時計機構

ホロロギウム



「天に浮かぶ運命(とき)の星座、時計機構(ホロロギウム)に揺ぎ無し──!」


『Zero Infinity -Devil of Maxwell-』の用語。
実体を掴めないほど巨大な、全世界の科学技術を管理する謎の組織。
その歴史は古く、正確な年代は不明だが、世界が自然への畏敬よりも"科学"という神を頂くようになった時代には既に存在していたことが確認されている。
新法則の発見から実用化、普及までを時計の如く正確なスケジュールで管理し、また維持し続けていることからその名で呼ばれている

その実体はもはや一つの仕組み(システム)であり、大国や小国問わず、果ては民間の街工場にまでその意思は及んでいる。
本拠地と呼ばれるものは存在せず、科学信仰に根付いた研究機関の超巨大複合体と、それを管理運用する(ルール)によって成り立っている、姿無き歯車。
その情報統制力ゆえに、終生自らが時計機構に属していたと知らぬまま生涯を終える人間も多く、表側に技術が露呈することを何よりも忌避している。

人間が科学への夢や願いを持つ限り存在し続ける隣人であり、
同時に科学という社会構成基盤をその手に握っている支配者という、異なる二つの側面を持つ。
実質、その特性から時計機構を消滅させるのは不可能に近い。有用な仕組み(システム)は生き残り続ける。
仮にこの時計機構が消滅したとしても、再び似たような仕組み(システム)の組織が自然と構築され、管理運営されていくことだろう。
人類の歴史が、科学と共に在る限り。

時計機構(ホロロギウム)とは私であり、私が時計機構(ホロロギウム)なのだ。その誕生の時点から、何一つ変わってはいないよ』

『機構は我が願いの産物。定められていく科学文明の寿命を延ばし、
永遠に尽きぬ究明を可能とするため……私は今も挑んでいる』

しかしその実体は、本編において真の創始者オルフィレウスが自ら凌駕達に語ったように、
彼という一人の超人が実質的にその全てを掌握していた文字通りの無機質な歯車であった。

その始まりから終焉に至るまで、オルフィレウスという人物一人のために回り続けた全人類規模の巨大なる運命推進機関。
彼が掲げた「人類の機械的進化と認識の拡大、真理への到達」という命題を現実化するためのシステム(歯車)
それこそが、時計機構という存在だったのである。


「科学による進歩、前進への意思、輝ける未来へ繋がる技術の創造……
そのために真理を待ち望んでいた。そうすると決めたからこそ、己を信じ邁進してきた!」


「礼賛せよ。時計の刻む未来こそ、煌めく光輝に満ちているッ!」



+ 時計機構、その発展の影に潜むものと……機械の神の決意
こんなことがお前の求めたものなのか? らしくないじゃないか、分かるんだよ。
お前自身の手で、やるべきだった。誰かの真理なんて、頼るべきでも作り出すべきでもなかった。


それこそが、お前の選んだ真理(みち)だろう。

この戦いが仕組まれた闘争で、徹頭徹尾オルフィレウスの掌の上で踊らされていた。
そんな状況をしておきながら、『人の可能性を見せてみろ』? 馬鹿馬鹿しいにも程があるだろう。
一人だからどこまでも突き進めた怪物が、一人の限界を悟っている。その時点で、これはとっくに矛盾じゃないか。

確かに、その意見については全面的に同意しよう。全ては私の不徳が発端。
己一人では永久機関にしか到達できない、矮小なこの身が罪なのだ。
しかしそれで? 効率的な手段に切り替えただけのこと、いったいそれの何がおかしい?

よもや、科学如き(・・・・)に全てを捧げる歪んだ魔人と嗤うかね?

――いいや、まったく。

むしろ、感じる想いはその逆だ

「今なら分かるんだよ、お前が大衆から求められている存在だという事が。その選択もまた、悔しいけれど間違ってはいないという事が……」

オルフィレウスは唯一無二だからこそ、時計機構(ホロロギウム)を創設できた。しかし唯一無二であり続ければ、その真の願いは叶わない。
今まではそれを否定できた。超越者の理屈に巻き込むな、お前は単なる偏屈者だと……雄々しく言い放つことができたのに。

「そう、常に恩恵を受けるのは探求者自身ではない。有象無象の大衆こそが、科学に多大な信仰を捧げている。異常なほどにね」

利得にだけ(・・)あやかりたいと願う者こそが世を占める大勢であり、“科学”は彼らの欲望を満たす器となっているのだと、気づいてしまったから

……世界は昔、個人の素質で支えられていた。
強き者が弱きものを従えて群れを成し、争いと統合を繰り返して、やがては国を形作っていたが。
それは、科学という新たな宗教に覆された。

