ニナ・オルロック

“PRINCIPAL”


Vermilion -Bind of blood-の登場人物。ヒロインの一人。


霧に深く包まれた街・フォギィボトムを中心とする、北米西部の縛血者コミュニティ “鎖輪” を統率する年若い支配者。
外見、性格とも気位の高い素養を覗かせる少女だが、しかし縛血者社会の中ではまだまだ若輩者に過ぎないとも言える。
本来の彼女は縛血者になって日の浅い、先代から継いだ血統によりトップに立ってしまった未熟な少女でしかない。
それでも親たる先代からの大きな置き土産を背負い、今日もまた柔い心を威厳のベールで押し隠している。
トシローは直属の部下であるため、有事の際はニナの命令に従って行動することになる。

人間社会との共棲関係を維持するため、公子である彼女は時に表の世界の夜会に姿を見せ、そうした場では高層ホテルに住まう若き資産家といった役を演じている。

表と裏、様々な思惑が入り混じる夜の世界。
ホテル・カルパチアの屋上の薔薇園で一人過ごす時は、ニナという少女にとって数少ない心の休まる時間である。


賜力:死王血鎖(ノスフェラトゥ)
毛髪に柔軟性を持つ金属質の硬度を与え、伸縮自在に操る。 能力発動中は髪の色が血の赤になる。毛髪の長さに制限はないが、伸ばせば伸ばすほど血の力を消耗する。
槍状に束ねて突く、散弾的に広範囲に飛ばす、鞭状に巻きつけて締める、平面を形成し盾を作る、結界を張る、などの応用が利く。


「繰り返します。これは公子としての命令よ」





「ならば私もまた誓うわ。あなたに相応しき、誇り高き主君であることを」

「トシロー・カシマという剣に恥じぬ、この玉座に相応しき存在と成らんことを」

――私を失望させないで………信じています」




「……判ったわ。主従、君臣。私たちが、そういう関係になったという事は」

─────では……それ以外(・・・・)は……?」





過去 ― Deserted Child ―


+...

……何を信じて、待っていればいいの……?


  • 捨てられた子・ニナ
夜会に足を踏み入れる前、ニナがまだ縛血者ではなかった頃。
彼女は内戦の爪痕深い、貧困と無法に荒れる街で必死に生を繋いでいた。
愛する父は戦争で死に、共に暮らしていた母親は貧困の苦しみを酒で紛らわし、幾人もの男達の元を渡り歩いて……そしてその度に家庭は崩壊した。
母の夫となった男は、みな成長するニナの美しさに欲望の目を向けるようになり、
新たな父親は娘を組み敷き、そこに夜叉の如く怒り狂った母親が飛び込み、娘は泣き叫ぶ……そんな光景が繰り返された。
母はやがて我が身の不遇、その原因をニナに求め――一方的な暴力を振るい始める。

そんな中でも、ニナは実の父が残した言葉を守り、理不尽な現実から崩れそうな心を守ろうとする。
――大事なのは、待つこと。不安に耐え、無為に耐え、恐怖に、飢えに孤独に耐え抜くことだ。
――家族、肉親……血と血で結ばれた絆。どんな下劣な畜生であれ、親は子を護る。子は親を慈しむ。
  それこそが人間がこの世で最後まで信じられる、裏切らない(・・・・・)繋がりだ。

そうして、ニナは安アパートの一室で、自分に満足に言葉もかけなくなった母が置く食糧を頼りに、その日(・・・)が訪れるのを待っていた。
それは、ニナの誕生日。脳裏に浮かぶのは、父も母も一緒にいて、自分を祝ってくれた過去の優しい記憶。
他にはなにも要らない。ただ、今日だけは、母が傍にいてくれたなら……。

だが、彼女の心を繋ぎとめていた血の絆への信頼は、下卑た嗤いを貼り付けた訪問者達の告げた言葉によって砕け散った。
“母親はお前を売ったんだよ。16になれば立派な商品(おんな)だから、誕生日が来たらそうすると決めてたそうだ”
“子供は宝って言うだろう? お前の母親は、自分の持つ最後の財産(・・)を処分したって事さ”

天地が裏返るような衝撃。絶叫するニナは、人買いの男達に気を失わされる。
しかし、ニナの全身はその痛みではなく、自分の唯一の拠り所を失った絶望感で満たされた。

記憶の中の父は言った。
――この子は女になる必要なんかないさ。いつまでも可愛い娘のままでいればいい。
記憶の中の母は言った。
――女の子は、放っておいても女になってしまう(・・・)ものよ。

……ニナはこの16歳となったこの日、真実自分がヒト以下のモノ(・・)に成り下がったという事を理解するのだった。



  • “闇に拾われた少女”
やがて、彼女は別の所から売られた少年と共に、“将軍”と呼ばれた縛血者に買われることとなる。
“将軍”は、既に買っていた少年の姉の代わりを、苦痛と嘆きの声を祖国の言語で聞くための玩具を補充するため自分達を買ったと語る。
これから自分達を待ち受ける運命を予感させる、濃い血の匂いが漂う地下室。
そして、縛血者となった眼前の少女の肉体が無反応のまま、再生の度解体されるという惨たらしい光景。

