マレーネ√、天頂において始まった最後の闘い。
地上に残った“普通”の人々がその星々の輝きに映し出された各々の心を見つめ、思いを明かしていく中、
一人の少女が今戦っている、たった一人の兄の未来を思い、不安も期待も込めた上で発した言葉。
広大な宇宙で繰り広げられる、輝く二つの彗星のぶつかり合い。
それを地上から見上げる者達の胸中には様々な思いが去来する……。
「とても届かないわね、彼らには……そして」
「悔しいのに、眩しい? そうね……頭にくるけど、まったく同感。
けどまぁ、憧れはするけど私はもう御免ね。あいつらのように、王冠も外套も似合わないって分かったから」
ゆえに彼女ら二人、“これからどうするのか”と問われれば、返す答は決まっていた
「素顔に磨きをかけなさい、か……世の中最後は、どれも総じて地道なものね」
「一発逆転に甘えた罰でしょ? まったく世知辛い話だけどさ」
「まったく、よくやるよねほんと。けどまぁ、似合いなんじゃないの?」
「最初から、あいつらは一つの星だったってことさ。人間の行き着く先は、小さな小さなお星様なんだろうぜ。
はは、笑っちゃうくらいメルヘンだねぇ……さしずめ、今は双子星かい? 仲のいいことで」
「大丈夫だよ、高嶺クン」
「あの二人を信じよう。きっと……そう、きっと帰ってくるよ」
それに対し、
“強かった”兄、
けれど今はきっと、“それだけ”ではなくなった兄の行く末を案じる気持ち、
それを今も震える小さな身に抱えながら、
「はい。大丈夫、信じてます。なんてったって、あの人は」
「私の、自慢の兄さんですから」
在るがまま、一人の“妹”としての信頼を乗せて、笑顔で答える―――
そして、ほぼ同時刻……電波塔上においても、同じ星を見つめる
少女達がいた……
二人の胸には想い人である少年、彼を喪失する恐怖があった……
それでも、二人はそれに抗い、自分達の元へと帰ってきてくれる……そう信じる気持ちを捨てずに、その果てを見届けようとする――
傷一つなき心などではなく、挫折・喪失とそれに伴う悲しみや痛みに苦しみ、
だからこそ、他者に対する優しさ、信頼、希望を持てる、そんな心で。
「男ってさ、なんかずるいよね。ああまで息ぴったりで、何だかんだで以心伝心」
「まったくだ、こっちとしては気が気じゃないよ。帰ってきたら、問い詰めないといけないな」
そう語らいつつも、
マレーネは自身の心臓の鼓動が、今、戦っている愛しい人と繋がっている……そんな不思議な感覚を覚えていた。
例え科学と比べ不確かなものであろうと、今確かに感じる生命の音。
遠く離れていても、大切な存在に寄り添えることに、これ以上ない喜びと誇らしさを感じ、隣にいる少女とともに願う……
「勝って、帰って来なさいよ。凌駕」
「私たちも、信じているから───」
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最終更新:2020年05月09日 09:23