ブラックゴースト・クリミナル
「ならば、僕はもはや君の先にいる。 認めたのさ……
決して向き合いたくはなかった自分の過去を」
向かい合うのは、彼が取り戻したという過去にこそ他あるまい。鬼気迫る言霊を紡ぎ上げていく。
俺の知らない、傷だらけの汚れた輝きを双眸に底光りさせて。
叫び上げる────陰我の怪物を踏み敷き従えた咆哮を。
Status
Power:6(攻撃判定が連続して成功した場合、+3)
Hardness:6
Speed:6
Generate:7
Consumption:1
System:8
「……こんな僕にもね、“天才”と呼ばれて自惚れていた頃があったんだ」
幾体もの緋文字礼が、同時に切り刻み、空間自体を蹂躙する面掃射で徹底的に貫き、抉り、砕く。
右半身に力強く輝く、白銀の甲冑を思わせる装甲と……そして左半身に宿る、凍れる炎のように歪んだ形をした漆黒の鋼。
その白は、無二の戦友としての信頼。その黒は、最大の強敵としての脅威。
露となった全貌、それはまるで俺自身の中で二つに裂かれた彼への思いが、こうして眼前で結晶を果たしたかのようだった……
遂に過去という陰我を、自らの意思で解き放った緋文字礼の影装。
脚部全体に白色の装甲が追加されたほか、
最大の変更点として、
左肩部に他の部位とは明らかに形状・
カラーを異にした漆黒の甲冑を装着していることが挙げられる。
その能力は、
刻鋼人機が武装展開のために使用する
素粒子創造機能をより発展させたもの。
漆黒の甲冑内部で、素粒子を生成した後、周辺大気中に散布。
それを使用者の
思いつく限りのイメージに従って、
自在に結合、凝縮させ、質量をもった幻像を創造することを可能としている。
まさに千変万化。攻撃の多様性という点から言えば、間違いなく作中の能力においてもトップクラスに位置する。
これ以上に打てる手数の多い
殲機は
時計機構の歴史においてもそうは見当たらないほど、とされている。
「よくやるぜ……素直にそう思う。変幻自在と言えば聞こえはいいが、無形ってのは厄介だよなァ。応用力が高すぎる」
「闘争においては特化型の方が断然有利だ。用途の決まった獲物の方が、戦場だとより役に立つ」
「しかもだ。思い描いただけでちょいと形にできるほど物質構造ってのは甘くないよなァ。材質から製造過程まで、凄まじい見識と精度が要求されちまう。
実戦でも通用する対刻鋼人機用の兵器となれば、そいつはもう職人技レベルのが必要だ」
「余計な万能を補うために、よく知っている自分の身体を選んだのは間違いなく正解だ。俺でもそうする、それしかねぇ」
しかし、ジュン√でこれと対峙した
イヴァンが看破したように、
あらゆる選択肢を創造可能であるといっても
それは使用者の思考可能な範囲内での話であって、場合によっては敗北の道筋まで増やしかねないという危険性が常に付きまとう。
さらに、
刻一刻と状況を変化させる実戦で、刻鋼人機同士の激突に耐えうる設計・強度を有した各種の武装を脳内で高速に想像、思考しその都度作成する事の困難さなどの弱点もある。
そのため、
礼は基本的に自身の幻像を多数生成、使い慣れており理解も深い自身の武装を増加させ、
斬撃の
一点集束、相手の死角への幻像による奇襲、360度全方位からの
十字砲火等々―――
上記の問題をクリアしつつ、単純火力量の増大および変則的な戦闘機動を実現している。
しかし、それを実行し続ける行為さえ
脳が融け落ちそうな程の膨大な情報量が錯綜するのであり、僅かでも礼の
想像が乱れれば、
瞬時に力を失ってしまう。
加えてこの影装最大の欠点が、礼に苛酷な綱渡り染みた戦闘を要求する。
即ち使用者自身が「穴の空いた水瓶」と評するほどの、左肩部の素粒子発生器からのエネルギー垂れ流しによる燃費効率の劣悪さである。
作中登場する殲機の中でも随一の悪食であり、意識的な運用を心掛けねばすぐさま使用者の動力を枯渇させかねない。
影装の中でもとりわけ使用者の才覚に依存する傾向が顕著であり……生かすも殺すも、全ては緋文字礼自身にかかっていると言える。
……礼は、物語開始時点ですでにこの影装を習得しており、上述の欠点も彼自身が過去の真実に触れ、受け止めることによって改善されるのだが。
しかし実際には、礼本人が想像を絶するほど深い領域でかつての自分を毛嫌いしているため、この影装の行使は極めて困難なものとなっている。
我が身が刻むは傲慢の罪、我が手が宿すは暴虐の咎
この力の背景にあるのは、
「自分は友や仲間を騙している」という罪悪感、
「記憶を失う前の自分を恥じる」という後悔、そして同時に、
「最初から裏切り者である今の自分こそ、ずっとなりたかった自分である」という礼の内面の真実である。
+
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... |