“なんだ……ただの絶望か”
だが、ニナは何ら恐怖などの感情を示すことなく、その目は虚ろであった。
嘆くことは、またその者が失うものを持ち、それを奪われることを恐れるゆえに。
ならば、銀髪の少女の今の様子が示すことはすなわち、すでに彼女の心が、魂が死んでいたからにほかならなかった。

そうして“将軍”が洗礼を施そうとした時、北米西部鎖輪の御三卿と呼ばれる貴達
そして、圧倒的な存在感を放つ初代公子ベラ・オルロックが地下室に現れる。
外来の敵対勢力を率いていた“将軍”は、その行為を見たベラの“醜い”という「判決」を以て心臓を抉り取られた。


そんな中、ニナの視線は、共にいた少年が姉と共に抱き合い死を選んだ、その光景に強く惹き付けられていた。

彼らは「幸せ」だった――互いに裏切らず、血の絆を持ったまま、ヒトとして死に行くことが出来た――“裏切られた”自分とは違って。

だが、その光景に関心を抱いていたのは彼女一人ではなかった。
闇の巨人、ベラ・オルロックは重なった姉弟の屍を前に呟く――“……美しい”と。


その言葉に吸い寄せられるように、ニナは微かな希望を抱いて、ベラの手に縋り付いた。
“この男ならば、本当の、血の絆を知っているのではないか。
 彼の(おお)きな背中に付いていけば、自分はもう一度それを取り戻せるのではないか”

三名の藍血貴が、愚行としか見えないこの行為に静まりかえる中、
ベラはニナに向けて、自分達が如何なる存在なのかを語り聞かせる。
そして、ニナは答える。

「構いません……人間でなくなろうとも――」

「私は、貴方が美しいと言った世界に生きたい……血と血で結ばれた絆が、決して裏切られない世界に」

その返答に、闇の巨人が与えた審判は――“美しい”……その一言であった。

――かくして親に捨てられた過去を胸の奥に封じ……一人の縛血者、ニナ・オルロックが霧の街に生まれた。




一人の縛血者から“公子”へ ― MASTER & KNIGHT ―


+...

「己を律する事も、己の足で立つ事も満足に出来ないというのなら……
 貴方を誇りある血族と、私は決して認めません」

「トシロー・カシマは私の所有する(・・・・)剣……貴方のために振るわれるなど、断じて許さない」


縛血者となったばかりのニナは、公子の子とは言え、
血統と重ねた歳月を何より重んじる鎖輪社会においては、実際疎まれた存在でしかなかった。

早々と家令ゴドフリは、カサノヴァのオーナー・アイザックに彼女の養育係を命じたが、
荒くれ者共と同じ扱いだった彼にニナを預けるということは、当時の彼女の立ち位置を示していたのかもしれない。

それでも政事の難しさ、複雑さも知らず、また立ち入る必要もなかったであろう当時のニナは、
弱弱しさの中に勝気な表情を見せる“「世間知らずの」お嬢”、そんな子犬(マスコット)としてカサノヴァの客達と交流することが出来ていた。

だが、そんな無邪気な少女としての日々は初代公子ベラの突然の死によって終わりを告げる。
彼によって後継者に指名されたのは、鎖輪の権力中枢にいた御三卿ではなく、
まだ幼年の時期を脱け出ていない、ベラの子のニナであった。

フォギィボトム、ホテル・カルパチア。
突如権謀術数渦巻く、この闇の摩天楼で鎖輪の安定のため、尽力する使命を負わされたニナ。
その激務に必死に耐え忍び、彼女は完璧な統治者である亡き父の信頼に応えたいと願って、ひたすら上だけ(・・・)を見つめて努力を重ねた。
しかし、それでも御三卿をはじめとした権力層の種々の負の視線や言葉、
さらには幼童の時には気さくに付き合えた者達とも、立場ゆえに隔たりを生んでいたことなどが重なり、
ニナの心は周囲への不信感によって、過去を思い出し次第に傷つき始めていた。



そんな中出逢ったのが、流れ者の縛血者、トシロー・カシマという陰のある男だった。
他者への不信と立場を守ることへの焦りに苛まれるニナは、サムライ――忠義に生きる戦士――の心得を知り、優れた戦士であるとはいえ、初対面のトシローに対し、自分に忠誠を誓えと告げる。
公子の求めに対し、トシローは理由を明かすことなく拒絶し、
それを自分の未熟さゆえと恥じつつも武力を欲した少女は、彼が別に提案した“心を語らぬただの剣”として使うことを決めた。
……“共犯者”という誓いの言葉は冷たく響いたが、しかし彼女の心はまだ信じられる“誰か”を求め続けていたのである。

