもこうなるも、今のオレ様は今のオレ様だ。
 別人になるわけじゃねぇだろう」
自信満々の美候から何かを感じた吉備津彦は、礼を述べると別の
誰かを探して去って行きました。

同じ頃、闇吉備津彦は美候のもう一つの姿である斉天大聖、通称
大聖に尋ねていました。
「あの美候から貴様のように変化を遂げる……
 度し難き時の移ろいとその身、貴様は何を思う」
しかし大聖は、こう呟くだけでした。
「既に定めにて分かれた身。彼奴と我は別の者」
その言葉を聞いた闇吉備津は頭を少し下げると、その場を立ち去り
ました。

025 ★★
+『桃太郎』の物語 参 未来を形作る何か
『桃太郎』の物語 参 未来を形作る何か

「大聖殿、少し良いか」
吉備津彦は瞑想中の大聖を見つけると、呼び止めました。
「何用か」
大聖は目を瞑ったまま、応えました。
「貴殿はどのようにして人心を集め、そのような身になられたのだ
 やはり神となる前からの行いか」
吉備津彦は、まだ自分が将来どうなるのか不安なようでした。
「汝の望む姿、自身に見えているか」
大聖は口をほとんど動かしていないのに不思議とよく通る声で、
喋りはじめます。
「何を……」
「煩悩、雑念、憂慮……
 それらは己が芯を揺らし、辿るべき導を歪ませる」
そしてそれだけ言い終わると、また口を閉じてしまいました。

026 ★★
+『桃太郎』の物語 肆 未来を形作る何か
『桃太郎』の物語 肆 未来を形作る何か

「唸れぃ! 如意棒!」
美猴がぶんぶんと、自慢の如意金箍棒を振り回します。
「ぬぅん……!」
対する闇吉備津も、自分より大きな金棒を斬鬼刀で弾いてみせます。
そうやって何合か打ちあった後。
「ああもう、しゃらくせぇ!」
美猴は叫ぶと、急に攻撃をやめてしまいました。
ぼりぼりと頭を掻き、得物をしまいって座り込んでしまいます。
「らしくねぇ、 何悩んでいやがる!」
真っ直ぐに闇吉備津を見て、美猴は問います。
「我に苦悩など無い……」
しかし、闇吉備津はいつもの調子です。
「いつもお前が言ってる……なんだ。
 剣が求めるーっつったか、何がしてぇのか伝わってこねぇんだよ」
「貴様に何がわかる……」


030 ★★
+鬼王の称号
鬼王の称号

「のう、我が夫よ」
「ン、ドウシタ?」

 吉備の国は鬼が島を出た温羅と、それを追った阿曽媛。
寂れた庵で足を休める中、阿曽媛は問いました。

「王座を誰にも継がせず発った理由、そろそろ聞かせてもらえぬか?」
「……ヒトノ国、モウ“ヤツ”イナイ……」

 来た道の向こうを想いつつ、温羅は答えます。

「鬼ミンナ、王ノ言ウコト聞ク。ダカラ、ヒト襲ワナイ、約束シタ」
「ぬしが新たに命を下さぬ限り狼藉者も出ない、というわけか」

「だが王の素質が“強さ”なら向いとる奴もおったろうに。例えば――」

阿曽媛が言うより早く、少しだけ悲しそうな声色で温羅は零しました。

「アイツ、スゴク頭イイ。……デモ、鬼ノ多クガ信ジル、チカラダケ」
「不満を持った者が内々で戦が起こすよりは、ということか……」

 一人頷く阿曽媛は、改めてある鬼を思い浮かべました。

「まぁそんな経緯で手に入れた座、“あの子”も認めんとは思うからのう」

031 ★★
+悪であるということ
悪であるということ

「アタシも噂話はスキだけどぉ、コレはちょぉ~っと酷いんじゃなぁい?」
彼女へ殺到する全ての兵の目が、使命に燃えていた。
かの賊に誅を!かの悪に罰を!
正義の旗の下に大悪を討たんという、明確な意志の群れが押し寄せる。
「ま、ダッキさんは稀代の毒婦・・・・・・殺したくもなっちゃうわよねぇ」
向けられる言葉は
――――捉えようによってはオンナを上げるものだとしても――――
全て罵倒、蔑称に類するものだった。
しかし彼女は、その何もかもを、纏った。
「勝ったヒト、強いヒトは正義・・・・・・
負けたアタシは、ワルモノにしとく方がイイっししょ?」
"本当”の自分がどうだったかは、もう関係ない。今ここに、確かに立っているのは――――

国を、人を堕とす白面金毛の大化生。
千年狐狸精としての、妲己なのだから。
「だからアンタも・・・・・・アタシと一緒に,わるぅーいこと、しちゃお♪」

035 ★★
+『図書館』の物語? 図書館の奥へ
『図書館』の物語? 図書館の奥へ

「んもぉー、マメール様ったらどこに行っちゃったのぉー」

 ティンクが、忙しなく羽音を鳴らしながら飛び回る。

 図書館の表層、テイルマスターたちが腕を磨いている場所にマメールの姿はなかった。
ならばと、一層深い場所――無数の本が収められた、図書館の機関部ともいえる領域へ
足を踏み入れる。

「珍しい」

 か細い声で応対したのは、巨大な地球儀に腰かけた白い少女。

「ねぇ、リィド――」
「見ていないし、知らない。我にその役割はない」

 目の前に浮かぶ本へ視線を落としたまま、言葉を遮る。
 それ以上のやりとりは無駄だと言わんばかりに。

「うぅ……わかってはいたけど、辛辣だなぁ……」
「………探し物なら、その役割を持った“彼”を訪ねるべき」

「あ、そっか! わかった、ありがとーっ!」
 ティンクの礼には、ため息が一つ返ってきただけだった。


051 ★★
+『共にあるもの』の記録 1 初代隊長ビクトリアス
『共にあるもの』の記録 1 初代隊長ビクトリアス

サンドリヨンの所属していた部隊、「灰かぶり」創設
時の隊長さんだね。

アシェンプテルの命の恩人でもあるんだよ。
彼女が見出してくれたからこそ、サンドリヨンやア
シェンプテルは今の世にまで語り継がれるヒロイン
になれたんだ!

二人の共通の技であるクリスタルを使った戦闘技術
は、元々彼女の技みたい。
本来脆く扱い辛いクリスタルを扱えるから二人は力
を受け継いだんだけど、その技術を確立した彼女の
場合、より鋭く、より強力な技を繰り出せるらしい
よ!

記録者「シェハラザード・アリー」

052 
+『共にあるもの』の記録 2 ロードピス&チェネレントラ
『共にあるもの』の記録 2 ロードピス&チェネレントラ

サンドリヨンが所属していた私設傭兵部隊「灰かぶり」の先輩だよ。
3人で力を合わせて舞闘会戦役を戦いぬいたんだ。

彼女たちのドレスは、
それぞれの想いが魔法使いの手で形になったものなんだよ!

サンドリヨンはいざ舞闘会戦役で初めて念願のドレスを纏ったとき、
胸元がざっくり開いていてとても恥ずかしがっていたんだ。
でもロードピスが「初代隊長にそっくりだ!」って言ってくれたから、
あのドレスをとっても気にいったみたい!

もちろん、チェネレントラのドレスもよく似合ってるよ!アタシみたいで!
……って痛い!ムチで叩かないで!なんで!

053 ★★
+『共にあるもの』の記録 3 ティンカーベル
『共にあるもの』の記録 3 ティンカーベル

ピーターの相棒の妖精だね。

ピーターやフックのいた交易都市のお宝「妖精の懐
中時計」と対になっている存在で、彼女が満月の夜
にこの時計のゼンマイを巻くと、持ってる人は永遠
の命をもらえるって言われてるんだ!