マレーネ√で明かされた かつての礼の記憶――それは。
ああ、そうだ。そうだった、どれもこれもつまらなかった。
何をしても簡単に完璧な結果を出せて、人生は退屈の連続だった。
有象無象の大衆が、どうしてそれを出来ないのか不思議で不思議で侮蔑していた。
家柄も、キャリアも、女も、金も、名誉も、まとめてその全て。
手に入らないものなど何もなく、困難など一度も味わいすらもせず、稚児のような万能感に浸って時を過ごしていた。
他者という存在を、ただ他人であるというだけで見下しながら暗い愉悦に浸っていた。
そんな自己の才能に対する 傲慢さはしかし、 科学と共に往く人類の未来を知った事で 全ての鍍金が剥がされる。
お山の大将。井の中の蛙。結局自分は、幾らでも機械に取って代わられる、ただの人間でしかなかった。
絶望し、嘆き、それでもと、浅ましく求めたのは第二の生。
物語の英雄達のように……神々しく戦いたいと。
劇的な人生を、白紙に戻ってでも手に入れたいと──底抜けの愚者は子供のように泣き叫んだ。
だが……その「劇的な人生」は彼の周りの人間、そして彼自身にとっては、果てしない地獄への道であった。
“記憶を失ったとしても、己ならば如何なる壁とて超えられる”……
結局捨てきれなかった無責任極まりない信頼は、独り生き残り続ける男の深層心理に深く傷を残していく。
無自覚の裏切者として積み上げてきた血の蛮行。
恥ずべき生還の度に積み上げてきた汚辱の履歴。
何よりそんな血塗れの経験が、どうしようもない自分の我儘によって始まったという事実。
“生まれ変わった”彼はいつしか、そんな己の醜さを心の奥底に封じ込めたが、
“自分は仲間を騙し続けている”という思いは、どんなに記憶が書き換わっても、決して消える事はない。
数々の 幻を生み出すという能力は、 傲慢の極みにあった己の万能感を映し出したものであり、同時に本性を偽り生きてきた自分の生涯そのもの。
底無しの闇色に染まる、悪魔のように禍々しい鋼の左腕。
それこそ、純真で誠実な仲間という貌をしながら親友やその大切な人を無知のまま地獄へ陥れた、醜悪な真実の具現だったのだ。
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詠唱
展開!
「認証───汝が陰我を問う」
我が身が刻むは傲慢の罪。我が手が宿すは暴虐の咎。
其は我が原罪にして我が本性。
故に我、傲慢を愧じ、暴虐を悔いれど、其を棄てるに能わず
傲慢と暴虐の忌まわしき力よ、
我再び汝と相対せん───疾く来たりて我が意に従え
「受諾───素粒子生成」
「影装展開開始」
───心装
影装・黒影罪牙
- クリスタルを創ってイヴァンの光を乱反射させたときはすげえっておもった -- 名無しさん (2017-04-28 01:36:34)
- 何気に影装に対して受け容れられない程の拒絶感抱いてるとどうなるかってのをマレーネ√で示してたな、コレ。 -- 名無しさん (2017-04-29 19:02:10)
- これ、戦真館の創法に似てる気がする。元ネタ? -- 名無しさん (2017-05-05 09:41:31)
- エリザベータの影装と組むと相性がよさそう。礼さんの影装が創った弾丸をエリザの影装で射出。礼さん側は作るものが複雑じゃなくてもいいから負担が減るし、エリザ側の弱点の弾切れも起こらない。精神力が続く限り強力なレールガンの乱れ打ちができる -- 名無しさん (2017-06-03 11:39:20)
- 半分錬金術みたいだな -- 名無しさん (2017-07-25 22:10:37)
- ロリコン御曹司「呼んだ?」 -- 名無しさん (2017-10-15 21:00:11)
- ↑てめえじゃねえ座ってろ -- 名無しさん (2019-07-20 09:09:43)
- 完全覚醒しないルートでも自分や仲間の幻像作成してデコイに使っているけれど、外見に綻びなく造るにもかなり消耗強いられそうだな -- 名無しさん (2020-05-18 23:08:31)
- 自分今新西暦サーガの「能力設定」をクロスさせた作品書いてるけど、その作品に出てくる能力と比較してわかるこの力の使いに草っぷりよ。似通ってる能力系列がジャンルが固定される代わりにイメージすれば実用レベルのを能力が自動で作ってくれるから、クロスの際に比較してこの能力の使いにくさとうまく使っている礼のやばさがわかる。 -- 名無しさん (2020-07-21 19:50:05)
- 霊的蹴たぐり… -- 名無しさん (2022-08-01 09:09:05)
- 能力名も能力の内容も一番好きかも知れん。 -- 名無しさん (2023-07-19 16:45:39)
最終更新:2023年07月19日 16:45