「私は――兄さんを止められない」
心に風穴を開けられ、立ち上がる理由を砕かれて、動くことができない。
凌駕もまた、大切な日常の象徴であり、守るべき家族である
妹を持つ身として……
少女に何ら言葉をかけてやることができずに、自分たちだけを狙う暗黒の拳を見ているしかなかったが。
「違うよ――マレーネ、それじゃ駄目だよッ」
そこに否を唱えたのは、凌駕と同じく満身創痍となって地に叩きつけられていた、ジュンであった。
赤い髪の少女は、流されたマレーネの涙を見ながら、それでもと。
大切な友人の命を受け継いで生き残った者として、次の瞬間には殺されかねない状況でありながらも、
ただ真っ直ぐに、少女の兄や、彼女が最後まで願い続けたであろう、
“生きて欲しい”という思いに報い、受け継ぐ事と向き合い、無様でもいい、足掻いてみよう、と。
“諦めてはいけない”―――それは、過酷な道であり、粗い伝え方ではあったが……
ジュンは、自ら限界を超えてでも這い上がろうとする姿を見せ、
傷ついた少女の希望になりたいと、
あの風のような女性のような言葉をかけるのだった。
本編より
「あたし、頭悪いけど……本当は、全然分かってないから出る言葉かもしれないけど……」
「当たり前じゃない、生きててほしいよ大切だもん!
そう願われたから、守り抜いてくれたから……あたし達はここにいるんじゃない!」
「その思いに報いるってこと……大切で、だから折れちゃ駄目だ……
だって、こんなにも大切にマレーネは思われてるんだから。
それはちゃんと、もっとジタバタして、形にしないと」
「いいお兄さんじゃない、憧れちゃう。
はは、あたしも……たまに欲しくなっちゃうかな」
「だからマレーネ、あたし、今だから本音で話すけどさ………
どうしてだろうね? 初めて見たときから、何でか力になりたいって強く思って──」
「まるで、彼女みたい、に───ッ」
- 凌駕では何も言えなかったけど、ジュンはカレンとふたりだから言えたっていうのがすごい好きなシーン -- 名無しさん (2019-01-02 00:11:35)
最終更新:2021年10月26日 21:42