しっかし、同じ妖精なのにアタシやベルとはかけ離
れた……。
アタシにももっと魔力があったら、あれくらいのな
いすばでぃーになれたり……しないかな……。

記録者「ティンク」

054 
+『共にあるもの』の記録 4 ウェンディ&ロストボーイズ
『共にあるもの』の記録 4 ウェンディ&ロストボーイズ

ピーターの住む交易都市の子どもたちだよ。
クロノダイルがフックの腕を噛みちぎったあの日、
彼らはいつもどおりピーターの助けになろうとしてそこにいたんだけど、
クロノダイルのあまりの強大さに立ちすくんで動けなくなってしまったんだ。

結局、ピーターとフックの活躍によって街やティンカーベルは守られたけど、
彼らは何も出来なかった自分たちの無力さを許せなかった。
やがて「ピーターのように強くなりたい」という気持ちを、
彼らは一度、失ってしまったんだ。

それでも、ピーターとフックが勇敢に闇に立ち向かう姿が
彼ら三人の心の中に確かにあって、
今は「ピーターの助けになりたい」と、そう思うようになったんだ。

ウェンディはそんな三人がまた危険な目に会わないように見守るのが今の仕事。
大好きなピーターに頼まれてるからね。
彼女もまた、ピーターの助けになりたいんだ。

055 ★★
+『共にあるもの』の記録 5 クィーンオブハート
『共にあるもの』の記録 5 クィーンオブハート

「不思議の国」の主、真っ赤なハートの女王様!

怒りっぽくてすーぐ人を死刑にしたがるんだけど、
実際にそれが執行されたところを見た人はいないみ
たい。本当は優しい人なのかな。

アリスがとっさに「お姉ちゃん」って読んじゃうほ
ど、アリスのお姉さんに似ているらしいよ!
確かに、アリスとも少し?

でも、当の本人はそんなことまるで知らないみたい
だね。なんでそんなに似てるんだろう?

記録者「ティンク」

056 
+『共にあるもの』の記録 6
『共にあるもの』の記録 6
057 ★★
+『共にあるもの』の記録 7 芝刈の翁&洗濯の嫗
『共にあるもの』の記録 7 芝刈の翁&洗濯の嫗

吉備津彦の育ての親たちだよ。

吉備津彦のお供三人の師匠・上司でもあるんだよね。
二人ともお供たちを赤ん坊扱いするくらい強いんだって!

"普通にやれば"吉備津彦も片手で捻れちゃうらしいよ!

お爺さん、お婆さんって名前なんだけど、全くそうは
見えないこの二人。
実はこの姿で、すっごいお年寄りだったりして。

……さすがにないかな?

記録者「ティンク」

058 
+『共にあるもの』の記録 8
『共にあるもの』の記録 8
059 ★★
+『共にあるもの』の記録 9 ランプの魔神ジェネヴァ&欲叶える魔神のランプ
『共にあるもの』の記録 9 ランプの魔神ジェネヴァ&欲叶える魔神のランプ

ジーンのお供であり共犯者、ランプの魔神ジェネヴァちゃん!
彼自身が人間では敵わないくらい強大な力を持ってるんだけ
ど、人間の欲を集めるっていう性質のせいで誰かの支配下に
いることが多いんだ。

彼は月をその手に掴むという規格外の野望を持ったジーンに
惚れて、自らの意志で前の持ち王である砂漠の国の領主・ ス
ルタンの元を離れたんだ。

そしてこれがジェネヴァの宿るランプ。
一見晋通の古いランプなんだけど、ジーンの欲の大きさに比例
して、人が抱えなきゃならないくらい大きくなってるんだよ!

さすがは私の見込んだジーン!
これからも、その野望を大きく育てていってね!

記録者「シェハラザード・アリー」

060 ★★
+『共にあるもの』の記録 10 氷雪刀 雪曇&氷結の居合刀
『共にあるもの』の記録 10 氷雪刀 雪曇&氷結の居合刀

氷雪刀に宿る精霊、雪曇。
刀の主、深雪乃を「お姉ちゃん」と慕う、可愛らしい女の子
ですね。
普段は刀から出て少女の姿でいることが多いですが、戦闘と
なれば刀身を絶対零度と化し、深雪乃自身の居合術と併せて
敵を粉砕する心強い相棒です。

こちらが雪曇の宿る氷雪居合刀。鞘に鈴がついていますが、こ
れを鳴らすことなく振り抜けるものにしか、この居合刀は扱え
ないと言われています。
また、雪曇の機嫌が悪くなると完全に凍てつき、抜けなくな
ってしまうようですね。

姉思いの雪曇も、深雪乃を完全に認めているからこそ……
「旦那様探し」にまで、甲斐甲斐しく付き合ってくれているので
しょうね。

記録者「マメール」

061 ★★
+『共にあるもの』の記録 11 銀靴の精霊 ネッサ&天翔ける銀の靴
『共にあるもの』の記録 11 銀靴の精霊 ネッサ&天翔ける銀の靴

移動を司る精霊、銀靴のネッサ。
常に動き回っていたいやんちゃな性格の女の子で、
隙あらば銀の靴ごと飛び出そうとしてしまう子です。
その度にドロシィのお供たちが引き止めていますが、
ドロシィ本人は面白がって好きにさせようとしている
ようですね。

これがネッサの宿る銀の靴で、持ち主を望む場所に飛
ばす魔法を発動させることができます。
元は独立魔法都市国家オズの東を統治する魔女の持ち
物でしたが、東の魔女が倒されたことで一度北の魔女
に渡り、彼女からドロシィに授けられました。

対になるもう一足の靴があるとの噂ですが……
誰が持っているのでしょうね?

記録者「マメール」

062 ★★
+『共にあるもの』の記録 12 先代の魔女アグニ&継ぎし温もりの人形
『共にあるもの』の記録 12 先代の魔女アグニ&継ぎし温もりの人形

「火を継ぐ一族」の先代魔女、そしてミクサの実の祖母だ。
氷霧の妖魔ニクスとの戦いに敗れたが、その魂はソウル化
し、今も「火の触媒」共々ミクサの持つ人形に宿っている。

ミクサが混乱するのを避けるためか姿を現すことはないが、
目に見えぬ形で彼女のことを助けているようだな。
「火を継ぐ一族」は代々能カの元となる「火の触媒」を何
らかのアイテムに宿して次代へと継ぐ。先代である祖母か
ら末裔であるミクサに継承する際に使用されたのがこの人
形だ。

結果としては「受け継がれてきた一族の能カ」「祖母から孫
への想い」「境遇に折れない主人公の心」など……様々な要
因が重なることで、強大な能力を持つキャストを生み出す
ことになった。興味深い結果だとは思わんかね?

