「どうして、自分はいつもこうなのでしょう。
どうして、こんなにも愚かで無意味なのでしょう。
非力で脆くて、何も出来ない木偶の坊。
大切な殿方の傍にいるという願いさえ、叶えることができなくて……ッ」
ミステル√、三国の兵が入り乱れる戦場で、憂いに表情を翳らせ、必死に姿を消した
想い人の姿を追い求めながら……
続く激戦により負傷し、
過去と変わらず、
かつての主と彼が殺し合う光景に抗する事が出来ず、
今また己の手を伸ばすことが叶わなかった――そんな無力感と絶望に苛まれた縛鎖姫の嘆き。
突如、アッシュが脱走兵として扱われ、生死問わず連行せよという軍命に動揺し――
涙の痕を隠しながら、気丈に振舞う彼女を見守るしかなかった
青年は……
胸の中がぐちゃぐちゃになるような、形容しがたい情動を秘め隠し、いつも
3人と
教官で居た時のように笑いかけた。
―――堅い決意をしっかりと握りしめて。
「心配するなって。オレ様が必ずあのバカを見つけてやるよ。
だから安心して休んでくれ。オレは――――」
君の事が? あいつの事が? 分からないが………しかしそれでも。
「二人のことを大切な仲間だと思っている。信じて欲しい、約束だ」
その偽りなき真摯な想いは、アヤに伝わり……
自分が斃れれば、悲しませてしまう人がいる――
その事実を受け止め、感謝とグレイの身を気遣う言葉を送って、静かに前線から退いていった。
やがて、一人となったグレイは彼女を泣かせた戦友を思い、未だ止まぬ戦火の先を睨みつける。
「死んでんじゃねえぞ、アッシュ」
ここで退場など、絶対に許さない。
何があろうと、彼女の元まで引きずっていく。
自分でも驚くほどの熱意、それをしっかりと抱え、力強く戦場に踏み出した彼は……
戦場には不釣り合いな程、静かな雰囲気を纏ったムラサメに出会い――――
「さあ、俺に出来るのはここまでだ。あいつには借りがあり、罪がある。
所属を超えて償いたいと思った俺はきっと軍人失格なんだろう。だがそれで構わん、
元々終わっていたような人間だ。この選択に悔いも嘆きも一切ない」
教官が去りゆく背後にいた男こそ―――
「そして、これだけは忘れるな―――どうか覚えておいてくれ。」
「おまえ達は二人とも、俺の自慢の教え子だよ」
思いっきり、これまで不条理な現実やまとまらない想いを……
まとめて叩きつけてやりたいバカ野郎の姿があった。
最終更新:2020年07月03日 10:55