ニナはトシローを自分直属の夜警として任じると共に、
彼の卓越した“武”を自分も身につけたいとして、護身の鍛錬をつけるように命じた。
それは“鬼教授”と呼ばれるほど、縛血者の肉体に合わせた厳しい教え方であったが、
その日々を通じ、ニナはトシローという男の人柄を少しずつ理解していき、心を近づけていったようだ。

しかし、公子としてのニナの心労は一層増すばかりであり、
不安定となった少女の精神は、剣としての関係を誓わせた男に“それ以上”を求めて……二人は一夜の契りを交わすこととなった。
枕元で少女が弱弱しく呟いた本音、それに対しトシローは、過去の後悔ゆえに踏み込む事を躊躇い、
ニナ自身も、それ以降は表面上は気の迷いとして触れることを許さなかった。
だが、その胸の内には、集団における“異端者”としての共感、
やがて生まれた、女性としての異性に向ける情愛と、
自分に忠を捧げてくれる、信じられる理想の従者と成って欲しいという願いが入り混じることとなり……
同時に、トシローを、縋るべき者を喪うことへの恐怖を強め、上記の発言のように二人の関係に固執するようにもなった。

ただ何よりも、ニナ・オルロックは孤独に苦しんだ過去を忌み、
それを救いうる術は、父ベラが残した鎖輪をまとめ上げうる、完全な指導者となることしかないと信じ続けている。
何よりも、父に報いたかった。そして、自分という子が血の絆に値するものだと認めて欲しくて。

もう己には与えられない「親の温もり」を求めて、ニナ・オルロックは歩みを止める訳にはいかない。
後ろを振り向くことは許されない。上を、上を、少女は目指し続ける。

――――だが、それでも現実は彼女を押し潰そうとする。
三本指(トライフィンガー)の脅威。暴君の襲来。旧き藍血貴の策謀。
カーマイン杭の怪物。そして、死んだはずの父の影
現状に抗い続けるための理由が、同時に想いを摩耗させ砕いてしまう可能性に少女はまだ気づかない。

その時、ニナ・オルロックという少女は、等身大の自分を見つめて―――
何ができるか、できぬのかを知り……傲慢(プライド)に染まりきらずにいられるか。
誰かから決められただけでない “未来図” を描けるのか。
譲れない小さな矜持を抱いて、他者と共に、清濁混じり合った社会を歩めるか。

“理想の吸血鬼”を許さぬ、無慈悲で理不尽な現実が破滅の口を開く中、試練の瞬間は刻一刻とニナに迫っている。






余談
+第二回人気投票、第三位入賞時の昏式氏のコメント
「おっぱい! オッパイ! OPPAI!
 ……え? 以上じゃ駄目ですか、そうですか。
 怪奇クモ幼女にいびられても、恐怖コウモリビッチに弄ばれても、妖怪朴念仁に冷たくされても頑張りました。
 ニナ様の胸には、僕達の夢と希望がいっぱい詰まってます。
 貴方の股……心にノスフェラトゥ―!!




  • トシローさんとヒロインとの関係じゃ、お嬢とのが一番好み。エンディングも爽やかでかなり好きだわ -- 名無しさん (2016-11-23 16:52:08)
  • エロが一番充実してたヒロイン。強き誘い受けの隠れMなのがそそる -- 名無しさん (2016-11-23 20:34:12)
  • オルロックは映画「ノスフェラトゥ」に登場する吸血鬼の名前。原作であるドラキュラの名前を使用する権利が取れなかったためのネーミングだが、オルロック卿の正体とその能力名を考えると興味深い -- 名無しさん (2016-11-25 11:29:19)
  • ケイトリン如きにやられちゃうあたり…興奮しました -- 名無しさん (2016-12-03 00:33:35)
  • やはり糸使いヒロインはかませ... -- 名無しさん (2016-12-03 00:34:23)
  • 精神的にもトシローを一番成長させなかったヒロインな気がする -- 名無しさん (2017-01-20 16:04:55)
  • そういえばニナの中の人って某探偵団の子だよなあ。 -- 名無しさん (2017-06-23 11:13:15)
  • 他社エロゲだと続・殺戮のジャンゴの黒のフランコのイメージ。ちなみにライバルのミスノーバディはシェリル役の人 -- 名無しさん (2017-06-26 19:34:24)
  • この人はこの人で良い台詞はそこそこあるんだけど、うーん…… -- 名無しさん (2017-11-16 19:16:11)
  • ↑3 非常に気にならんだが、まさかコナンじゃないよなぁ…。 -- 名無しさん (2017-11-16 20:57:03)
  • ↑ならん じゃなくて なるん 。 -- 名無しさん (2017-11-16 20:57:16)
  • 歩美ちゃんの人だっけ -- 名無しさん (2018-02-26 16:34:25)
  • 可愛すぎるんだが、この気持ちどうすればいいの? -- 名無しさん (2019-01-24 21:28:42)
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