記録者「ヴィルヘルム・ヴァルト」


064 ★★★
+源泉たる知識 1 図書館 Wonderland
源泉たる知識 1 図書館 Wonderland

闇と戦うテイルマスターの育成の場であり、
うための手段そのものの一部でもある。

創聖となる素質のあるテイルマスターを導く四創聖が
それぞれの手法を以って育成を担当している。

不可侵となっている図書館の奥には
「異なる言語間の円滑な意思疎通のために物語を繋ぐ」
「キャストが確固たる存在でいられるよう設定を守る」
「物語の闇から、現実の闇が湧き出ないか監視し裁く」
「テイルマスターが対処する前段階で闇を抑制し正す」
という役割を負った四つの"装置"があるという。

最奥に一冊の本が保存されているとの噂があるが、
実際にその本を見た者はおらず、
また最奥に足を踏み入れたテイルマスターはいない。

065 
+源泉たる知識 2
源泉たる知識 2
066 ★★★
+源泉たる知識 3 創聖
源泉たる知識 3 創聖

ゼロから新たな物語を記す才能。
理想をも形と成す意地。
世界を創造する聖なる御業。

"創世"の力を振るう者、それこそが創聖。

物語への介入、改変の先にある力で、
テイルマスターが行き着く頂の名。

その力で自己をも物語の一部としてソウル化し、
今なお姿形を保っている者も幾人か存在する。

067 ★★★
+源泉たる知識 4 マメール・ロワ
源泉たる知識 4 マメール・ロワ

先の大戦を終焉に導いた四創聖の一人。
数多の童話・童謡の担い手。

妖精たちを使役する
不思議な語り口調で煙に巻く
場所を問わずどこにでも現れる
それら現象を含めた実態の掴めなさから、
"魔女"と呼ばれる。
故に、司るのは妨害の力。

特定のキャストを創り出すことはできないが、
物語を"根本から"改変する事ができる変則的な創聖。

この筆跡は誰のモノ?
あの物語にも、この物語にも
見慣れた文字が、刻まれている。

068 ★★★
+源泉たる知識 5 シェハラザード・アリー
源泉たる知識 5 シェハラザード・アリー

先の大戦を終焉に導いた四創聖の一人。
物語に人格を見出し、その運命を視る者。

星読みとしての才、人の心を読む力を併せ持ち、
高名な占い師として名を馳せた過去がある。

創り出したキャストは己の目的に従い、
時には彼女の想像を大きく超えて自由に動く。
他の創聖よりも"親"という性格が強く、
子たるキャストを旅させるため、物語を広く撒いた。
故に、司るのは移動のカ。

彼女は二度同じ星を視ない。
それは結末に繋がってしまうから。
彼らの未来を、決めてしまうから。

069 ★★★
+源泉たる知識 6 ヴィルヘルム・ヴァルト
源泉たる知識 6 ヴィルヘルム・ヴァルト

先の大戦を終焉に導いた四創聖の一人。
零よりはじめて一を成す、完結した創作者。

創作者であり研究者。
知識と計算を信奉し、一切の妥協を許さない。

それは己が出した結果、
即ち創り出した物語に対しても同じ。
失敗作は迷うことなく切り捨て、
間断無く次の「実験」を開始する。
故に、司るのは攻撃の力。

はじまった実験は止まらない。
理論の正しさを示すまで。
その機能を余さず全うする、その時まで。

070 
+源泉たる知識 7
源泉たる知識 7
071 
+源泉たる知識 8
源泉たる知識 8
072 
+源泉たる知識 9
源泉たる知識 9
073 
+源泉たる知識 10
源泉たる知識 10
074 ★★★
+源泉たる知識 11 七精霊の加護
源泉たる知識 11 七精霊の加護

シュネーヴィッツェンが持つ力。

七色の精霊が課す、
正義・勇気・知識・慎重・忠実・貞節・愛
の試練を超えた者だけに与えられる、聖なる加護。

彼女は攻撃で魔力を放出する際、
槍の内部の精霊たちを経由することでその力を加速させる。

そうする内、徐々に精霊にも魔力が充填されていき、
全ての精霊が満ちたときに顕現するものこそがこの力――

七精霊の貯蔵魔力を使った最大加速――「七精霊の加護」

075 
+源泉たる知識 12
源泉たる知識 12
076 
+源泉たる知識 13
源泉たる知識 13
077 
+源泉たる知識 14
源泉たる知識 14
078 
+源泉たる知識 15
源泉たる知識 15
079★★★
+源泉たる知識 16 発気揚々
源泉たる知識 16 発気揚々

怪童丸が持つ力。

揚々と闊歩し、地を踏み鳴らして気を発す。

陽気を奉じて内なる雷神の気を高めることで雷を生じ、
血液のように巡る雷は、攻撃の意志に応じて敵を討つ。

しかし迷いや弱気が首をもたげれば、陽気―ひいては雷を遠ざける。
神が求めるものが奉じられない場合、次に求める“モノ”は必定。
よって生来より豪放磊落、不撓不屈が定められている。

断じて行えば鬼神も之を避く。
己が花道を煌々と照らすは、揚々たるその生き様。

080★★★
+源泉たる知識 17 凍気の刻印
源泉たる知識 17 凍気の刻印

深雪乃が持つ力。

凍てつく傷痕で刻む印は、警“告”と宣“告”。

必殺の一撃を持つ者故の礼儀として、
省み、選択する猶予を警刻として敵対者に与える。

一つ、自らの前を去りその命を拾うか
二つ、自らの前に立ち続けその命を捨てるか

警刻を受けた相手は傷痕の冷気に身を竦ませ、
悔悟の念に足を竦ませる
それでも尚捨てる選択をしたものは宣刻を以って氷柱に捉え、
一刀の下に葬り去る。

最後の一撃に、赦しはない。



+禁書指定 ヴィラン 「クロノダイル」
禁書指定 ヴィラン 「クロノダイル」

気の弱い一匹のワニを闇の力が覆った。
凶暴化したワニは
一人の英雄と少年によって退治されたが、
散り際に英雄の右腕と時計を飲み込んだ。
今も深い海の底から、
時を刻むゼンマイの音が聞こえる…。

+禁書指定 ヴィラン 「フロスティ」
禁書指定 ヴィラン 「フロスティ」

長い吹雪の夜に、忽然と消えてしまった
村の話を知っているかい?
雪に埋もれたんじゃないよ…
闇に魅入られたやつの仕業さ。
いいね…吹雪の夜に大きな足音を
聞いたらすぐにお逃げ。

+禁書指定 ヴィラン 「ジャバウォック」
禁書指定 ヴィラン 「ジャバウォック」

最果ての森には、
恐ろしい闇の力が蠢いている。
大きなアギト、赤く鋭い鈎爪…。
不思議の国の住人が恐れおののく地に、
少女は足を踏み入れる。


+禁書指定 ヴィラン 「黒き錫の兵隊」
禁書指定 ヴィラン 「黒き錫の兵隊」

錫の歩兵は何も考えない、何も感じないんだ。
それ故、闇に取り込まれた歩兵は恐ろしい――。
奴らには恐怖も憐れみも慈悲の心もない。
全てを破壊するまで前進を続けるんだ。
君たちに奴らを止める事が出来るのなら
開放してやってくれ。 ――ハンス.C.アナスン

+禁書指定 ヴィラン 「ジュゼ」
禁書指定 ヴィラン 「ジュゼ」

ゼペット工房が誇る歴史的な最高傑作は、
後に最大の問題作となる。
人形の持った意志は、作者の想像を遥かに
超えるほどに無邪気で残酷なものだった。
彼女は言う。人間なんて不自由なものには
決してなりたくはないと。

+禁書指定 ヴィラン 「蠅魔王ベルゼブブ」
禁書指定 ヴィラン 「蠅魔王ベルゼブブ」

人々の与り知らぬもう一つの世界―
電脳空間ARCANA(アルカナ)。
現実を飛び交うその”世界”の噂話は、
まるで”童話”の祖たるフォークロア。
二つの世界の数奇な符合を、複眼が繋いだ。
顕るは、大魔界にその名を馳せる蠅魔王。



Ver.4.00以降、修練場は「冒険譚」に改題された。
それに伴い、冒険譚のストーリーTIPSが追加された。
(それぞれのストーリー深度を増やすことで解放できる。)

