重力


 本ゲームには,空間に完全に固定され運動しないグラウンドと,外力を受けたりして運動するダイナミックグラウンドやオブジェクトがある.用語として前者を非運動体,後者を運動体と定義する.また,運動物体のうち風船とルーンは自発的に運動することから能動運動体,それ以外を受動運動体と呼ぶ.更に,受動運動体のうち並進抵抗と回転抵抗がともに0であるものを自由受動運動体とする.
 さて,自由受動運動体を空中に設置するとどうなるだろうか.マップセッティングで重力値を設定することができるが,初期値の10の場合,その質量に依らず全く同じ運動をする.すなわち,2つの異なる質量の自由受動運動体を同じ高さに設置すると,各時刻での落下速度や高さは同じであるし,したがって着地も同時である.
 自由受動運動体の場合,並進抵抗も回転抵抗もないので,力を受ける可能性があるとすれば重力と空気抵抗であるが,観測事実として摩擦0の氷上で自由受動運動体を滑らせても減速しないことから,本ゲーム内に空気抵抗はないことが分かる.このことから,落下中は重力だけが働いているとして良い.質量をM,重力をFgとし,鉛直上向きにz軸をとると運動方程式は

 Mz''Fg …(1)

となる.異なるMに対して,全ての時刻tにおいてzが一致するならば,(1)式からMが消えなければならない.しかし,それだけではFgの形が具体的には求まらないので実験を行った.自由受動運動体であるダイナミックグラウンドを高低差150,300,450,600pxだけ完全弾性衝突で10回跳ね返らせ,その所要時間を各5回ずつ計測した.その20分の1が着地までの時間であると考え,5回分の平均を取ったものを最終的な平均時間とした.結果を以下に示す.なお,実験方法の性質上,やや短めの結果が出るようになっており,実際にはもう少し平均時間は長いと考えられる.

高低差(px) 10往復所要時間(s) 平均落下時間(s)
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目
150 20.23 19.64 20.04 21.20 20.33 1.01
300 28.32 28.87 27.65 28.45 28.15 1.41
450 35.33 35.22 34.53 34.87 35.15 1.75
600 39.78 40.26 39.83 40.36 39.65 2.00

  さて,この結果を見ると,平均時間の欄がおよそ1,√2,√3,2になっていることに気づく.(1)式を解いた結果は一般にzz(t)のようにzが時間tの関数として表される.時間が√k倍になると落下距離がk倍になっていることから,この関数形として

 z(t)=-150t2 …(2)

が考えられる.この推定が正しいとして(1)式に代入すると,重力は(3)式のように表される.すなわち,重力は質量に比例して鉛直下向きに働く.確かに,これを(1)式に代入すれば両辺をで割ることができて,質量に依存しないこともわかる.この比例係数300は,マップセッティングで重力値を10にした場合のものである.この数値を変更すれば当然,この比例係数も変わってくる.

 Fg=-300M …(3)

 次に,重力値Ngと比例係数,すなわち重力加速度gの関係を求めよう.高低差を150pxに固定して,重力値Ngと着地までの平均時間の関係を求めた.平均時間の求め方は前述の実験と同じである.
 F=-gMであるから,これを(1)式に代入して両辺をMで割ると(4)式のようになる.またこの両辺を積分することで(5),(6)式を得る.ここに,ABは積分定数である.

 z''g …(4)
 z'gtA …(5)

 zgt2/2+AtB …(6)

 初速度は0であること及び,初期位置が150であることからA=0,B=150である.着地するまでの平均時間をτとすれば,そのときz=0であるので(6)式は次のように変形できる.

 g=300/τ2 …(7)

 実験によって求めた各重力値Ngに対する着地までの平均時間τと,(7)式から求められるgを表にまとめる.比較的誤差が大きいが,(8)式の関係が成り立っていると考えるのが自然であろう.

 g30Ng …(8)

重力値Ng

10往復所要時間(s)

平均落下時間τ(s)

重力加速度g

1回目 2回目 3回目 4回目 5回目
5 28.55 29.04 28.06 28.58 28.10 1.42 148
10 20.23 19.64 20.04 21.20 20.33 1.01 292
20 14.86 14.40 14.02 14.24 14.43 0.72 580
30 11.63 11.57 11.51 11.23 11.40 0.47 914

  以上では,自由受動運動体について見てきたが,非自由受動運動体や,更には能動運動体の場合はどうだろうか.非自由受動運動体とは,受動運動体のうち,並進抵抗あるいは回転抵抗を有するものである.特に並進抵抗がある場合,落下の様子は自由受動運動体とは大きく異なってくる.これについての詳細な扱いは別の記事で行うが,重力値が大きいほど早く落下することは観測すればすぐにわかる.能動運動体,すなわち風船やルーンも同様であって,これらは一見重力の影響を全く受けていないように見えるが,大きな重力を設定すれば風船やルーンも落下する.これは全ての運動体にはその質量に比例した重力が働くが,自由受動運動体以外では並進抵抗や浮力の為に通常の自由落下とは違った運動をしているだけである,と考えるべきであろう.

まとめ

 全ての運動体には次式で表される重力が働く.ここに,Mは運動体の質量,Ngは重力値である.

 Fg(0,-30NgM)

最終更新:2015年03月11日 13:42