エピタフ
『我が墓標に刻みし碑銘、今ここに見つけたり────』
『双血の墓碑銘』の用語。
“不死”の力の断片を有した吸血種が、永遠の命さえも埋葬する覚悟を持ち、死よりも重い感情・信念を抱く事で発現する異能。
不死なる存在が己の死を知るという矛盾を越え、死の先を生き続けようとする何よりも固い意志の墓標。
自らの魂に刻まれた碑銘を備えた吸血種の手の甲には、紅の十字の聖痕が浮かび上がり――
魔法かあるいは妖術かと見紛うほどの……個々の血に宿った不条理を実現する強大な権能を行使できる。
西洋血族社会の中では、基本的に
数百年を生きた長命の血族が、自らの再生限界を超えるほどの負荷――
“聖別”という試練を受けた際、
命より重い強烈な一念を抱いて、先へと進もうとする一握りの者のみが生き残り、
己の墓碑銘に覚醒する事が出来ると伝えらえている。
しかし、作中の新選組の構成員たちの例のように、転化して日の浅い成り立ての血族であっても、
などといった、非血族時代から徹底されてきた生き様を背景として持つ者達は、
魂を切り裂く無念や絶望を抱いての生還、格上の血族との死闘といった要素を契機……すなわち乗り越えるべき“聖別”として、自らの墓標を打ち立てているケースもみられる。
――そして、この
墓碑銘には
原初にして、ある意味到達点ともいうべき能力が存在する。
第一巻でヒコックが語った、伝説や御伽噺に現れる真正の怪物。未だかつて誰も目にした事のない、究極の神秘。
すなわち、灰や塵と化す完全な死という終焉から、完全に元の姿で、何度でも復活してみせるという権能が。
この力を得た者達の精神性は、元から強靭な信念や情念を要求される墓碑銘使いの中でも、
さらに特異な状態にあると言える。
世の道理を嗤い飛ばすほどに重い個人への執着心か、あるいは底無しの絶望に叩き落されてなお折れない強烈な使命感。
そんな強烈な感情に常時突き動かされている(囚われている)者達であって、彼らと戦い排除することは困難を極める。
最終更新:2021年12月17日 16:09