■新兵と冒険
1(ストーリー深度0)
+起動
起動

『……なせ……い……死な……ぜっ……に……』

声が響き、身体が小さく揺れる。
頭の中の声はだんだんと鮮明になっていき、つられて意識が覚醒をはじめる。

「ん、マスター……?」

ゆっくり目を開くと、
――それがどんな感情なのかはわからないが――
【マスター】が眉を落として覗き込んでいた。

【マスター】
様々な物語を経た人。物語に介入し、創造する才を持った人。
心をも書き記す可能性を、持った人。
そう教えられた。

「自分は問題ありません。すぐに動けます」

特に身体の不調がないことを確認し、そう事実だけ告げる。
マスターはなおも眉を落としたままだったが、自分が身体を起こしたのを見ると、
大きく息をついて立ち上がった。

そして自分が横に立つと、一冊の本――

【冒険譚】

とだけ書かれた本の表紙に触れる。
自分の手を、握りながら。

「では、行きましょう。物語の、はじまりの地へ」

こうして、心の記述を集める旅――
【錫の兵隊】の冒険譚が、はじまりを告げた。

2(ストーリー深度10)
+錫の器
錫の器

見据える先には、ヴィランと呼ばれる巨大な影。
どこから来て何をするのか、それすら不明な敵役。

主人公として箔をつけるための存在として
世界をリセットさせるための存在として
物語の終着点となるための存在として

理由は異なれど、どれも必然性から生まれる怪物。
あれらには物語を動かす何かが存在している。

『彼らは倒されなければならないんだ、キミたちの手によって』

それによって自分の物語は進むのだと。
自分に足りないものを補完できるのだと。
そう教わった。

『異なる経験や記述が積み重なることで、キミは新たにキャストとして完成するからね』

だから、戦う。
人格を――心を獲得し、望まれた【キャスト】たり得るために。

「戦いましょう、マスター。心を、自分に足りないものを得るために」

そう告げて銃剣を握る手に力を込めた。

戦い方は、身体が覚えている。
キャストは戦うための存在だから、きっとそれは自然なことなのだろう。

強大な敵だが、臆することはない。
臆するだけの心は、まだ持っていないのだから。

3(ストーリー深度20)
+戦場を駆ける
戦場を駆ける

「正面より敵『黒き錫の兵隊』、来ます」

傷だらけの黒い鎧に、酷使され過ぎてか先端が欠けた黒い槍。
色や細かな意匠の違いはあれど、それは確かに【錫の兵隊】だった。
彼らもまた、自分が戦うべきヴィラン。

「……あれは」

遮二無二突撃を仕掛けてくる兵たちの中に一点、くすんだ黄褐色の光が見える。

兜と鎧の間、首元に引っかかった首飾りは戦傷のせいか一部が砕け去リ――
閉じ込められていた小さな花も、すでに枯れてしまっている。

「前に見た、何か……?」

似た何かを見た記憶がある。
だが、今思考すべきではない。

狙いを定め、引き金を引いた。
僅かに逸れた鉛塊が、首筋を捉える。
それでも人一人打ち倒すには過剰な威力のそれは頸甲を弾き飛ばし、
首に巻きついていた鎖も引き千切った。

衝撃ではじけ飛んだ首飾りが、足元に落ちる。
拾い上げてみても、不明瞭な感覚は消えない。

「ッ……これ、は……」

反射的に目を閉じると、突如として映像が瞼の裏に流れ込む。
最初はモノトーンだったそれは、徐々に色を帯びていった。

4(ストーリー深度30)
+

∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
視界に色が戻った時、記憶にない風景が広がっていた。

「おう兄弟! 今日も勝とうぜ!」

突然、快活な声が、パシパシ背を叩く音と共に聞こえてきた。
振り向いた先で、青年が白い歯を輝かせている。
首元には、琥珀で封じた花飾りが揺れていた。

「お、これか? いいだろ、彼女からもらったんだ」

自分の注視を察し、花飾りを撫でる。
彼の視脲の先には、俯き加減に頬を赤くした若い女性が一人。

「……いいモンだな、帰るところがあるって」

それは彼らにとって重要なものなのだろう。
――自分には、わからないが。

「俺たちの仕事はそんな場所を守ることと、帰ってくることだ」
「お前も、あんまり心配かけんなよ?」

ポン、と音を立てて肩に手が置かれる。
彼の指が指し示す先で、彼女は踊っていた。

ヒラヒラと舞い踊る少女。
彼女がこちらを認識し、口の端を上げようとした瞬間――
∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵

「気が付きましたか!?」

今まさに自分へ届かんとする黒槍を、白い戦姫が受け止めていた。
すぐさま自分の武器を確認し、頷きを返す。

「助力に感謝を。このまま突破しましょう」

5(ストーリー深度40)
+女王
女王

幾重もの黒槍を打ち破った先に、彼女はいた。

「随分と調子が良さそうじゃぁないか」

他の兵隊たちとは異なる軽装の鎧に、足首に届くほどのロングスカート。
そして何より異質なのは、顔の半分を覆い隠す黒いヴェール。

顔は伺い知れないが、声から女性であろうことは認識できる。
しかし背後に多くの黒い兵を従えてなお堂々とした威容は、
彼女が士気高揚のための"お飾り"でないことを物語っていた。

「あなたが、自分たちの敵ですね」

言って、構える。
ただの将ならばともかく、敵の核となる者が自ら顔を出したのだ。

撃てば、終わる。
躊躇せず引き金に指を掛け、力を入れる。
狙いはただ一点、文字通りその頭。

撃ち出された弾丸は――

「……おや、私がわからないのか?」

狙いを僅かに逸れ、微動だにしない女の目の高さを通り抜ける。
そして、発生した烈風がヴェールを僅かに裂くにとどまった。

その奥で、青色が妖しく光る。

すぐに次弾を……

思考した刹那。
彼女の世界が、止まった。

6(ストーリー深度50)
+青い瞳
青い瞳

一瞬だったか、それとも数日経過したのかはわからないが――
再び思考が動き出した時、既に状況は終了していた。

紙芝居のように切り替わった視界に映るのは、人の消えた戦場。

消えたのは眼前の敵と、幾人かの味方。
味方の方はおそらく、戦闘で命を落としたのだろう。

「人的損害は軽微。ですが敵ヴィランも取り逃したようです」

結局あれは誰だったのだろうか。

ヴェールの奥に見えた、宝石の如く煌めく青い瞳。
それを見た瞬間に、文字通り停止してしまったことを思い出す。

「何か魔法の使い手でしょうか、それとも……」

『ヴィランを総べる者には不思議な魅力がある』という噂が立っていた。
それが魅了など、魔眼に類するものならば納得もできる。

「ただ、あの瞳……」
以前、見たような感覚があった。

それはいつ、どこでなのだろうか――

7(ストーリー深度60)
+もう一度
もう一度

もう一つ、頭の隅に残り続けているものがある。

戦いの最中に見た光景。
青年と女性、そして踊り子。

少なくともあれは自分自身が経験したことではない。
あれはまるで

「誰か別の人物の視点でものを見ているような――」

そう、そんな感覚だった。

なぜそんなものを見たのか? なぜあの場面だったのか?
思い出そうとすればするほど、新たな疑問が増えていく。

何よりも気になるのは、あのコロコロと変わった青年の顔だ。

歯が見えるほど口元が引っ張りあげられた顔
耳や頬を赤く染め、目じりを大きく下げた顔
目を細めて遠くを見るような顔

あれこそがおそらく、"感情"を表現する方法なのだろう。

どういった原理で変わるのか。
自分で変えられるものなのか、それとも特定の感情を抱くと変わるものなのか。

「もう一度……もう一度見ることができれば、何かわかるのでしょうか……」

そんな"不思議"は、ただ募るばかりだ。

8(ストーリー深度70)
+求めるままに
求めるままに

「マスター、行きましょう」
戦場へ

「戦えばわかるはずなのです」
戦場へ

「そのために、戦っているのですから」
戦場へ——!


