私は――その運命を受託する!

発言者:《伯爵》
対象者:始祖リリス


こう生きて(・・・・・)そう死ぬしかない(・・・・・・・・)という無機物(マテリアル)。成る程な、道理だ母よ。
理想を叶え続けることなど生物には不可能、歯車にしか出来はしない!」

「生命は間違いを犯す。惑う、悩む、悔やむ、逸れる……この男に言わせれば、
自分自身すら判らぬらしい!そんな者には任せられぬな、納得だとも。理が通る───ッ」

「最初から完全で、間違えるべくもなく、己に疑問を持たぬ者が必要だ」


「……くく、くくくく。よって、私は遂に破綻した。
矛盾を見抜かれ、己が深淵を暴かれた。
かつての自動人形ではない。この身は今や、まさに────」


「嗚呼、素晴らしいぞッ! 私は今や、吸血鬼(ヒト)の心を得たようだ!」




アイザックとの会話で生まれた自分の起源への疑問。
そしてトシローとの戦いにおいて暴かれた、
「始祖リリスによって造り上げられた理想の吸血鬼像であり、魂を回収するための自動人形である」という己の真実。

それを聞いて生まれた隙をつかれトシローによって討たれたかのように見えた伯爵。
しかしその刃は届かず、代わりに伯爵に生まれたのは彼がするはずもない嘲笑や愉悦の笑みといった、人間のような感情だった。

伯爵は自分の始祖リリスを生まれ変わらせるための人形という機能を「自分は生命(いのち)を産むことができる唯一の血族である」と、己がリリスの道具であることを覆さぬまま誇りとして存在意義を肯定。


その心持ちを振り返る伯爵は、こう語る……。


「否定とは、試練だ────」

「不夜の幻想に向かい、現実を教授する。
闇の伝説に酔いしれるなと、幽鬼の如く告げるがために、おまえは試練を投げかける」


貴様は間違っている───その理由を語り、徹底的に弾劾する立ち振る舞いは物語において、確かに毛嫌いされる。
しかし同時に、主役の成長にはそうした役割を担う存在が必要となる。
誰もが立ち向かえるものではない、資格は限られた者にしかない。
だが、乗り越えればそれは最大級の糧となり、心身へ変革を生む魔法の言葉と成り得てしまう故に―――

現実を受け止め、こう生きて(・・・・・)そう死ぬ(・・・・)
人間の頃のトシローが出来なかったことをただの道具の伯爵はいとも容易く成し遂げたという明らかな優劣の優。
物語の『そういう配役』として『そう宛がわれ、そういう運命となる』かのように、この瞬間、トシローは唯一の優位点であった人としての生き様すら伯爵の下位に追いやられることになるという、『究極の敗北』を刻み付けられることに……

後の作品にも受け継がれることとなる、記念すべき昏式・高濱作品チーム最初のラスボスによる覚醒である。



+ 真の“吸血鬼”の猛威による究極の敗北
真なる吸血鬼(ヴァンパイア)の言葉が、総身から放たれる略奪の波動が、
トシローのなけなしの意地と、肉体を徹底的に破壊し、生きる意義を得た“超越者”の糧として貪ってゆく。
愛する■■■の無念も晴らせず、友の“生きろ”という遺言さえ成し遂げられず……
恐怖と理想の吸血鬼を前に、全てを上回られ、どこまでも無為に、消えてゆくトシロー。


「さよなら、宿敵よ───そして、ようこそ(・・・・)



「共に、往こう」



敗北を決定づける伯爵の鋭き(かいな)
だが―――その、一撃は、スカーレットに遮られ……届かなかった。


───ああ』

『お怪我は、ございません────か?』


────杜志郎、さま』


身体も思考も震え砕け散る寸前、確かにトシローは感じ取った。
かつてと同じように、守りたいと願っていた女が、自分の目の前で薔薇(いのち)の華を散らす瞬間を。
そして、彼女は告げる。


『私の、還るべき場所は、此処に…………』


───この御方の魂に、私の故郷(ふるさと)は在るのですから』


瞬間、あの日の、沈丁花の香りと共に彼の裡に流れ込んだものは────





  • 主人公みたいな台詞を叫ぶラスボスはこの頃からの伝統だったんだな... -- 名無しさん (2016-11-04 15:15:07)
  • 覚醒のページとか誰か作ってくれないかなあ。ヴェンデッタしかやってないから作れないんだよね。 -- 名無しさん (2016-11-04 16:22:10)
  • つーても、昏式・高濱作品でも覚醒するのは基本主人公側だぞ。ゼロインとか主人公陣営ほぼみんな覚醒するといえばするし。 -- 名無しさん (2016-11-04 19:07:02)
  • 声が某格ゲーのワラキアに似てるような気が -- 名無しさん (2016-11-04 23:34:26)
  • 確か声優はその某格ゲーを作ったエロゲメーカーの代表作のCS版で、某ギリシャの大英雄やってる人だったと思う -- 名無しさん (2016-11-04 23:37:23)
  • ダンディな亡霊乗りの魂の双子だったのか… -- 名無しさん (2018-02-11 15:33:37)
  • 主人公みたいな台詞を言うラスボスが伝統というか、『物語の主人公』に対して『端役』が『端役にも端役の物語があるからな、主人公ムカつくから主人公の勝ちを無価値にするわ』という感じで『逆襲』するのが伝統というべきかね。朱銀幻燈の下りは闇の竪琴の『逆襲』のプロトタイプだろうしトリニティクライマックスも『灰と光の境界線』の『英雄譚(逆襲劇)』で光の奴隷ぶちのめしてるし、結構カタルシスはデカいしパターン変えて色々派生させているから良い意味で受け継がれて良かったと思う。 -- 名無しさん (2018-12-23 18:23:34)
  • 今さらだが、伯爵→母孝行。アンヌ&アリヤ→母好き。シェリル&ニナ→母嫌い。 -- 名無しさん (2020-05-07 14:58:34)
  • ↑あり得ない事だが、トシロー×ヒロインの母だったらどうなってたんだろ。 -- 名無しさん (2020-05-07 14:59:48)
  • ↑少なくともニナとシェリルはキレる。 -- 名無しさん (2020-05-07 15:00:25)
  • 声優さんの演技のおかげで、マジでここから同一人物の別人になるからなあ。トシローが覚醒した後の最終決戦時のハイテンションと覚醒前の淡々としてた頃と本当同じ奴かと疑うぐらい違いがある -- 名無しさん (2020-05-28 21:09:47)
  • ↑4リリス「完璧な吸血鬼創った筈なのに悍ましい化け物になってる……」 -- 名無しさん (2023-12-12 06:55:47)
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最終更新:2023年12月12日 06:55