鋼蜘戦車

アレクニド・チャリオット


「出て来いや俺の怪物(ちから)ッッ! 穢らわしい無意識(イド)の底無し沼からよォ――ッ!!」

総身から立ち上る暗黒の素粒子が全身を一瞬で塗り替え、書き換え、再構築して再誕させる。
体躯そのものが巨大化し、やがて二周り以上巨大な異形(・・)へとその姿を変え……
反逆者達の前に現れた存在(もの)は、見る者を屈服させるような圧力を纏った、四腕四脚を備えし鋼鉄の魔獣(キメラ)


Status

Power:9
Hardness:6
Speed:5(戦場に遮蔽物が多い場合、+2
Generate:8
Consumption:2闘争を愛し続ける限り、+1
System:2


イヴァン・ストリゴイ影装もっとも大規模な形態変化を行う影装で、
輝装状態よりも格段に火力を増した左腕の荷電粒子砲に加え、右腕にはさらに三門の拡散型荷電粒子砲が増設されている。
単純な火力の上でも輝装状態より脅威なことに加え、蜘蛛を模した多脚型の脚が備わったことにより輝装状態の難点であった機動力までも獲得しており、入り組んだ市街地での戦闘では恐るべき猛威を発揮してくる。
大型化によって向上したパワーも相当なものであり、脚や腕による攻撃でさえ、軽々と刻鋼人機を跳ね飛ばすほど。
人体では稼働が不可能な角度から矢継ぎ早に叩き込まれる荷電粒子砲の猛攻は、ネイムレスでさえ一方的に蹂躙したほどである。
刻鋼の強度も戦車(チャリオット)の名を冠するだけあって、相当な強度を誇り生半可な攻撃は通用しない。


「文明、兵器の進歩は英雄の誕生を廃していく」という現実。
「戦場英雄を讃えているが、より効率を追い求めていくと人の姿からかけ離れていく(醜くなっていく)」
という戦闘倫理と個人的願望の軋轢によって発現したのがこの影装。
戦場での輝かしい華美を信奉しているイヴァンが、何故このような醜悪極まりない姿形の影装を発現するに至ったかは、偏にその戦争における合理性ゆえ。


「死と殺戮に狂するために……なんていう、ひねた理由は抱いてなかった。
俺が崇拝するのは常に、生と死の狭間で輝く英雄(ほんもの)だけ。
お前さんと、その親友みたいに。戦場は掛け値なしに命の煌めきを(ふる)い分ける。
だからこそ、ああ、そこで生き延びるにはどうすりゃいい(・・・・・・・)
最も適した存在は? 思い描く最強を、叶えるカタチ(・・・)はいったい何だ?


身も蓋もなく言ってしまえば、戦場において有効な戦闘能力を追求すればするほど人という設計(カタチ)である必要はなくなり、
二足歩行という不安定な姿勢から乖離していくのである。――人型は、その時点で弱いのだ。
幾度と無く戦場を駆け抜けたイヴァンも当然その真理に気づいており、これは彼が深層心理にて考え出した
「自己の信仰を一切混ぜず、究極的に戦うことへ適した形態」そのものだった。

気概も勇気も磨き抜いた戦技も、武器の性能差の前には全て均一に無価値と堕す。
だからこそ人類は生物種としての戦闘能力ではなく、武器の進化こそを競ってきたのだ。
武器の新旧、そして優劣が勝利を決するのが人類における闘争の世界。人間個人の能力など、その使い手としての付属物でしかないのだ。

イヴァン自身、兵士としての経歴の中、その変化を身を以て理解せざるを得なかった。
厳しい鍛練を潜り抜けた猛者揃いの空挺部隊、それが容易く敵軍の少数の新式戦車に容易く蹂躙された事。
それに対し、携行式爆弾を用いた肉弾戦を挑む戦車猟兵に志願、戦果を挙げつつも自らも榴弾の爆発に巻き込まれ、大火傷を負い生死の境を彷徨った事等々……。
時代によって進化する近代兵器、それに対する憎悪とトラウマは着実にイヴァンの精神に刻み込まれ続ける。


戦場(いくさば)に相応しきは、英雄(・・)ではなく機造魔獣(キメラ)だと……?
ハッ、ハハハハァ、冗談じゃねえしゃらくせぇぞォォッ!!