「何が危険なのですか?」
誰かが、危険だと言った。
「がむしゃらに戦っているだけに見えて、危なっかしい」と。

自分たちはキャスト、戦うための存在。
それがなぜ、戦うだけではいけないのか。

「自分は戦えています、危険はありません」
幾度もの戦闘を越え、着実に力を獲得してきた。
敗北はおろか、怪我すらも負わないほどに。

「それに、必要だからこうしているのでしょう?」
戦うこと。
記し、紡いでいくこと。
自分が完成するためにはそれが必要だと、言ったではないか。

そうすれば、足りないものを得ることができるのだと!

でも、それだけではダメと言う。
今のまま戦い続けるだけではダメだと。

「では……では自分は、どうすればいいのですか……!」

9(ストーリー深度80)
+掴めないもの
掴めないもの

結局、解答は得られていない。

幾度もの戦いの中で蓄積されたのは、戦う力だけ。
だがいくら戦っても、誰かの視点でものを見るような感覚は訪れなかった。

「もっと先に進まなければならないのに……」
使命感ばかりが、錫の器で燻り続けている。

——果たして、本当に使命感だけなのだろうか?
自分の中にあるモノが何なのか、説明できない。
ならば、ここには他のモノがあるのではないだろうか。

「これが感情だったら……」

感情については、まだ理解できていない。

理解できていないということは、得ているのではないだろうし——
自分が今、その感情に見合った顔をしているかもわからない。

「顔の変化は、他者が見ても明確な変化。なら……」

試しに、ぺたぺたと顔を触ってみる。

しかし——

自分の肌を触っているという実感しか、今は湧かなかった。

10(ストーリー深度90)
+陽炎に見た炎
陽炎に見た炎

戦闘を終えた兵士たちが、焚き火を囲む。
アイアン・フックの言によると、このような炎には人を集わせる機能があるらしい。

また以前ミクサは、『静かな炎、落ち着く……ね』と言っていた。
思い出し、焚き火の芯を覗き込む。

しばらくすると、炎と共に視界が揺らぎはじめた。

——————来た!

意識した瞬間、周囲の風景が色あせ、曖昧になる。
歪む視界に思わず目を閉じてしまったが、すぐ目を開けた。

それでも視界は歪んだままで。
誰かに抱きとめられているのだろうか、身体も動かない。

『……なせ……い……死な……ぜっ……に……』
そして、届く声は遠い。

同時に脳裏を、様々なイメージが通り過ぎる。
目を合わせると顔を綻ばせ
喧嘩して頬を膨らませ
二人きりで歩いて耳を赤く染める
他にも、数えきれないくらいの表情が場面毎に切り替わる。

そこに突如、轟音と共に炎が割って入った。

一瞬紅蓮に染まった視界が晴れ、はっきりと捉える。
瞳いっぱいに涙を浮かべ、綺麗な金髪を乱した、上質な紙のように白い肌の踊り子。
彼女の、くしゃくしゃに歪んだ顔を。

11(ストーリー深度100)
+白と黒
白と黒

踊り子と同じ顔を持つヴィラン。
度々見る光景は、彼女の記憶なのだろうか。

青い瞳と白い肌。
勿論共通点は他にもあるが、今はそれだけでも十分すぎる。

だが決定的に違うものも存在していた。

「あの、顔……」

どちらも口の端は上がっており、踊り子は目もとも緩んでいた。
しかし、ヴィランは口もとだけ。

まるで、無理にそうしているような——
別のものの上から張り付けたかの如き顔。

「同じ感情でも、違う顔になることがあるのでしょうか、それとも……」

顔を作るのが先か、感情が先かの違いなのか。

加えて、あの姿。
不思議な感覚の中で見る姿では、白を基調とした薄手の衣装だったはずだ。
それがドレスから顔を隠すヴェールまで、黒一色に染まっていた。

さしずめ、黒の女王とでも呼ぶべきか。

とにかく、まずはあのヴィラン——
黒の女王について、考えなければ。

12(ストーリー深度110)
+答えはどこに
答えはどこに

ここには様々な物語を出自とするキャストたちがいる。
だから、彼ら彼女らの話を元にいくつかの仮説を立ててみた。

まず、吉備津彦のように可能性が分岐した説。
似ている顔と相反する面という点では、あり得そうな話だ。

もう一つ、美猴のように時間を経て変異した説。
性質の変容という部分は、近いのではないだろうか。

他にもいくつか仮説は立ててみたが、自分を納得させるには至らない。

吉備津彦と闇吉備津の間にはターニングポイントがある。
しかし、踊り子と黒の女王の間には今のところそれがない。

美猴は成長過程であり、大聖はその到達点だ。
しかし、踊り子と黒の女王がそのような関係だとは思えない。

ではサンドリヨンとアシェンプテルのように、そもそも似た別の人物なのか——

創造主、クリスチャン・アナスンに問うてみても

『それを得るための旅路だろう?
全ての材料が揃わない内に、真の完成は見えないものさ』

と受け流すばかりで、明確な答えは得られなかった。


13(ストーリー深度120)
+しっかり者の錫の兵隊
しっかり者の錫の兵隊

マスターも、創造主から詳しいことを教わってはいないようだった。
代わりにと言って、“お話”として伝わっている物語——
『しっかり者の錫の兵隊』について、教えてくれた。


男の子が、錫のスプーンから作られた二十五体の錫の兵隊を誕生日にもらう。
兵隊たちはみんな同じ姿をしていたが、一体だけは素材が足りず片足が欠けていた。

その家には紙でできたお城と、そこで踊る紙の踊り子がいた。
一本足の兵隊は片足を上げた踊り子を「似た者」と捉え恋愛感情を抱き、視線を送り続ける。

ある時一本足の兵隊は一人、窓から外に落ちてしまい、下水道や魚の腹を渡ることになる。
だが最後には男の子の家へと戻ることに成功する。

しかしかぎタバコの黒小鬼が唆したか、兵隊は男の子の手で暖炉に投げ込まれてしまう。
兵隊が炎で溶け逝く中、踊り子が風に揺られて暖炉に飛び込み、共に焼けてしまった。


こんなお話だ。

最後に消滅してしまうとはいえ、踊り子が変質する記述はどこにもないらしい。

であれば、黒の女王——彼女は一体……?

