ジュン√、運命に選ばれなかった女達の同属嫌悪、ここに極まれり。
仮面が剥がれる。化粧が落ちる。
溢れ出すのは悲嘆と涙に濡れた過去。捨て去ったはずの思い出が、次から次へと美汐の想いを引きずり出す。
「影装・殲姫装鎧」
選んだ時点で己は既に、憎んでいた者と同じになっていたと。
目を逸らしていた真実を、今こそ青砥美汐は哀切と共に歌い上げた。
自身が何よりも納得できない姿と成り果てた彼女らは共に、力なく言葉を紡ぐ。
「お互い、どこまでも無残な姿ね」
だから―――
「ここであんたを斃しきり、乗り越えることが出来たなら」
「自分を変える小さな勇気を、この手に出来る気がするの」
やがて……渦巻く負の、否定の感情が導き出した結論は───二人、運命的に同じもの。
心を強くしたい、その契機として目障りな合わせ鏡を砕こう……それこそが今の彼女達を突き動かす唯一の動機だった。
「てめぇを潰して」
「あなたを超えて」
自分は必ず変わってみせる、強くなってしまったことを畏れるような目の前の女みたいで居たくないから。
彼女達二人の頭にはもはや他の一切の事柄は入り込んではいなかった。
だってそうだろう、理屈じゃないのだこういうのは。女同士の戦いは、如何なるときも理屈を感情が淘汰する。
構えながら、この闘いの中で初めて二人は互いに向かって小さく微笑んだ。
『───私はここで、生まれ変わるッ!』
美しくほころぶようなその微笑みは……しかし、獰猛な虎が犬歯を鳴らしたような威圧であった。
……敵意、殺意を剥き出しにし、旋風と稲妻は激突する。
「穿ち引き裂きぶっ散れやァ。目障りなんだよ、糞女ァアア───ッ!!」
「散って果てるはあなたの方よ。そんな悲鳴で、粋がるなァア───ッ!」
しかし、その激しさに反して、どちらも致命傷には至らず、同程度の傷を重ねるだけ。
その不可思議な事態に、あれほど猛っていた戦意は萎んでいき、同時にどこか醒めたような感覚を覚え始める。
自分達はいったい、何をやっているのだろうか……と。
初めから自分達は目の前の似た者同士をダシにして逃避していた事をどちらも悟って、苦笑を漏らす。
おまえが嫌いだ、あなたが嫌いだ──だからそれで? 私は変わるの?
敵を力で屈服させて、自分の気持ちが軽くなると?
まだ考えているのなら、そちらの方が厚顔無恥な行動なのではないかしら……
そんな自分達の姿の可笑しさに気づいた上で、それでも───
『私、あんた(あなた)のこと嫌いだわ』
そうして二人の女は疲れ切ったという雰囲気を隠すことなく、がむしゃらに力をぶつけ崩れ落ちる。
「目が覚めて、帰れたら……そうね。墓参りを終えた後、化粧箱をぶっ壊すわ」
「真似しないでよ。気が合うみたいで嫌じゃない」
目を覚ました時には、今度こそ、もう一度、人生という時計をしっかり動かそうと誓いながら────
爆炎に包まれ、美汐とエリザベータは気を失っていくのであった………
- そういえば、コッチの作品群の中で(同作品内)相性悪い女性の登場人物とかいたかしら -- 名無しさん (2019-05-15 23:36:30)
最終更新:2021年12月01日 23:52