この形態とは正にそんな現実を反映し、イヴァン自身の理想を否定する歪んだ鏡像であった。


戦場へ対する理想形態であるため出力が高い反面、燃費は自然と悪くなるものの、莫大な素粒子生成量故にその弱点は補われている。
よってこの形態のデメリットといえば精々使用者であるイヴァンにとって強烈な不快感を押し付ける事だけだが、
皮肉にも精神状態に出力が左右される心装永久機関にとってはこれが致命的な綻びになりかねない。
完全な戦闘倫理の体現を前に、心は英雄幻想へ置き去りなまま。
徐々に肉体と精神の乖離が起き始めるため、長期展開するほど不安定に陥りやすくなる事が唯一とも言える欠点である。


死臭がしないぞ?場違いなのだ、貴様は要らない鋼の亡霊(ネイムレス)


そしてマレーネ√において……立場、任務という枷を外された彼は、己が矜持と真向から対立する意思なき殺戮者――
ネイムレスとの激突によって、ある感情を呼び起こされる。それは、悪意。それは、憎悪
幾つもの戦場で愛すべき“戦友”の輝きを寿いでいた魔人は、遭遇した“愛せない敵”を前にして、
特異な精神構造故に過去無縁であった、己を脅かす存在を滅ぼしたい(・・・・・)という原初的な衝動を初めて実感する。
皮肉なことに、殺意(あい)ではなく、殺意(のろい)を叩きつけるという在り方は、
過去最大の力を機械蜘蛛と化したイヴァン・ストリゴイへと与えるのだった────



詠唱


展開(エヴォルヴ)


「認証───汝が陰我(イド)を問う」


人の御業は栄光(ひかり)を失い、戦場(いくさば)に充ちるは醜き真実。
英雄は斃れ星は墜ち、不滅なるはただ心なき機械(からくり)


されば我、人の御業を(なげう)ち醜き不滅を勝ち取らん


我欲するは栄光(ひかり)なき勝利……我は墜ちたる英雄なり──!


「受諾───素粒子生成」
「影装展開開始」


【心装】


影装・鋼蜘戦車(アレクニド・チャリオット)