14(ストーリー深度130)
+やるべき事、やりたい事
やるべき事、やりたい事

「結局、自分は何をやるべきなのでしょう」

ただ戦うだけでは、求める結果を得られないことは理解できた。
しかし今度は、どうすることが最善なのかがわからなくなってしまった。

<ジュゼ>「ジブンのやりたいことから、やっちゃえばいーじゃん!」
「自分の、やりたいこと……?」

気付くと、周囲に他のキャストの方々が集まっていた。
でも、やりたいなんていう意思——優先順位を、自分で決めるなんて……

<ジーン>「全部やりたいなら、全部やっちまうのさ」
<シュネー>「一人でできないことでも、私たちが手伝うから、ね!」
<吉備津彦>「ここにいるのはみな、貴殿の友なのだ」
<火遠理>「それにお主には、成すだけの力も時間もあるのじゃから」

口ぐちにそう言いながら、同じ顔をしている。
いつか見た、踊り子のような顔を。

<サンド>「一つずつで良いのです。できると思うことから、やってみましょう!」

一つずつ。

それなら、まずは——

「自分は、あの人に……黒の女王にもう一度会いたいです」
言うと、顔に少し力が入った気がした。

15(ストーリー深度140)
+境界線を越えて
境界線を越えて

<深雪乃>「誰かに会いたいなら、自分から攻めて攻めて……攻めるべし!」

キャストたちの言葉に背中を押され、女王の根城と言われている場所を目指す。
黒の女王に会うという、明確な目的を持って。

進むにつれて、道を阻む別のヴィランたちも力を増してきた。
しかし、それらもあくまで通過点。
こんなところで止まってはいられない。

止まれないのであれば、止まらなければいいだけだ。
成すだけの力は自分にも、他のキャストたちにもある。
後ろに続くキャストたちの方は振り返らず、先頭をひた走った。

——————
————
——

どれだけのヴィランを倒しただろう。
他の物語で見るような怪物まで現れたが、闇を倒す存在である自分たちの敵ではなかった。

「間もなく敵ヴィラン、黒の女王の支配圏に入ります。みなさん、よろしいですか?」
返事は無いが、聞こえてくる足音は力強くなるばかり。

「では、行きます」
境界線を踏み越えるつもりで、歩幅を広げる。

その時だった。

またしても、巨大な影が立ち塞がる。
シルエットは同じ——だが、纏う雰囲気は違っていた。

16(ストーリー深度150)
+奇妙な戦い
奇妙な戦い

手ごたえがない。
何度、誰が攻撃を試みても結果は同じだった。
刃も銃弾も通らず、弾かれる。

確かに見た目は違っているが、それくらいの差異は今までにもあった。
加えて、敵ヴィランの行動に大きな変化はない。
特に防御姿勢をとっているわけでも、結界があるようにも見えない。

「とにかく、糸口を見つけましょう」
近くで観察するため、猛攻の間隙を縫って接近を試みる。

ヴィランは足元に滑り込んだ自分に狙いを定め、腕を大きく振りかぶった。
相手をひるませるつもりで、銃剣の切っ先を向ける。

だがそんなこと気にも留めず、ヴィランはその腕を振り下ろした。
「しまっ……」

刃は通らず、弾かれる。
当然それは、こちらから攻撃した時に限らない。

弾かれた反動で飛び退きとっさに銃身で身を庇うが、巨腕はなお速度を増して迫る。
「まだ自分は……」

刹那。
ノイズが走る。

「っ、こんな時に……!」
抗う意思を無視して、視界は色を失っていった。

17(ストーリー深度160)
+

視界が開けると、真っ赤な壁が広がっていた。
いや違う、これは——

『大丈夫か?!』

幾重にも重なった、赤い鎧兜と槍の壁。
それは、急ごしらえの防御陣形だった。

壁の隙間から見える敵の姿は、ついさっきまで自分が戦っていたヴィラン。
衝撃を複数人で分散し、振り下ろされた腕を押し留めていた。

『攻撃が通じない、勢いを殺すことも難しい、か……!』

正面から、はじめてこの感覚を得た時にも聞いた声がする。
今にも崩れそうな即席の盾は、しかして明確な意志を持つ彼を中心に形を保っている。

『ぎっ……行け! お前がやらなきゃ……ならないんだろっ!』

兜の奥から響く歯ぎしりを塗りつぶすように、叫ぶ。

『こいつは、俺らだけでなんとかしてやる!』

確かに、このヴィランを倒すことが目的でないのなら、合理的な提案だ。
この視点の主一人でも遂行可能なことだからこそ、こう言ってもいるのだろう。
だけど——

だけど、本当にそれでいいのだろうか?
自分の身体でないからか、その疑問は音にならなかった。

18(ストーリー深度170)
+開かれた扉
開かれた扉

<美猴>「なぁにボサッとしていやがる!」
身体の芯まで響く大声で、意識が強制的に引き戻される。

「あ……」

目を開いた先には、たくさんの人と武器。
吉備津彦、温羅、ピーター、他にも多くのキャストが——
クリスタルの剣、銀の槍、巨大化した棍、他にも数多の武器が、壁を築いていた。

<シュネー>「大丈夫?!」
<ピーター>「攻撃も通じなきゃ、勢いすら殺せない、か……ちょっとマズいぜ……!」
槍を両手で支えるシュネーヴィッツェンとナイフの腹と腕をクロスさせたピーターが、
声を絞り出す。

<サンド>「貴女は行ってください! そのために、ここまで来たのでしょう?!」
中央に立つサンドリヨンが、こちらを見ずに叫んだ。

同じだ。
いつか糸口を見つけてヴィランを倒すことができるであろうことも。
私一人でも先に進めるであろうことも。
でも——だけど——

「……イヤ、です」
理由はわからないが、そう思った。
言葉が勝手に口をつく。

「自分は……私は、みなさんを置いて行くなんて、イヤです!」
あれ、今私、なんて——

19(ストーリー深度180)
+ハローワールド
ハローワールド

——非合理的な選択だと思う。

「私、みなさんが背中を押してくれたから……だから、やりたいって思えたんです」
堰を切ったかのように溢れ出して止まらない。

「確かに、私は黒の女王に会いたいです。でもそれだけじゃなくて……」

「一人じゃなくて、みんなで行きたい。これも、私のやりたいことなんです!」
私が一揃いの“錫の兵隊”だからだろうか?
言葉にしても、理由はわからない。

——でも、本当にやりたいこと……なんだと思う。

<ジーン>「お前の願い、確かに聞き届けたぜ」
<アリス>「うんうんっ! やりたいなら、やっちゃおう!」

その声を合図に防御を解き、みな一歩だけ後ろに跳んだ。
間髪入れずに、ヴィランの巨大な腕がクレーターを一つ生み出す。

<サンド>「一筋縄ではいかないかもしれませんよ?」
「はい、それでも!」

確かに自分の口から出た応えに、サンドリヨンは「そうですか」と柔らかく返す。
同時に、クリスタルブーツが淡く光を湛えはじめた。

「みなさん……ありがとうございます!」

最後に一言伝え、改めて眼前のヴィランを見据える。
その眼窩には、赤い槍の穂先が光っていた。

20(ストーリー深度190)
+清らかな心
清らかな心


『まずは一つ、文字通り心を掴んだようだね!』
謎のヴィランを撃破した私たちを迎えた創造主アナスンの第一声。

「まさか私がこんな風になるなんて、今でもちょっと驚いてます」

明確なカタチの無いものだとは、わかっていたつもりだったけど。
やっぱり、まだ実感がわかない。

『随分素直に表現できるようになったねぇ。清純な子、といったところかな?』
「清純、ですか?」
<サンド>「清らかで素直、ということですよ」
すぐ横にいたサンドリヨンが、少し得意げに教えてくれた。

他の人より大げさな身振りを交えて、アナスンが続ける。
『その通り! 良い子に育ってくれて、ボクも嬉しい限りさ!』

「そ、それは何よりです。ではこれで——」
言われてなんだかむず痒くなり、マスターを促してその場を後にしようとする。

『おっと、一つだけ教えておくれ』
だが興味深そうにこちらを見つめながら、創造主アナスンが問うてきた。

『今、キミは嬉しいかい?』
嬉しい。
自然と顔が綻ぶのを感じて、何かを理解できたような気分になった。

そうか、この感情が——

「はいっ! とっても嬉しいです!」



■みんなで冒険
1(ストーリー深度0)
+記憶を巡る旅路
記憶を巡る旅路

<サンド>「物語の探索、ですか?」
『そうとも! それも、既に成立し終えた物語の、だ』
サンドリヨンが不思議そうに尋ねると、アナスンはさも当然のように語ってみせた。

