フォギィボトム




『ここが、世界の涯てだ』

『故郷たる旧大陸を旅立ち、アダムの子らは西へと版図を広げ続けた。
その影たるリリスの子、我ら血族もまた同じ』

『新大陸の西限たるこの地こそが、我らが行き着いた約束の地(カナン)
もはやこの世界に未踏の地はなく、人類と血族の旅は今ここに終点を見た』

───始めるならば(・・・・・・)ここからがよかろう(・・・・・・・・・)




『Vermilion -Bind of blood-』の舞台となる都市で、北米西部《鎖輪》(ディアスポラ)の中心となる街。
主人公であるトシロー夜警(ウォッチャー)として、その守護を担当する都市でもある。


――この鎖輪の起源は、黄金狂時代(ゴールドラッシュ)の大移動の中……ベラ・オルロックという縛血者が、
北米大陸での既存権力者であった血族(コグニート)との闘争を開始した事から始まったという。
単騎でありながら、圧倒的な力で以て並み居る敵対者達を下す彼の武威、
そして溢れる王者としての威厳に、他の縛血者も服するようになり……結果北米を二つに分かち、現在の勢力圏が出来上がった。
その後、この強大なる初代公子は、若い娘であるニナに公子を譲るという意思を示し、その決定を下した数日後に自害したという。
ベラ・オルロックという指導者は、今でもその恐るべき実力ゆえに、血族社会の伝説的な存在として語り継がれている。

北米西部鎖輪の範囲に収まっている米国の都市は、この都市以外に確認されているのは……
デンバー、アンカレッジ、ラスベガス、サンフランシスコ、といった都市であり、
これらの都市には、フォギィボトム担当のトシローのように、それぞれ個別に夜警が立てられている。


フォギィボトムの話に戻ると、
この街の特徴としてはまず、気候において「霧の底」という名称が示しているように、
海より流れる霧が深く街を覆っている事で、夜間になればその深さ、暗さは相当なものになるようである。

また、注目すべき建造物としてビルの林立する都市部の中核に、
公子(プリンシパル)ほか藍血貴(ブルーブラッド)が、鎖輪の内政、渉外、違反者の処罰等の政を決定する「城」、ホテル・カルパチアが聳え立っている。
表向きには北米有数の高層ホテルとして知れ渡っているこの建物は、人間の一般客が利用できる階より更に上層に、
隔絶された区画が存在しており、そこで彼ら政務に関係する権力者達が夜毎に集まっては、会合が繰り返されている。

ただ、物語時点では、公子ニナが他の主要な藍血貴の手綱を上手くとれているとは言い難く、
彼らの息のかかった者の存在や、充実し過ぎる盗撮盗聴設備が至る所に隠されており、権力争いは日々続いているという状況である。*1

また、このカルパチアには《納骨堂》と呼ばれる、同族の死体を収めたり、捕らえた血族社会における罪人を「処理」する施設も存在する。


この他、一般の縛血者達の安全地帯となる場所が、人間も利用する施設に紛れて複数存在していて、
その内、トシローやシェリルアンヌが度々足を運んでいるのが、酒場『カサノヴァ』である。

また、当然縛血者はこの街の裏に潜む側であって、
公的な施設の中には彼らを狙う狩人の一派、ピオ同志会(ソダリティウム・ピアヌム)の支部となっている場所などもあるが、
鎖輪上層部との「政治的な」取引により、表面上は大規模な闘争が起きることはなく、あったとしても小競り合い程度か、
掟の違反者を狩人に差し出し、それに狩ることにより体裁を繕うという事も珍しくはないようである。*2

地下を中心に掟に縛られることを良しとしないアルフライラといった叛徒も潜伏しており、
冷戦終結前後には、東側から流入する勢力と合流して、各地で闘争が繰り返された。
現在は、それらの争いも収束しているようだが、生き残った者達は息を潜め再起の機会をうかがっている、というのが現状である。


そして……霧の都で悪徳と秩序が複雑に絡まり合う中、ニナは血親(ちち)より受け継いだカーマインが姿を消していることに気づく。
彼女はこの紛失した『柩の娘』が、街で広がり始めた怪物騒ぎの陰で姿を見せていると知り、
その捜索を直属の部下であるトシローに命じる。

そのトシローは、夜警として、街で起きている縛血者を狙った連続殺人犯の姿を追っていた。
手掛かりは遺体に残された、“三本指”の血痕。

さらに、静かに進行する混乱の中マジェンタを伴い来訪する、
当代最強格の藍血貴にして、暴君であるジョージ・ゴードン・バイロン

滅びの予兆は、この街で確実に産まれ始めていた………



  • 位置的にはシアトル、雰囲気的にはシカゴのイメージとか -- 名無しさん (2018-11-24 20:47:10)
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最終更新:2021年03月25日 15:38

*1 また、シェリル√の発言によれば、トシローも普段使用していないようだが、「昔の習性」からかそうした機器を紛れ込ませているらしい

*2 無論そんなやり口を好まない白木の杭(ホワイト・パイル)などは、独自のルートから潜入、確実に縛血者を葬っている