  • Power(攻撃力):9  Hardness(防御力):6 Speed(機動性):5(+2) Generate(瞬間出力):8 Consumption(消費効率):2(+1) System(特殊機能):2  ※戦場に遮蔽物が多い場合、Speed+2/闘争を愛し続ける限り、Consumption+1 -- 名無しさん (2015-04-02 04:04:33)
  • 「文明、兵器の進歩は英雄の誕生を廃していく」という現実。「戦場英雄を讃えているが、より効率を追い求めていくと人の姿からかけ離れていく(醜くなっていく)」という戦闘倫理と個人的願望の軋轢によって発現したのがこの影装。 -- 名無しさん (2015-04-02 04:12:10)
  • 出力が高い反面、燃費は自然と悪くなるものの、莫大な素粒子生成量故にその弱点は補われている。よってこの形態のデメリットといえば精々使用者であるイヴァンにとって強烈な不快感を押し付ける事だけだが、皮肉にも精神状態に出力が左右される心装永久機関にとってはこれが致命的な綻びになりかねない。完全な戦闘倫理の体現を前に、心は英雄幻想へ置き去りなまま。徐々に肉体と精神の乖離が起き始めるため、長期展開するほど不安定に陥りやすくなる事が唯一とも言える欠点である。 -- 名無しさん (2015-04-02 04:20:32)
  • 見た目が致命的にダサい。他の影装もそうだが仮面つけたらマシだったろうに。 -- 名無しさん (2015-04-03 04:42:17)
  • むしろこれに関してはそういう気持ち悪さを前面的に押し出している分いいと思う -- 名無しさん (2015-04-03 11:51:09)
  • ゲーマーのガチ勢とエンジョイ勢というか、合理的すぎてつまらない戦いするボクシングチャンピオンというか、まあ色々あるよね -- 名無しさん (2015-04-03 16:45:05)
  • ダサさで言ったらこの作品の影装以降の殆どが致命的なんだが、こいつはダサいが気持ち悪さ歪さをうまく表現できてたように思う -- 名無しさん (2015-07-28 20:51:16)
  • これに関しては見た目のダサさがむしろ本人も忌み嫌う性能を追求した故の醜さみたいなのが出ていて良かったな。うんこれに関しては良い出来だったと思う -- 名無しさん (2015-07-28 22:51:40)
  • これの詠唱めっちゃ好きなんだよなぁ・・・ルートごとに詠唱の仕方が違ってめっちゃかっこいい -- 名無しさん (2017-03-15 01:46:58)
  • ダサいが声と人物像がカバーしてイケメンにまで昇華する。 -- 名無しさん (2017-07-18 13:35:42)
  • 精神的に不快感を押し付けるから時間と共に不安定になるとか書いてあるけど、作中ではそんなことなかったと言うかイヴァンさん完璧に使いこなしてるよね。 -- 名無しさん (2017-07-22 20:25:13)
  • 少なくともイヴァンさんにとっちゃ作中での戦闘ではリカバリー可能な範疇だったんだろうな。最終√のネイムレス戦みたいな敵意で不快感捻じ伏せられる要因が無い状態で長期戦になったら、多分何処かしらでボロが出たと思う。 -- 名無しさん (2017-07-22 21:31:13)
  • 見た目がビッグドッグや先行者みたいでも強いとかは確かに嫌だな -- 名無しさん (2017-07-23 01:07:46)
  • 真理段階に至ったら能力は、あらゆる存在を完全消滅ビームになるのかなあ。 -- 名無しさん (2018-01-16 23:13:09)
  • イヴァンさんの真理って「本気でぶつかり合うからこそ、命ってのは輝くんだよォッ!」に類するものだと思うから個人的には「真理段階レベルの多種多様な兵器の顕現・展開」じゃないかなと思う。 -- 名無しさん (2018-01-17 10:13:27)
  • やはり異形化が進むのか?それともスゲーパワーがあれば形なんて何でもいいに進むのか? -- 名無しさん (2018-01-17 20:21:31)
  • 実際、イヴァンさんの主張はミサイルとかの兵器を作る人から見ればワリと「イラッ」ときてもおかしくない。「誰でも使える武器で蹂躙したら卑怯?嗤わせるな、これこそ人間の努力の結晶。絶望的な力の差に対抗する手段であり、かつ、傷つけられずに相手の顏を見ないまま抹殺し、兵士の心に『自分が目の前の相手を殺している』というストレスも与えないという芸術品だ。だいいち、相手を殺そうというのに手段を選んでいる時点で戦場を舐めている。本気の殺意っていうのはなぁ、相手の目の前で殺害宣言をしたり、武器を振り回すことじゃない。問答無用でミサイルの発射ボタンを押すか、相手の拠点に仕掛けた爆弾の起爆スイッチを躊躇いなく押すことなんだよ。『本気で』戦う、相手を殺すっていうなら、使えよ、この人間の力の象徴を!」っていう本気おじさんの核発射理論レベルのことを言われても仕方がないと思うし、それを受け入れられるかどうかが真理段階への鍵なんだと思う。 -- 名無しさん (2018-01-17 20:51:01)
  • イヴァンさんは別に、人間がその意志と殺意を以て扱うのならミサイルでも爆弾でも文句言わんでしょ。機械を遠隔操作する乱丸がセーフなんだから -- 名無しさん (2018-01-17 21:15:45)
  • ↑そういえば確かに。実際、イヴァンさんと乱丸がそれなりに上手くいってたのは意外だった。影装見る限り嫌いそうなのに。ネイムレスはアウトで武器の進化はアリなら、イヴァンさんはどんな武器の時代でも人間はその武器を使って伝説を作り続けると証明したかったんだろうか?ルーデル閣下みたいに。 -- 名無しさん (2018-01-17 21:24:17)
  • ↑乱丸は能力高いからアリなんでしょ。イヴァンさんが嫌いなのは戦場で人間の価値が均一化されることなんだし。一番オルフィレウスの武器を上手く使えてあいつの心に大ダメージ与えてる点で優秀な乱丸はこの人的に全然アリ。むしろ人間の戦場における価値を無価値にしそうな技術に嫌悪感を抱いて受け入れていないのがこの人のイドだから、この人の真理は「どんな技術だろうと所詮は道具。いつの時代も使いこなすのは人間である。」って奴だと思う。だから、個人的には真理段階は「あらゆる武器、兵器に対応、最適化して進化し続けるオペレーションシステム」みたいなのじゃないかと思ってる。特に「無銘の鋼に銘を与えよう」みたいな感じでネイムレスを取り込んで自身の兵装化して進化するみたいな展開があったら熱いな-、って個人的には思ったり。 -- 名無しさん (2018-01-17 22:25:39)
  • Gガンダムのデビルガンダム? -- 名無しさん (2018-01-17 22:52:13)
  • ↑どっちかというと、作中ではネイムレスの方がデビルガンダムっぽかった気が。色々捕食してたし。 -- 名無しさん (2018-01-17 22:57:55)
  • 実際イヴァンさんの主張って武器がどうこうってよりそれを扱う人間が「どんな思いを持ってるか」が重要なのであって遠距離から核打ち込むやつでも享楽だろうがなんだろうが何かしらの思いがあればOKなんだと思う -- 名無しさん (2018-01-18 12:54:25)
  • ってかこれ整備死ぬほどめんどくさそう。 -- 名無しさん (2018-12-04 23:40:59)
  • ↑一個の兵器として造られてるならな。実際は肉体を刻鋼で構築し直してるからそうでもないんだが。 -- 名無しさん (2019-01-02 07:48:05)
  • イヴァンのデータを利用したであろう、蜘蛛戦車型のネイムレスとか……うわぁ、うわぁ…(戦慄 -- 名無しさん (2020-03-21 00:10:42)
  • 360度縦横無尽に市街地を跳ね回る無名兵ェ… -- 名無しさん (2020-05-22 09:23:11)
  • こんなのがトンデモ速度で四方八方から飛び掛かって来て、どれもこれも超重量の攻撃とか想像するだに恐ろしい -- 名無しさん (2020-11-23 01:32:21)
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最終更新:2021年10月06日 11:09