<フック>「全く面倒な……探し物なら、本人がやればよかろう」
アイアン・フックのそんな言葉を聞いても、アナスンはしたり顔を崩さない。
いぶかしげなフックを差し置いて、言葉を続けた。

『何かに命が宿る前のことを、本人が思い出せると思うかい?』
<美猴>「んなモン、無理に決まってるだろ!」
噛みつくように歯を見せる美猴にも臆することなく
それどころか、笑顔を口のすぐ前まで近付けて応える。

『そう、無理なんだよ』
ため息を一つついて、脇に立つ錫の新兵の頭にポンと手を置いた。

『この子はこの物語にとっては特異でね。
おそらく、物語に一切干渉できない』
でも――と一呼吸おいて

『本来この物語に関連のないキミたちなら、あるいは』
確信に溢れた言葉を放つ。

『そこでキミたちに頼みたい、というワケなのさ』
そこまで言い終えたアナスンの手にはいつの間にか、一冊の本が握られていた。

『しっかり者の錫の兵隊』

ここに彼女の――錫の新兵の"足りないもの"が眠っているという。

2(ストーリー深度10)
+影は離れず
影は離れず

『ヴィランたちは物語を読み進めるにつれてどんどん強くなる。気をつけて』
まだ納得しきれない中、アナスンによって物語内へ送り出される。

額に飾られた数多の絵が流れていく不思議な空間を通った先。
そこは、よく見知った空間だった。

<妲己>「ここ、私たちの……?」
キャストたちも気付いているようだ。
一様に周囲を見渡しては、困惑の声を上げている。

<アリス>「でも、ちょーっとずつ違うみたいだね!」
道の隅に転がった何かに、リトル・アリスが気を取られていた。
その時――突如、頭上から大きな影が差す。

<妲己>「ちょっ、とぉっ!」
同時に、金色の風が走った。

<アリス>「わ! ありがとー、ダッキさん!」
<妲己>「気をつけなさいよぉ?」
間一髪、影の主がアリスのいた場所を黒く染め抜く。

<吉備津彦>「こやつは……!」
それは、幾度も対峙した姿。
倒されるべき者であり、倒されなければならぬ者――ヴィラン。

『しっかり者の錫の兵隊』
成立し終えたそれは、ヴィランに浸食された世界。
歪められ、先を闇に塗り潰された物語を読み進めるには、その闇を払うしかなかった。

3(ストーリー深度20)
+残されたもの
残されたもの

<ドロシィ>「骨のないやっちゃなぁ」
ヴィランが解け、消えていく。
物語の中でもう見慣れてしまった光景だ。

<ロビン>「やはり、特に今までのヴィランとの違いはありませんね」
討たれる者であるという点も含めて、と続けるロビンに、ジーンが頷き返す。

<ジーン>「ああ。ま、楽でいいじゃねぇか——ん? おーいミクサ、どうした?」
<ミクサ>「ん、これ……」
ヴィランが消滅した場所で座り込んでいたミクサが、手に持ったものを差し出してきた。

<ジーン>「これは……お宝か!?」
ジーンが食いついた通り、それは綺麗に光る何かの欠片だった。
お宝と聞いて覗き込んだドロシィが、形を見て一言零す。

<ドロシィ>「なんやハートみたいな形しとんなぁ」

それを聞いた途端、場にいた全員が顔を見合わせた。

<ミクサ>「これがそう、なのかな……?」
<ドロシィ>「アナスンも『きっとわかる形だから』ってゆーてたし、そうなんちゃう?」
<ジーン>「でもよ、こんなちっさいので足りんのかぁ?」
埒の開かない議論が続く。
見かねたロビンが、そこに一石を投じた。

<ロビン>「とにかく一度お渡ししてみましょう。ダメであれば、また探せばいいだけです」

4(ストーリー深度30)
+変化の訪れ
変化の訪れ

<ロビン>「さ、ミクサさん」
<ミクサ>「う、うん……これで、いい……?」
ヴィランを討伐した際に拾った綺麗な欠片を手渡す。
アナスンはそれを受け取ると、値踏みするように観察しはじめた。

『ふむ、これは……うん、いい素材になりそうだ。よくやってくれたね!』
手をぱんと叩いて、アナスンが笑顔を見せる。

<怪童丸>「オレっちの出番もなく終わっちまったってぇ——」
『いや、そうじゃないよ』
アナスンは被せるようにして、面白くなさそうな怪童丸の言葉を遮った。

『これは確かにボクの——いや、この子の求めているものだ。でも、まだ足りない』
預かった欠片を卓上に置き、錫の新兵に視線を移す。

<かぐや>「どれほど必要なのですか?」
錫の新兵と、腰につけた大きな錫のハート、欠片を見比べながら、かぐやが問う。

『それは……ごめん、ボクにもわからない。まぁ、また見つけたら教えておくれ!』
しかしそんな困り顔の返答で、お開きとなった。

会話の無くなったその場から、誰もが立ち去ろうとした時——

「あの……みなさん。自分のために、ありがとうございます」
ほとんど会話に入らなかった錫の新兵が、みんなを呼び止めて礼を述べた。
ほんの僅かだが、それは確かな変化だった。

5(ストーリー深度40)
+彼らの結末
彼らの結末

<アリス>「ねぇねぇ、あの子のおはなしってどんななの?」
<ロビン>「錫の兵隊の物語、ですか」
何気ないアリスの問いかけに、ロビンが言いよどむ。

<マリアン>「片足の錫の兵隊がパピールって踊り子に恋したり、外の世界を冒険したりするお話さ」
見かねたマリアンが助け舟を出した。

<アリス>「恋?! 兵隊さんと踊り子は結ばれるの?」
<マリアン>「結ばれるというか、ねぇ……」
ロビンが躊躇った場所をつかれ、さしものマリアンも狼狽える。

<マグス>「二人揃って燃え尽きてしまう、という結末だったはずだよ」
<マリアン>「マグス、あんた……!」
咎めようとするが、仮面の奥の目は別段気にしていない風だった。
それどころか、楽しむように笑っている。

<アリス>「死んじゃうの……?」
<マグス>「さてどうだろうか。後に残ったのは、彼ら自身のカタチではなかったからねぇ」
ぐいとアリスに顔を寄せ、瞳の奥を覗く。

<マグス>「気になるのならば、彼らの記録をより深くまで覗くしかないんじゃないかな?」
彼らの色に染まらないよう、細心の注意を払いながらねぇ——
最後にそう加えると、マグスはひらひら手を振ってその場を後にした。

6(ストーリー深度50)
+亀裂
亀裂

<ヴァイス>「こんなことして意味あんのかよぉ」

きっかけはそんな一言。
最初の変化から幾度かの戦闘を経ても、錫の新兵に大きな変化は訪れていなかった。

<アシェ>「やってみなければわからんだろう、少なくとも変化はあったのだからな」
<ヴァイス>「……どんだけ前の話してンだよ」

本当の意味で褒賞無しに人助けができる者など、ほんの一握り。
見返りの“モノ”が無くとも、大抵は対象から感謝という感情を受け取ることができる。
継続しての支援ともなればなおさらだ。

しかし錫の新兵にはまだ、他人に向けられるほどの感情はない。

<ヴァイス>「ま、感謝して欲しくてやってるわけじゃねぇけどよぉ」
愚痴をこぼしても、何もない。

物語の進展と共に出現するヴィランと戦うという役目が終わってしまえば、
自分たちはすぐに蚊帳の外だ。

<ヴァイス>「しっかしあんなヒラヒラした格好で踊ってるだけなんて、なーにが楽しいんだかねぇ」
物語の進行自体に干渉できない以上、今はさしずめ椅子に座っているだけの観客。
この物語——『しっかり者の錫の兵隊』にとっては、部外者でしかない。

