私の、自慢の兄さんですから

発言者:秋月高嶺
対象者:草笛 切


マレーネ√、天頂において始まった最後の闘い。
地上に残った“普通”の人々がその星々の輝きに映し出された各々の心を見つめ、思いを明かしていく中、
一人の少女が今戦っている、たった一人の兄の未来を思い、不安も期待も込めた上で発した言葉。



強さも弱さも、輝きも醜さも、“在りのままの人間”を知り、受け止め、愛することを誓い――
大切なことを教えてくれた運命の相手と融合し、
二人であり一つである流星として覚醒、孤高の恒星と化したオルフィレウスに立ち向かっていく凌駕。

広大な宇宙(そら)で繰り広げられる、輝く二つの彗星のぶつかり合い。

それを地上から見上げる者達の胸中には様々な思いが去来する……。


激動する現実に適応するため、
厚い化粧や、歪な仮面を纏い続けた二人の女性は星々の輝きを眩しげに眺めながら、呟く……

「とても届かないわね、彼らには……そして」
「悔しいのに、眩しい? そうね……頭にくるけど、まったく同感。
けどまぁ、憧れはするけど私はもう御免ね。あいつらのように、王冠も外套も似合わないって分かったから」

ゆえに彼女ら二人、“これからどうするのか”と問われれば、返す答は決まっていた


「素顔に磨きをかけなさい、か……世の中最後は、どれも総じて地道なものね」
「一発逆転に甘えた罰でしょ? まったく世知辛い話だけどさ」


己の命の証明のために時代の暗部を駆け抜け、
その果てに科学の極点によって、あらゆるものを虚無としか感じ取れなくなったは、
遥か頭上の闘い―そのスケールの大きさと、瞬間の光に呆れながらも、毒もなく苦笑し……

「まったく、よくやるよねほんと。けどまぁ、似合いなんじゃないの?」

「最初から、あいつらは一つの星だったってことさ。人間の行き着く先は、小さな小さなお星様なんだろうぜ。
はは、笑っちゃうくらいメルヘンだねぇ……さしずめ、今は双子星かい? 仲のいいことで」


諦観の中で出会うことのできた大切な男性(ひと)……
その帰りを待つ選択をした女性は、
天空で同じく戦っている男の親友、その妹の肩を抱きながら彼と交わした約束を胸に秘めて……


「大丈夫だよ、高嶺クン」

「あの二人を信じよう。きっと……そう、きっと帰ってくるよ」


それに対し、“強かった”兄、
けれど今はきっと、“それだけ”ではなくなった兄の行く末を案じる気持ち、
それを今も震える小さな身に抱えながら、


「はい。大丈夫、信じてます。なんてったって、あの人は」



「私の、自慢の兄さんですから」


在るがまま、一人の“妹”としての信頼を乗せて、笑顔で答える―――


そして、ほぼ同時刻……電波塔上においても、同じ星を見つめる少女がいた……

二人の胸には想い人である少年、彼を喪失する恐怖があった……
それでも、二人はそれに抗い、自分達の元へと帰ってきてくれる……そう信じる気持ちを捨てずに、その果てを見届けようとする――

傷一つなき心などではなく、挫折・喪失とそれに伴う悲しみや痛みに苦しみ、
だからこそ、他者に対する優しさ、信頼、希望を持てる、そんな心で。

「男ってさ、なんかずるいよね。ああまで息ぴったりで、何だかんだで以心伝心」

「まったくだ、こっちとしては気が気じゃないよ。帰ってきたら、問い詰めないといけないな」

そう語らいつつも、
マレーネは自身の心臓の鼓動が、今、戦っている愛しい人と繋がっている……そんな不思議な感覚を覚えていた。
例え科学と比べ不確かなものであろうと、今確かに感じる生命(いのち)の音。
遠く離れていても、大切な存在(ひと)に寄り添えることに、これ以上ない喜びと誇らしさを感じ、隣にいる少女とともに願う……


「勝って、帰って来なさいよ。凌駕」

「私たちも、信じているから───



  • 『運命の相手』 -- 名無しさん (2017-07-07 16:43:12)
  • ミリィ「私の自慢の兄さんですから」「オボロロロォッ…」 -- 名無しさん (2017-12-09 06:43:06)
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最終更新:2020年05月09日 09:23