シズルにはかつて
愛する人がいた。
思いやりが強く、心優しく、純朴な人だった。
しかし、悲しいかな英雄に魅せられてしまう。
自分も軍人となって改革派となり、微力ながら彼の手助けがしたい。
そして、
軍人として立派になり、帝国の屋台骨のひとつとなったら、結婚してくださいと、そんな淡く儚い約束を交わして。
完全に死亡フラグですどうもありがとうございました
煌めく決意と理想を胸に、戦場へ旅立つ彼を留めることなど、彼女はできなかった。
そして当然のように、彼は戦死してしまう。
そんな呆気ない愛の終焉。通常ならばそれで終わり。
しかしそこは
愛重き一族にして類稀なる資質をもつアマツ。
その愛はこの世を去った想い人を諦めるほど浅くない。
幸か不幸か、彼女は科学技術の研究の才能を持ち、
魔星の研究を行っていた叡智宝瓶に所属して、死者蘇生をその手で作り出そうとする。
「だって人間、大切なのは想いであり、心でしょう?」
そう――
大切なのは、想いであり、心。それを構成する人格だから。
身体が死んで、腐って潰れて葬られて、それでも記憶と心を再現できればそれでいい。
外側の器がどんなものだろうと構わない。愛とはすなわち遺伝子を求めることではないのだから。
そんな
狂気の実験の末、彼の人格の転写に耐えられるとわかった
実験体が、
アシュレイ・ホライゾンだった。
だからこそ、彼は同じように彼を欲する
審判者に敵意を向ける。
光などに渡さない。彼を必ず取り戻す。
だからこそ逃さない、逃さない、灰燼の身体は、愛情のもの。
堕ちた才媛はもはやどんな犠牲をも厭わない。
そうともすべては愛のために──そんな狂気を体現する言葉だった。
清純派から一挙にメンヘラへの堕天であり、この真実にはショックを受けた御仁も多くいたのではないだろうか。