7(ストーリー深度60)
+繋ぐ者
繋ぐ者

『もっぺん言ってみろ!』
『何度だって言ってやらぁ!』
時折ヴィランとの戦がある以外には、こんな兵隊同士の喧嘩もあった。
血の気の多い兵隊たちが集まっているのだから、当然といえば当然だ。

<かぐや>「あ、あの、みなさまどうか冷静に……」
<火遠理>「無駄じゃ。こやつらに、この物語の登場人物でない儂らは見えておらん」
火遠理の言う通り、その場にいる誰もかぐやのことを気に留めようともしない。

今にも手が出そうな距離まで詰め寄った兵隊たち。
そこに、ヒラリと白い姿が割り込んだ。
『しっかり者の錫の兵隊』におけるヒロイン、紙の踊り子とも呼ばれるパピールだ。

『戦いのない時くらい私の踊りで楽しんで、ね?』
踊り子は無邪気に笑うと、いつもとは違うハイテンポなステップを刻み始める。

「あのおなご、あのような顔もできたんじゃのう」
儚げな表情で踊ることがほとんどだった踊り子の変化に、火遠理は感嘆の声を上げた。

<ツクヨミ>「芸とは元来そういうものよ」
<メロウ>「それに、彼女は特にそういうのが得意みたいね。得意というより特性かしら」
壁の華に徹していたメロウが、珍しく会話に加わる。

跳ねるような踊り子の動きに併せて、メロウの周囲を水が踊る。
火遠理は、得心いったように頷いた。

8(ストーリー深度70)
+はじまりはじまり
はじまりはじまり

平和といえば平和だった。
物語は予定調和のように、自然に進んでいた
——この時までは。

『パピールが攫われた!』
勢い良く開け放たれた扉の音を掻き消して、声が響く。

一言で、場が騒然となる。
各々が装備を拾い上げると、足早に駆け出して行く。

<リン>「た、大変ですわ! 早く助けに行きませんと!」
<多々良>「助けると言っても、どこに行けばいいんだ?!」
それは見ているだけだったキャストたちも同様だった。

<スカ>「落ち着いて。まずは彼を追いましょう」
このお話の主人公と目し観察を続けていた兵隊へ視線を移し、スカーレットが促す。

見ると、いつも落ち着き払っていた兵隊が目を白黒させ、愕然としている。
彼が『しっかり者の錫の兵隊』の主人公である二十五番目の兵隊なのだとしたら当然だ。

兵隊はすぐにハッと我に返ると、慌てて駆け出した。
その後ろ姿を追うようにして、キャストたちが続く。

<マグス>「ふむ、ここがターニングポイントなのか、あるいは——」
人気のなくなった酒場では、帽子を目深に被ったマスターがポツンと一人佇んでいた。

9(ストーリー深度80)
+現われたる黒
現われたる黒

パピール誘拐の報の後、向かったのは錫の兵隊たちが戦い続ける敵国——
黒の国との境界線上。
今まで幾度となく戦闘を繰り広げてきた戦場の一つ。

『やぁ、ご機嫌いかがかな。錫の兵隊諸君』
そこには、黒衣の女が立っていた。

正確には、黒い鎧に身を包んだ数人の兵隊やヴィランたちも並んでいる。
彼女に道を譲るようにして。

『パピールを返しやがれ!』
錫の兵隊の一人が叫ぶ。
だが女はそれを聞いてもくつくつと笑うだけだった。

『言われて返すとは思っておるまい。それとも、平和ボケでもしたかい?』
その言葉に、先程声を上げた兵隊が飛びかかる。
刹那、攻撃の構えをとる暇すら与えられず、足元から飛び出した大鰐に打ち上げられた。
そのまま重力に負けて地面に叩きつけられ、動かなくなる。

『こいつもいただいていくとしよう』
言葉に従うように、黒い鎧の兵隊が倒れた錫の兵隊を担ぎ上げた。
他の誰も、それを見ていることしかできなかった。

『今日は顔見せだ。私はパピールと城で待っているよ』
——なるべく早く来てくれよ
と残すと、唖然とする錫の兵隊たちを尻目に、女は身を翻した。

10(ストーリー深度90)
+笑顔の魔法
笑顔の魔法

音楽と笑顔の消えたホール。
黒衣の女の出現以降、ヴィランたちによる攻撃は減った。
しかしその分境界線の向こう——黒の国側は、立ちはだかるヴィランで要塞と化していた。

圧倒的な戦力差を前に、突破する術が見つからない。
『しっかり者の錫の兵隊』の探索を抜けてアナスンのアトリエに戻ったキャストたちにも、
笑顔は見られなかった。

<ピーター>「あの重っ苦しい雰囲気には参っちまうぜ」
<シレネ>「せめて私の歌で元気付けてあげられればいいんだけど……」
普段であれば率先して場を盛り上げるピーターやシレネッタですらも、この始末。
誰もが、状況に呑まれていた。

一人を除いて。

<アリス>「にーっ!」
意気消沈するキャストたちの顔の真ん前で、リトル・アリスが笑ってみせる。
指を口の端にひっかけて、これでもかと言わんばかりに広げて。

<アリス>「つまんなさそうにしてちゃダメだよっ!」
<ピーター>「そうは言ってもよぉ……」
<アリス>「あの子の方が、もーっと不安なんだよっ!」
言われて、そこにいた誰もがはっとする。
自らに関係している過去を見られない錫の新兵が、一番気をもんでいるはずだ。
そう気づいたキャストたちの間に、アリスほどではないが笑顔が伝播する。

<アリス>「ぜーったい、わたしたちが何か見つけてきてあげるから、ね!」
アリスは他のキャストたちにそうしたように、錫の新兵にも笑顔を見せる。
錫の新兵は相変わらずの無表情に見えたが、僅かに口の端が上がっていた気がした。


コメント
  • 13.14.15.16も恐らく永遠に続くモノですね -- (名無しさん) 2018-11-12 23:12:37
  • 13~15まだ追記されてないのか・・・ -- (名無しさん) 2018-11-14 22:47:58
  • どうでもいいかも知れないけど、「物語の可能性が一つじゃない」なら二つと言わず三つあってもいいと思うんだ。だから三人目のアナザーとかそろそろ来ないかなぁ・・・(パッションなシンデレラとかヤンデレなアリスとか期待してます) -- (名無しさん) 2018-11-14 22:52:56
  • 番号ってどこに書いてあるんだっけ?一応永遠に続くものは全部スクショ取ってるんだが、番号だけ確認できねぇ… -- (名無しさん) 2018-11-16 02:33:07
  • 画面の右下にあります。 -- (名無しさん) 2018-11-16 20:57:03
  • 永遠に続くモノ、わかってるだけ追加。多分一つ漏れてるのと、全体的に番号わかってないから誰か追記しといて -- (名無しさん) 2018-11-21 01:09:15
  • 「童話を守る者 ライテ」か……衣装からシェハラザードと関係がありそうだが……。 -- (名無しさん) 2018-12-13 21:04:36
  • 冒険譚のストーリーTIPSのセリフ、誰がしゃべってるのか分かりづらいと思うのでセリフ主を書いてもらえると助かります(自分でやれって?編集の仕方がわからん・・・) -- (名無しさん) 2019-01-16 15:22:17
  • ↑そのような編集を始めました。不明なところは????で暫定的に埋めていきます。 -- (名無しさん) 2019-05-08 17:03:37
  • ????部分を暫定的に埋めました。多分これであってると思う・・・ -- (名無しさん) 2019-05-10 21:12:34
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