銃さえあれば、赤ん坊でも大人を殺せるように。
耕転機(トラクター)さえ動かせれば、子供であろうと大人にさえ無理な重労働の畑仕事ができるように。
そんな世界で最も大きく良い目を見るのは、夢を抱き開拓に勤しんでいた科学者や王ではなく、何もしていない『弱者』たちだ
―――この先も、繁栄の裏にある犠牲を容認し続け、安全圏から大声で甘い蜜だけを求めるだろう多数の『弱者』達が

「断言しよう。純粋な弱者など、社会が高度になるほど発生率が減っていく」

「努力し、足掻きながら報われぬ者など一握の例を除いてまずいない。
弱者とは大半が利得を貪る白蟻だ。餌と温床を求め、『私は弱い』と恥知らずにも大言している」

真に不幸な人間は逆だ、自分は弱いと叫べすらできない。境遇故、救いを求めながらただ朽ちていくんだ。
そして……これから先、科学が発展すればするほど、そんな偽物(じゃくしゃ)は多くなっていくのだろうか?

「大衆は文句を言わない、繁栄の裏にある犠牲を容認し続ける。切り捨てられる寸前になって、お前は間違っていると賢ぶる」

「ならば甘えているのが悪かろう?牙を捨て、弱者という防御を選択したのは、彼ら自身の責任だ」

「だから反旗すらも翻さない」

「何処かで大きな犠牲が出た? ああそうか(・・・・・)と、どこまでいこうが他人事。これまでと変わらず、己が身を餌を待つだけの駄犬と処すことだろうよ。自分達の番まで犠牲が回ってくるその時まで」


「弱者が弱者であることを盾にしたまま、己を成長させようと望むことなく、“強者の没落”のみを容認して信仰する社会(きりつ)の残骸……端的に言ってそんな未来は地獄だとも。醜い衆愚が跋扈するだけの、浅ましい、見るに耐えない社会形態だ。無論、それも上手く掌握させてもらうが……」


――想像するだけで暗澹たる気分へと貶められてしまう
救いのない現実に、そして……そこに当て嵌まらない、大衆という括りから余りにもかけ離れてしまっている、自分自身に。


「理解できるとも、その葛藤。私も幾度か思ったものだ……何故、私はこう(・・)なのかと」

「我々は紛れもなく、根底の所で近しい存在だ。共に生来の超越者。
意味も理由もなく、遺伝子の理屈すら飛び越えて正解を目指せる形に生まれている」

「いや、あるいは欠陥品かな? 諦めや怠惰を持たないだけの狂人かもしれん。欠点(マイナス)が欠けている」

不屈の心? 馬鹿を言え、そんな想いこそが異常なんだ。
すぐに自己完結して立ち向かえるような存在を、人類は同類とは呼びはしない。


「そう、右と左は同時に向けない。人の顔は一つしかない。
強者として生きると選択したその瞬間から、弱者に戻ることは可能であっても、どちらでもあることだけは絶対的に不可能だ」

右を選べば左に行けず、左を選べば右の可能性を切り捨てている。
二つの行き先に同時に存在するなどということは、誰であろうと出来よう筈がない。

だとしたらこの男、オルフィレウスの選択とは―――

「私は遠い昔に選んだよ、人類科学を先導する存在になることを」

人類科学の旗頭(フラッグシップ)になるという決意。即ち、
強者で在り続けるという宣誓を、不断の努力と共に形に変えてきた。変え続けてきた……果てしなく。

「間違ったのなら改めて、愚かだったなら賢くなろう」

「成すべきことは全て成す。その道程で犠牲を出すこともあるだろうさ。謝罪はするとも、しかし悔いなど残さない。残してならない」

今回のように犠牲はあったろう。だがそれでも、こいつは止まらなかったのだ。
それだけのことを続けてきた想いの強さだけは、恐らく誰も否定はできまい。






  • 発展している国からしたらまさに最高の組織 -- 名無しさん (2017-03-22 15:41:43)
  • ボーラスかヨーグモスかよ… -- 名無しさん (2017-06-07 08:44:22)
  • ヴァルゼライド閣下の語った、組織の腐敗理由をかなり解決してるな -- 名無しさん (2017-06-17 23:46:15)
  • オルフィレウスの趣味のためだから腐敗するはずがないんだよなぁー -- 名無しさん (2018-02-03 14:25:30)
  • 目的は違うけど某作品の統和機構みたいな感じか -- 名無しさん (2018-12-22 15:43:32)
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最終更新:2022年01月08日 23:16